閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、いびき・日中の眠気や集中力低下を引き起こすだけではなく、高血圧や心臓血管病などの原因となります。CPAPマスクやマウスピースで治療することで、これらの症状が改善します。
会議中や大事な場面で眠ってしまう、家族にいびきや無呼吸を指摘された方は、一度無呼吸の検査を受けてみてはいかがでしょうか?名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック(金山駅前院)では、自宅で検査が可能な機械を貸し出して検査を行っております。上記に当てはまる症状の方は、一度当院へお越しください。
ここでは、以下について説明します。
- 睡眠時無呼吸の原因は?
- 症状は?
- 睡眠時無呼吸だと何がよくないのか?
- 検査方法
- 治療方法①:CPAP療法
- 治療方法②:マウスピース
- 治療方法③:手術
- 治療方法④:その他
- 睡眠時無呼吸の検査や治療、通院にかかる費用
目次
睡眠時無呼吸の原因
睡眠時無呼吸症候群の原因は、空気の通り道である気道が狭くなることで、寝ている間に呼吸が止まります。気道が狭いというのは、鼻の通りが悪い、扁桃が大きい、舌が大きく根元が狭くなっている、などなど原因は多岐にわたります。
最大の原因は「肥満」で、脂肪がのどに脂肪組織が増えてしまい気道が狭くなります。子供では、扁桃が大きい口蓋垂(のどちんこ)が大きいことが原因のことが多く、大人とは異なります。またのどの筋肉は、加齢やアルコール、睡眠薬などによりゆるみ悪化します。
ただし、痩せている方でも睡眠時無呼吸になることがあります。これはあごが小さい、首が短い、首が短い、あごが後退しているなどの骨格が影響しているといわれています。
【参考情報】日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
睡眠時無呼吸の症状
睡眠時無呼吸症候群の症状は、以下のようなものがあります。
- 日中の眠気
- いびき
- 集中力の低下、無気力
- うつ症状
- 起床時の頭痛
- 性欲の低下
こちらは代表的な睡眠時無呼吸のチェックシート(問診票)になります。
合計点が11点以上だと睡眠時無呼吸症候群の疑いが強く、5~11点だと睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。一度やってみましょう。
睡眠時無呼吸が続くと何が良くないのか?
睡眠時無呼吸が続くと何がいけないのでしょうか?もちろん、日中の眠気や集中力の低下などの症状が出て困りますが、ほかにも以下のようなデメリットがあります。
- 高血圧や心臓血管病(心筋梗塞など)の病気になることが増える
- 不整脈(心房細動など)が増える
- 認知症が増える
- 抑うつや男性の勃起障害などの原因となる
- 交通事故が増える
- 頭痛やイライラの原因となる
- 寿命が短くなる
など様々な症状や合併症があります。
【参考情報】厚生労働省 e-ヘルスネット 睡眠時無呼吸症候群
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html
睡眠時無呼吸の検査方法
簡易アプノモニター検査
まず自宅で「簡易アプノモニター」という睡眠検査を行います。
これは機械を装着して、睡眠中に何回呼吸が止まっているか、無呼吸がある場合はそれが軽症なのか重症なのかを判定する機械になります。そのほかにもいびきをどの程度かいているか、脈拍や血中の酸素濃度などが分かります。
下記の図のような機械を装着し、寝ている間の口・鼻の周りの空気の流れ、いびきの程度、胸の動き・体の向き、血中の酸素飽和度を測定します。
上記の検査を行うと、睡眠中1時間あたりに何回呼吸が止まっているかが分かります。これをAHI(もしくはRDI)値と言います。このAHI(RDI)値によって、睡眠時無呼吸の重症度が分かり、治療方針・検査方針が決まってきます。
- AHI < 5:
経過観察、もしくはマウスピース(自費:保険適応外) - 5 ≦ AHI < 15:
マウスピース(保険適応)、もしくは精密検査(PSG検査)へ - 15 ≦ AHI < 40:
精密検査(PSG検査)へ - AHI ≧ 40:
CPAP治療
重度の無呼吸があった場合(AHI ≧ 40)は、CPAP治療を行います。
中等症の無呼吸がある場合(5 ≦ AHI < 40)は、マウスピース(保険適応)、もしくは精密検査(PSG検査)へ進みます。
PSG検査(ポリソムノグラフィー)
PSG検査は、簡易アプノモニター検査と比較してより詳細なことが分かります。
最も大きな違いは、PSG検査では脳波を計測し睡眠の深さを測ることです。そのほかにも筋電図や眼球の動きなども測定します。通常は1晩装着して計測します。
これらの数値から、より正確なAHI値を計測することができます。またほかの睡眠障害(周期性四肢 運動障害など)も分かることがあります。
- AHI < 20:マウスピース(保険適応)
- AHI ≧ 20:CPAP治療
AHIが20以上の場合は、保険適応でCPAP治療を受けることができます。
【参考情報】日本睡眠学会 睡眠障害を診断するための検査 https://jssr.jp/basicofsleepdisorders3
CPAP治療
睡眠時無呼吸症候群の治療方法はいくつかあります。重症度(AHI値)に応じて治療方針が決まります。
中等症や重症の睡眠時無呼吸症候群では、CPAP治療が最も代表的な治療となります。
CPAP療法では、寝るときにマスクを装着し、空気の通り道である気道が閉塞するのを防ぎます。きちんと装着できれば、かなりの効果が得られます。
CPAP以外の治療方法:マウスピース
睡眠時無呼吸の治療方法としては、CPAP以外にもマウスピースがあります。マウスピースは、主に軽症の方か、CPAP治療がどうしても受けられない方に対して行われます。
マウスピースは寝ているときに装着します。効果としては、あごを前に押し出すことで、空気の通り道である気道が広がり、無呼吸の状態を改善してくれます。
マウスピースとCPAP療法を比較すると効果はどうなのでしょうか?
