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咳喘息のときに使う「吸入器」ってどんなものがある?種類・役割・使い分けを解説

呼吸器・咳

咳が長引いて、風邪は治ったはずなのに「夜や明け方に咳が出る」「運動や冷気で咳が出る」「ゼーゼーはしないのに咳だけ続く」——こうした状態で疑われるのが咳喘息(咳だけが主症状の喘息)です。咳喘息は気道の炎症が関わるため、治療の中心は吸入薬(吸入器)になります。早めに適切な治療を始めることで、症状の改善だけでなく、将来的に典型的な喘息(喘鳴・息苦しさが出るタイプ)へ進むリスクを下げる可能性も示されています。

この記事では、咳喘息で使われる吸入器を「何のために」「どんな種類があるか」「注意点は何か」を、わかりやすく解説します。

 

 

咳喘息の吸入治療は「炎症を抑える薬」が主役

咳喘息の咳は、気道が敏感になって起こりやすく、背景に気道の炎症があることが多いです。そこで中心になるのが、次の2系統です。

  • ① 炎症を抑える吸入薬:吸入ステロイド(ICS)

  • ② 気道を広げる吸入薬:気管支拡張薬(β2刺激薬や抗コリン薬)

そして、状態に応じて「単剤」か「合剤(組み合わせ)」が選ばれます。

 

 

咳喘息で使う吸入器(吸入薬)の主な種類

1)吸入ステロイド:「咳の元=炎症」を抑える基本薬

咳喘息治療の中心です。気道の炎症を抑え、咳が出にくい状態へ整えます。早期に吸入ステロイドを導入することが、のちに喘鳴(ゼーゼー)が出るタイプへ移行するリスクを抑える可能性も報告されています。

 

患者さんが知っておくポイント

  • ・効果は「その場でスッと止まる」というより、数日〜数週間でじわじわ効いてくることが多い

  • ・症状が良くなっても、自己判断で中止せず医師の指示で調整する

  • ・使った後はうがい(または飲水)が基本、吸入薬による副作用を防ぎます。(主な副作用は、口の中のカビ=口腔カンジダ、声がれなどがあります)

 

代表的な薬は……

例)アニュイティ、パルミコート、フルタイド、キュバール、オルベスコ

 

 

 

2)吸入ステロイド+気管支拡張薬(β2刺激薬・抗コリン薬):「炎症+気道の広がり」を両方カバー

咳が強い/続く/夜間がつらい、などの場合に選ばれることがあります。
「炎症を抑える(吸入ステロイド)」+「気道を広げる(気管支拡張薬)」を1本で行うタイプです。

補足(最近の考え方)
喘息治療全体では、気管支拡張薬だけに頼る治療は推奨されにくくなり、吸入ステロイドを含む治療が重視されています。

代表的な薬は

① 吸入ステロイド+β2刺激薬配合剤(2種類の配合剤)

例)レルベア、シムビコート(ブデホル)、フルティフォーム、アテキュラ、アドエア

 

 

 

② 吸入ステロイド+β2刺激薬+抗コリン薬配合剤(3種類の配合剤)

例)テリルジー、エナジア

 

 

 

3)短時間作用型β2刺激薬:「苦しいときの即効性」だが、咳喘息では主役ではない

いわゆる「発作止め」で、吸うと比較的すぐ気道が広がります。
ただし、喘息治療では短時間作用型β2刺激薬単独での使用は避けた方がよく吸入ステロイドを含む治療が基本です。

イメージとしては……

  • ・短時間作用型β2刺激薬:その場の息の通りを助ける(即効性)

  • ・吸入ステロイド:咳が出る土台(炎症)を整える(根本寄り)

代表的な薬は……

例)メプチン、サルタノール

 

「吸入器の形」もいくつかある(薬の種類とは別の話)

同じ“吸入薬”でも、器具の方式が異なります。代表は次の2つです。

下記以外にもネブライザーの吸入器は、小さなお子様などの吸入がうまくできない方に使用することもあります。

 

 

 

