CPAP療法は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して行われる治療のことで、口や鼻にマスクを装着して寝ることで無呼吸を防ぐことができます。無呼吸症候群の治療として最も一般的な方法です。CPAP療法は根治療法ではありませんが、継続して使用することで非常に高い効果が得られ、多くの睡眠時無呼吸の患者さんの生活の質を改善しています。
ここでは、CPAP療法とはなにか、CPAP療法で得られるメリットや使用上の注意点などについて説明したいと思います。
以下の内容について解説していきます。
- CPAP療法とは?
- CPAP療法で使用される機械
- CPAP治療のマスクの種類
- CPAP治療の効果
- CPAP療法にかかる費用
- CPAP治療を長く続けるコツ
- 治療の実際
目次
CPAP療法とは?
CPAPは「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字で、機械からマスクを通して空気を送ることで、睡眠中に気道が閉塞するのを防ぎます。これにより、呼吸の停止や低下を防ぎ、安定した睡眠を維持することが可能になります。
以下がCPAP療法のしくみになります。
機械から一定の空気圧を持った空気をマスクを通して鼻または口に送ります。特に冬場には口が乾燥することがあり、加湿器が搭載された機種もあります。
また多くのCPAP装置には、呼吸状態、使用時間、エアリーク(空気のもれ)、無呼吸イベントなどを記録する機能があります。また機械には通信機能を搭載しているものがほとんどで、データがクリニックや病院に臆されてくるため、医師が通院中の患者さんの状態や治療効果を評価できます。
参考:日本呼吸器学会ホームページ:CPAP(シーパップ)とはどのような治療法ですか?
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q30.html
CPAPで使用される機械の種類
CPAPの機種は、小型で持ち運びやすいもの、加湿機能が優れているもの、圧力の調整機能が優れているものなどそれぞれに特徴があります。出張が多いビジネスマンは小型のものを、冬に口が乾燥し困っている方には加湿機能が優れているものを、それぞれの方にあったものを選びます。
名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック(金山駅前院)では、多くの業者と連携してCPAP管理を行っております。(メディカルケア、フクダ電子、メディシス、フィリップス)。通院の都合や転居などで転医をご希望の方は、ご相談ください。
CPAPのマスクタイプ
CPAP治療のマスクには以下のようなタイプがあります。
- 鼻ピロー
- 口鼻(フェイス)マスク
- 口マスク
(現在口マスクはあまり使用されておりません。)
一般的には、鼻だけをおおう鼻ピロータイプが多く使用されていますが、寝ている間に口があいて漏れてしまう方や鼻炎などがあり鼻づまりがある方には向いていません。そのような場合は口と鼻をおおうフェイスマスクタイプが使用されます。フェイスマスクタイプは、お顔をおおう面積が広くなるため圧迫感や不快感が増えることがあります。
レスメド社
https://www.resmed.jp/professional/therapy-masks/nasal-pillows/airfit-p10
CPAP治療の効果
CPAP治療を行うとどんな効果があるのでしょうか?
効果①:寿命が伸びます!
CPAPを装着すると生命予後が改善したというデータがあります。「夜しっかり眠る」=「長生きにつながる」これは科学的にも裏づけられた事実です。
効果②:日中の眠気が劇的に改善!
CPAPを使うと患者さんが「昼間の眠気が全然違う!」「仕事中にウトウトしなくなった!」ということをおっしゃります。そして無呼吸が改善されることで、深い睡眠がとれるようになり、日中の集中力・注意力が大きく回復します。
効果③:高血圧・心筋梗塞・脳卒中の予防にも有効
睡眠時無呼吸は、血圧を上昇させたり、心臓や脳に負担をかけたりと、心血管病のリスク因子として知られています。CPAP治療によってこれらのリスクが軽減されることが、多くの研究で示されています。
効果④:交通事故リスクが大幅に減少!
