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呼吸器の身体障害者申請について呼吸器内科専門医が解説!申請に必要な検査・申請方法・得られる公的支援は?

肺気腫・COPDや間質性肺炎で病状が進んでくると、薬や在宅酸素療法などで治療費が高額になってきたり、通院・入院回数も増えて医療費の負担額が増えて困っている方も多いのではないでしょうか。

このような場合、呼吸機能の障害によって障害者手帳を取得すると医療費や公共交通機関の利用・税金の面でいろいろなメリットが得られます。ここでは、呼吸機能障害による身体障害者申請の方法や得られるメリット、必要な検査について解説したいと思います。

 

 

<障害者手帳の取得に必要な検査

 

障害呼吸機能の者申請を行うには、下記の検査を行い基準を満たした場合申請できます。主に3つの検査を行います。

 

① 肺機能検査

② 胸部レントゲン検査

③ 動脈血液ガス検査

 

これらの検査データが必要になります。これらに加えて、患者様の息切れの程度も重要となってきます。

 

肺機能検査では、一秒量と予測肺活量の数値が必要です。これらの数値から指数を計算する必要があります(指数=1秒量÷予測肺活量×100)この指数が呼吸機能の障害の程度を反映しており、最も重要となってきます。

また動脈血液ガス検査では、安静時の動脈血液中のO2分圧(酸素濃度)を測定します。

申請が可能な基準は以下の通りですが、肺機能検査が最も重要となりますので、過去に肺機能検査を行っている場合は、まずは主治医にご自身が基準を満たすかどうか聞いてみましょう。

 

<等級の目安>

 

身体障害の程度によって、等級が異なります。等級は症状・肺機能検査結果・動脈血液O2分圧によって変わってきます。以下が等級の目安になります。

1級

・呼吸困難が強いため歩行がほとんどできないもの

・呼吸障害のため指数の測定ができないもの

・指数が 20 以下のもの又は動脈血O2 分圧が 50Torr 以下のものをいう。

(常時人工呼吸器が必要な場合も1級)

 

3級

・指数が 20 を超え 30 以下のもの若しくは動脈血O2分圧が 50Torr を超え 60Torr 以下のもの、又はこれらに準ずるものをいう

4級

・指数が 30 を超え 40 以下のもの若しくは動脈血O2 分圧が 60Torr を超え 70Torr 以下のもの、又はこれらに準ずるものをいう

 

<主に対象となる病気>

 

呼吸機能障害で身体障害者申請の対象となる病気は、肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)間質性肺炎などが挙げられます。特に肺気腫やCOPDの方は、病状が進行すると一秒量が低下し指数が低くなるため申請基準を満たしやすくなります。そのほかにもびまん性汎細気管支炎・胸郭変形による呼吸機能障害・結核後遺症などの病気をお持ちの方も病状が進むと申請が可能となる場合があります。

上記のような呼吸器の病気で在宅酸素療法や在宅人工呼吸器(在宅NPPVなど)を行っている方は、病状が進んでいますので一度身体障害手帳の申請を検討されてもよいと思います。

 

<得られる公的支援・メリット>

身体障害者認定3級以上では、基本的には医療費の全額免除を受けられます。ただし地域によっては所得制限があります。(名古屋市内は所得制限があります)また通院・入院時の自己負担限度額が設定されている自治体もあります。その他にも、税金の減額、鉄道料金・バスやタクシーなどの割引、公共料金の割引、携帯電話料金などの割引などの支援を受けることができます。

 

・JRなど公共交通の割引

障害者手帳の「旅客鉄道運賃減額」欄(第1種・第2種)の記載で割引が適用されます。JRは規則やガイドで条件が公開されています。

 

・NHK受信料の減免

世帯全員非課税で全額免除、重度障害(例:身体1・2級等)で半額免除など。自治体サイトやNHKの案内で具体的な条件が確認できます。

 

・税制上の優遇

所得税・住民税の障害者控除、相続税の障害者控除、自動車関連税の減免(自治体による)などあります。国税庁の公式案内に控除額の目安がまとまっています。

 

・公共料金等の減免・助成(自治体)

水道基本料金の減免、ガソリン助成、携帯料金割引、郵便料金の減免などのメニューが自治体横断で整備されています(内容は地域差あり)

 

<申請の手順(自治体ほぼ共通)>

・身体障害者診断書・意見書を入手(身体障害者指定医師に作成依頼が必要です)。

・顔写真(4×3cm)、交付申請書、マイナンバーの記載・本人確認書類を準備します。

・お住まいの市区町村の障害福祉窓口に提出。

・自治体の審査を経て身体障害者手帳が交付されます。標準的には約1か月程度と言われていますが、内容により長くなることもあります。


 

 

<理事長からのメッセージ>

呼吸機能が低下しても、「まだ頑張れるから」と申請をためらう方が多い印象です。しかし、身体障害者手帳は“生活の質を支える制度”であり、決して「重い病気の証明」ではありません。日々の通院や在宅酸素療法などを少しでも続けやすくするための大切なサポートツールです。

 

当院では、検査から診断書作成、申請サポートまで一貫して対応しております。呼吸の苦しさや生活への不安がある方は、どうぞ一人で悩まずご相談ください。

 

 

参考情報:

東京都福祉局 身体障害者と身体障害認定基準について

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/shinsho/shinshou_techou/sintaisyougaininteikijyun

 

愛知県庁ホームページ 身体障害者手帳の診断書・意見書様式について

https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/shintai-shindansyoyoushiki.html

 

 

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

院長 表 紀仁

呼吸器内科専門医・医学博士