  • ① pMDI(加圧式定量噴霧吸入器):押すと霧が出るタイプ

    • コツ:吸うタイミングを合わせるのが大事

    • 合わない場合はスペーサー(補助具)を使うと安定しやすい

    •  
  • ② DPI(ドライパウダー吸入器):粉を「自分の吸う力」で吸い込むタイプ

    • コツ:しっかり速めに吸う必要がある(弱いと薬が入りにくい)

 

どれが良いかは、年齢・吸う力・操作の得意不得意・生活スタイルで変わります。合わない器具だと、薬が入らず「効かない」と感じやすいので、吸い方の確認がとても重要です。

 

当院では、咳喘息の患者様の年齢や状態に併せて適切な吸入薬を処方しています。

 

また、吸入器は薬の種類だけでなく「正しい吸い方」が効果を左右しますので、吸入器を処方した全員の方に院内で看護師が吸入指導を行っています。初回はもちろん、治療の途中でも吸入手技を確認し、無理なく続けられる形を一緒に整えていきます。

 

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 咳があるときだけ吸えばいい?

咳喘息では、基本となるICSは「炎症を整える薬」なので、毎日継続が必要なことが多いです(症状が落ち着いたら医師が減量や中止を判断します)。

 

Q2. どれくらいで良くなる?

個人差がありますが、数日〜数週間で改善していくことが多いです。長引く場合は、診断の見直し(逆流、後鼻漏、感染後咳嗽など)や、治療強化が必要なことがあります。

 

Q3. 吸入ステロイドは怖くない?

吸入ステロイドは、飲み薬のステロイドと比べて全身への影響が小さく、喘息治療の基本薬として広く使われています。主な注意点は声がれ・口腔カンジダなどで、吸入後のうがいが予防に役立ちます。

 

当院からのメッセージ

 

咳喘息は“咳だけ”が続く喘息の一種で、気道の炎症が関係していることが多く、適切な治療を行うことで改善が期待できます。

 

当院では、咳喘息の患者様の年齢や状態に併せて適切な吸入薬を処方しています。

 

また、吸入器は薬の種類だけでなく「正しい吸い方」が効果を左右しますので、吸入器を処方した全員の方に院内で看護師が吸入指導を行っています。初回はもちろん、治療の途中でも吸入手技を確認し、無理なく続けられる形を一緒に整えていきます。

 

「咳が3週間以上続く」「夜眠れない」「市販薬で改善しない」「季節や環境で悪化する」などでお困りの方は、お早めにご相談ください。咳の原因を見極め、日常生活が楽になるようサポートいたします。

 

咳喘息の詳しい記事はこちら

咳喘息のほかの記事はこちら(毎年同じ時期に咳が出る人は咳喘息かもしれません)

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

引用文献

  1. Matsumoto H, Niimi A, Takemura M, et al. Prognosis of cough variant asthma: a retrospective analysis. J Asthma. 2006;43(2):131-135. doi:10.1080/02770900500498477.

  2. Matsuoka H, Niimi A, Matsumoto H, et al. Inflammatory subtypes in cough-variant asthma: association with maintenance doses of inhaled corticosteroids. Chest. 2010;138(6):1418-1425. doi:10.1378/chest.10-0132.

  3. Matsumoto H, Niimi A, Takemura M, et al. Features of cough variant asthma and classic asthma during methacholine-induced bronchoconstriction: a cross-sectional study. Cough. 2009;5:3. doi:10.1186/1745-9974-5-3.

  4. Miwa N, et al. An Open-Label, Multi-Institutional, Randomized Study to Evaluate the Additive Effect of a Leukotriene Receptor Antagonist on Cough Score in Patients with Cough-Variant Asthma Being Treated with Inhaled Corticosteroids. Kobe J Med Sci. 2018.

  5. Krings JG, Beasley R. The Role of ICS-Containing Rescue Therapy Versus SABA Alone in Asthma Management Today. J Allergy Clin Immunol Pract. 2024;12(4):870-879. doi:10.1016/j.jaip.2024.01.011. 