意外と知られていませんが、睡眠時無呼吸は交通事故の大きなリスクでもあります。
カナダの研究では、治療前は一般のドライバーの3倍も事故を起こしていた患者さんたちが、CPAP治療を始めた後には事故率が正常レベルまで改善したというデータがあります。つまり、自分自身だけでなく、他人の命を守るためにも大切な治療なのです。
CPAP療法にかかる費用
CPAPの定期通院にかかる費用は、診察費・CPAPの機器レンタル費用・管理費などが含まれます。1ヶ月に約4,500円程度かかります。
通院の頻度は、CPAP機器の利用を開始してから数ヶ月は1ヶ月毎、CPAPの圧力や設定の調整が済んで安定したら2〜3ヶ月ごとの通院となります。
CPAP治療を長く続けるコツ
「CPAP治療を続けられるか不安…」という声も多いですが、以下のポイントで続けやすくなります。
- 最初は短時間から慣らしてみる
- マスクのサイズや種類を医師と相談して調整
- 鼻づまりや乾燥対策(加湿器付きタイプも◎)
- 定期的にデータをチェックしてフィードバックをもらう
- 就寝前のルーティンに組み込む
「がんばらない継続」もOK。毎晩完璧に使えない日があっても、落ち込む必要はありません。「昨日は3時間だったけど今日は6時間使えた」「週に5日はちゃんと使えた」といった小さな達成感を積み重ねることが、長期継続につながります。
CPAP治療の実際
睡眠時無呼吸をどのように診断して治療が行われるのか、実際のケースで見てみましょう。
Aさんは、50歳男性の方で、数年日中の眠気がひどく、ご家族にいびきを指摘され受診されました。
まず診察でSASのチェックシートを行ってもらい、合計点が15点で、日中の眠気症状が強いことが分かりました。
そこでまずは簡易検査であるアプノモニターを実施します。自宅にて2晩機械を装着していただき、1時間当たりに無呼吸が何回あるかを計測します。
アプノモニターの結果、AHI(無呼吸・低呼吸指数)と呼ばれる一時間当たりの無呼吸の回数が54回あることが分かりました。これはおおよそ1分間に1度は呼吸が止まっていることを示しており、重度の睡眠時無呼吸症候群であることが分かります。
アプノモニターの場合、AHIが40を超えている場合に保険診療(3割負担)でCPAP治療を受けることが可能となります。
Aさんは、日中の眠気などの自覚症状も強く、重症の睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
そのためCPAP治療を導入する方針となりました。
CPAP療法導入後、まずは1か月後に再度受診していただきます。そこで、診察で以下のような点を確認します。
- CPAPマスクの使用感
(マスクを装着して眠れているか、不快ではないか) - CPAPマスクによる副作用
(マスクにより皮膚のただれなどないか) - AHI値
(機械から数値を確認) - 日中の眠気や疲労感などの症状は改善しているか
- どの程度装着できているか
(一日何時間、週何回か)
通院開始後、定期受診時にはクリニックで以下の様にデータを見ることができます。これらの数値を確認し、CPAPマスクの圧力など設定を調整します。
CPAPの設定が問題なく、状態が落ち着けば1~3ヶ月に1回の定期通院となります。
院長からのメッセージ
睡眠時無呼吸症候群は、決して「いびきがうるさいだけの病気」ではありません。夜間に呼吸が止まり、酸素が低下することで、日中の強い眠気や集中力低下、そして高血圧や心筋梗塞、脳卒中など、命に関わる疾患のリスクを高めることが分かっています。こうしたリスクを減らし、より良い睡眠と日常生活を取り戻すために、最も効果的な治療のひとつがCPAP(シーパップ)療法です。
最初は慣れない機械に戸惑う方もいらっしゃいますが、多くの患者さまが効果を感じてくださっています。私たちは、単にCPAPを「処方する」のではなく、「安心して長く続けられるようサポートすること」を大切にしています。マスクの調整、機器の設定、使い方の工夫など、小さなお悩みでも遠慮なくご相談ください。スタッフ一同、しっかりとサポートさせていただきます。