CPAP療法の方が、無呼吸の程度の指標となるAHIがより低い(無呼吸が改善している)というデータがあります。そのため重症例ではCPAP療法の方が望ましいと考えられます。
どのような方がマウスピースの効果が得られやすいか?
- 下あごが小さい方
- 痩せている方
- 下あごが後退している方
逆に、肥満の方や息を吐くときにもいびきがある方には効きにくいといわれています。
マスピースを使用していて困ることはありますか?
あごの痛みや唾液が増えるという副作用があります。あごの痛みは、マウスピースを外したあとに、30秒程度あごをかみしめると改善することが多いといわれています。
マウスピースにはどんな種類があるのか?
マウスピースには大きく分けて2種類あります。
分離型と一体型で、分離型は上下分離ができて調節可能なマウスピースとなります。過去の報告では、分離型の方が一体型よりも無呼吸の改善がみられると言われています。そのため、中等症から重症の無呼吸の方では分離型の方が望ましいと考えられます。
参考:睡眠時無呼吸患者に対する口腔内装置の適応について
https://www.dental-plaza.com/academic/dentalmagazine/no140/140-5/
CPAP以外の治療方法:手術
睡眠時無呼吸症候群では、手術治療も有効な場合があります。
鼻のポリープがあり詰まっている場合、のどのアデノイド・扁桃が大きく閉塞している場合、鼻中隔が曲がっていて詰まってしまっている場合などは有効です。
- 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術
- 鼻の手術:鼻茸手術・鼻中隔強制術
- アデノイド切除術
- 上下顎骨前方移動手術
CPAP以外の治療方法:そのほか
- 減量
- 側臥位
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約54%が体位で無呼吸の状態が変わります。仰向けで寝ている時の方が無呼吸が悪化します。横向きで寝るなど体位を変えることで、約32%の患者さんの無呼吸が改善したという報告もあります。
肥満は睡眠時無呼吸症候群の重要な原因です。実際、BMIが1増えるごとにAHI(無呼吸低呼吸指数)は約1.5増加するという報告があります。そして、体重を10%減量するとAHIが約26%改善したという報告もあります。そのため食生活や運動習慣を見直すことも重要な治療方法の一つです。
【参考情報】日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20200730145402.html
睡眠時無呼吸症候群の検査や治療にかかる費用
睡眠時無呼吸症候群の検査は、保険診療で実施でき、以下のような費用(3割負担の場合)がかかります。
院長からのメッセージ
「いびきが大きい」「夜中に息が止まっていると言われた」「日中に強い眠気がある」
このような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も呼吸が止まることで、体が十分に休まらず、様々な健康リスクを引き起こす病気です。たとえば、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まることが多くの研究でわかっています。また、日中の眠気による交通事故も少なくありません。
しかし、適切な診断と治療を受けることで、こうしたリスクは大きく減らすことができます。とくにCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)は、無呼吸の改善にとても効果的で、生活の質を大きく向上させる治療です。「いびきくらいで病院に行くのは大げさ」と思われる方もいるかもしれません。ですが、そのいびきの裏に命に関わる疾患が隠れていることもあるのです。
私たちは、患者さん一人ひとりの睡眠と健康を守るため、丁寧な診療とサポートを心がけています。「最近よく眠れない」「朝すっきり起きられない」など、お気軽にご相談ください。しっかり眠れること、それは健康への第一歩です。