肺炎とは?症状・原因・治療・予防をわかりやすく解説

呼吸器・咳

肺炎は「肺の中の小さな袋(肺胞)」に細菌やウイルスが侵入して炎症が起き、咳・発熱・息切れなどが出る病気です。大人・高齢者の肺炎の原因(細菌・ウイルス・誤嚥)、検査、治療、入院が必要なサイン、予防(肺炎球菌ワクチン等)を分かりやすくまとめました。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック)では、呼吸器内科専門医が胸部レントゲンやCT検査によって肺炎の診断、そして外来治療を行っております。場合によっては迅速抗原キットにより原因菌の検査も行います。さらに肺炎球菌ワクチンなどの接種も予防にも取り組んでいます。

肺炎に関してお困りの際は当院へご相談ください。

 

肺炎とは

肺炎は、肺の中にある肺胞(はいほう)という小さな空気の袋に細菌がやウイルスが入りこみ、炎症が起こり、膿(うみ)や液体がたまって酸素を取り込みにくくなる状態です。咳、発熱、息苦しさなどが起こり、重症化すると入院が必要になることがあります。

 

肺炎の主な原因(うつる?うつらない?)

肺炎の原因は大きく分けて次のタイプがあります。

1)細菌性肺炎

いわゆる「細菌」が原因。抗菌薬(抗生物質)が有効なことがあります。

 

2)ウイルス性肺炎

インフルエンザや新型コロナ、RSウイルスなどのウイルスが原因となります。抗菌薬はウイルス自体には効きません(細菌の合併が疑われる場合は別)。

3)誤嚥(ごえん)性肺炎

食べ物・唾液・胃液などが気管に入り(誤嚥)、口の中の菌が肺に入って起こる肺炎。高齢者、飲み込みが弱い方、脳卒中後などで増えます。

“うつる”の?
肺炎そのものが必ずしも強くうつるわけではありませんが、原因となるウイルスや菌は人から人へ広がることがあります(手洗い・マスク・換気が大切)。

 

肺炎の症状(大人・高齢者で違うことも)

よくある症状:

  • ・咳、痰(黄色・緑など)

  • ・発熱、寒気、だるさ

  • ・息切れ、呼吸が苦しい

  • ・胸の痛み(咳や深呼吸で痛む)

高齢者は要注意:典型的な高熱が出ないこともあり、食欲低下・元気がない・意識がぼんやりなどで気づく場合があります。

 

受診の目安(今すぐ受診・救急のサイン)

次のような場合は、早めに医療機関へ(可能なら当日):

  • ・息苦しさがある/呼吸が速い

  • ・唇が紫っぽい、会話がつらい

  • ・強いだるさ、ぐったりして動けない

  • ・意識がもうろう、反応が鈍い(特に高齢者)

  • ・高熱が続く、または熱がなくても症状が悪化する

  • ・持病(心不全、COPD、糖尿病、腎不全など)や免疫低下がある



クリニックで行う検査

症状・診察に加えて、必要に応じて以下を行います。

  • ・聴診(肺の雑音の確認)

  • ・酸素飽和度(SpO₂)測定

  • ・胸部X線(レントゲン)、胸部CT検査

  • ・必要なら 血液検査抗原検査(インフル/COVID-19等)、痰の検査、抗原迅速キット(肺炎球菌・レジオネラ・マイコプラズマなど)

 

当院では上記検査を行っており、即日肺炎の診断を行い、速やかに治療を開始しています。

 

 

肺炎の治療(外来で治る?入院が必要?)

治療は「原因」と「重症度」で変わります。

 

外来治療の例

  • ・細菌性が疑われる:抗菌薬(飲み薬)

  • ・つらい症状:解熱鎮痛薬、咳・痰の対症療法、十分な水分摂取と休養

入院が必要になりやすいケース

  • ・酸素が足りない(SpO₂低下)

  • ・呼吸がかなり苦しい/血圧低下/意識障害

  • ・高齢・持病が多い・自宅療養が難しい
    重症度評価に基づき、入院や点滴、酸素療法などを検討します。

 



肺炎の予防(いちばん大事)

1)ワクチン

  • ・肺炎球菌ワクチン:高齢者や基礎疾患のある方で重症化予防が期待できます。

  • ・インフルエンザワクチンCOVID-19ワクチン:ウイルス感染→肺炎のリスクを下げる目的で重要です。

・RSウイルスワクチン(アレックスビー🄬)

  •  



 

2)誤嚥(ごえん)対策(高齢者に特に重要)

  • ・口腔ケア(口の中を清潔に)

  • ・食事姿勢・食べる速度の工夫

  • ・飲み込みが心配なら医師に相談(嚥下評価やリハビリ)

3)日常の感染対策

風邪をきっかけにして、肺炎に移行することがあります。そのため感染予防として手洗い、換気、体調不良時のマスク、十分な睡眠・栄養などが重要となってきます。

 

よくある質問(FAQ)

Q. 肺炎は自然に治りますか?

軽い場合は回復することもありますが、原因によっては悪化しやすく、特に高齢者は重症化しやすいです。息苦しさ・高熱・ぐったりがあれば早めに受診をおすすめします。

 

Q. 抗生物質(抗菌薬)を飲めば必ず治りますか?

細菌性肺炎には有効なことが多い一方、ウイルス性肺炎にはウイルス自体には効きません。医師が症状・検査から判断します。

 

Q. 何科を受診すればいい?

咳・発熱・息切れがある場合は、まずは内科/呼吸器内科が一般的です。夜間や強い呼吸困難があれば救急受診も検討してください。

 

当院からのメッセージ

 

当院では、肺炎を早期に見つけ、重症化を防ぐことを大切にしています。

咳・痰・発熱に加えて、息苦しさ、呼吸が速い、胸の痛み、強いだるさがある場合は、肺炎の可能性があります。特にご高齢の方は、熱が高くなくても「食事が進まない」「ぼんやりする」「いつもより動かない」などがサインになることがあります。

気になる症状があるときは、我慢せず早めに受診してください。名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院(熱田区)では、必要に応じてレントゲンや検査を行い、適切な治療につなげます。

 

当院の肺炎のページはこちら

マイコプラズマ肺炎に関する記事はこちら

インフルエンザ後の肺炎に関する記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

表紀仁

 

引用文献

  1. Metlay JP, Waterer GW, Long AC, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. doi:10.1164/rccm.201908-1581ST. PMID:31573350.

  2. DiBardino DM, Wunderink RG. Aspiration pneumonia: a review of modern trends. J Crit Care. 2015;30(1):40-48. PMID:25129577.

  3. Mandell LA, Niederman MS. Aspiration Pneumonia. N Engl J Med. 2019;380:651-663. doi:10.1056/NEJMra1714562.

  4. Bonten MJM, Huijts SM, Bolkenbaas M, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015;372(12):1114-1125. doi:10.1056/NEJMoa1408544. PMID:25785969.

  5. World Health Organization. Pneumonia (Health topic).

  6. Centers for Disease Control and Prevention. Pneumonia (About/Overview).

日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2024 

ネフィー®点鼻液とは?針なしアドレナリンを解説

アレルギー

アナフィラキシーは、皮膚症状だけでなく呼吸困難や血圧低下などを伴い、短時間で重篤化しうる病気です。その対応の中心となる薬剤がアドレナリンであり、投与の遅れは転帰に影響し得ます。

こうした背景のもと、アドレナリンを鼻腔内に投与する点鼻製剤として「ネフィー®点鼻液」が登場しました。注射製剤に比べて投与方法の心理的ハードルが低いと期待される一方、使用後の観察や救急対応は従来同様に重要です。

本記事では、ネフィーの基本情報を整理し、実際に備えるうえで押さえるべきポイントを解説します。

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院)では、ネフィーの処方やアレルギー検査を行っています。お気軽にご相談ください。

 

 

1) まず結論:ネフィーは「鼻に噴霧するアドレナリン」

ネフィー®点鼻液は、アナフィラキシーの治療で中心となるアドレナリン(エピネフリン)を、注射ではなく点鼻(鼻腔内噴霧)で投与できる薬です。 “中身はアドレナリン、形が点鼻”と覚えると理解が早いです。

 

2) なぜ注目?最大のメリットは「投与のハードルが下がること」

アナフィラキシーは時間との勝負ですが、自己注射は「刺す怖さ」「手技の不安」で遅れがちになることがあります。ネフィーは針が不要なので、心理的・手技的な壁を下げて“早く使える”可能性が期待されています。

 

3) ただし大事:「使ったら終わり」ではない

日本での公表情報ではネフィーは“アナフィラキシー反応に対する補助治療剤”として位置づけられています。つまり、点鼻でアドレナリンを入れた後も、

  • ・症状が続く/ぶり返す(再燃)

  • ・追加治療が必要になる

  • ・医療機関での医師の診察や観察が必要

という前提は変わりません。使用後は必ず救急対応・受診が基本です。

 

4) 用量の目安(体重で分かれる)

体重によって1mg/2mgを使い分けます。

① 体重 30kg以上: 1回スプレーを片側の鼻腔へ投与します。

② 体重 15kg以上30kg未満: 1回スプレーを片側の鼻腔へ投与します。

(対象年齢は4歳以上となっています)

 

5) ネフィーの実際の使用方法

ネフィーのHPより引用;https://www.neffy.net/

 

6) エピペン(自己注射)とどう違う?

  • 同じ点:どちらも主役はアドレナリン。早期投与が重要。使用後は受診が基本。

  • 違う点:投与経路が「筋肉内注射」か「鼻腔内噴霧」か。ネフィーは針がない。エピペンは注射薬。

  •  

7) 家庭・学校・職場での“備え”チェック(超短縮)

  • ・いつ使うかを主治医と決め、紙やスマホに残す

  • ・使った後は119+受診までをセットで共有

  • ・家族・教職員・同僚も、保管場所と手順を把握しておく

  •  

まとめ

ネフィー®点鼻液は、アナフィラキシーで重要なアドレナリンを“針なし”で投与できる新しい選択肢です。一方で、使用後の救急対応・医療機関での観察が必要という基本は変わりません。「持つ」だけでなく、使う基準と使った後の動きまでセットで準備しておくのが最大のポイントです。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院:熱田区)では、ネフィーの処方やアレルギー検査を行っています。お気軽にご相談ください。

 

当院で行っているアレルギー検査はこちら

当院のアレルギー科についてこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

参考文献:

Greenhawt M, Lieberman J, Blaiss M, Bernstein DI, Oppenheimer J, DuBuske L, Fleischer D, Dworaczyk DA. Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Profile of Epinephrine Nasal Spray Versus Intramuscular Epinephrine Autoinjector in Healthy Adults. J Allergy Clin Immunol Pract. 2024 Dec;12(12):3274-3282.e2. doi:10.1016/j.jaip.2024.10.006. Epub 2024 Oct 10. PMID: 39395775.

Tanimoto S, et al. Pharmacokinetic and pharmacodynamic comparison of epinephrine, administered intranasally and intramuscularly: An integrated analysis. Ann Allergy Asthma Immunol. 2023 Apr;130(4):508-514.e1. doi:10.1016/j.anai.2022.10.024. PMID: 36334720.

Ebisawa M, Takahashi K, Takahashi K, Yanagida N, Sato S, Lieberman J, Pistiner M, Spergel JM, Lowenthal R, Tanimoto S. Epinephrine Nasal Spray Improves Allergic Symptoms in Patients Undergoing Oral Food Challenge, Phase 3 Trial. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025 Oct;13(10):2787-2794. doi:10.1016/j.jaip.2025.06.038. Epub 2025 Jul 8. PMID: 40639499.

※一般向け解説です。実際の使用基準・手順は、必ず主治医の指示と添付文書に従ってください。アナフィラキシーが疑われるときは救急要請と医療機関受診が基本です。

寒暖差アレルギー?それとも喘息?—寒暖差が激しい時期に増える咳の正体

呼吸器・咳

「季節の変わり目になると咳が増える」「朝晩の冷え込みで咳き込みやすい」「暖房の部屋から外に出た瞬間にむせる」——こうした“寒暖差のタイミングで出る咳”で、困っている患者さんたくさんいらっしゃいます。


一方で、この咳の原因はひとつではありません。いわゆる“寒暖差アレルギー”のこともあれば、喘息(ぜんそく)や咳喘息、後鼻漏(こうびろう)、胃食道逆流症(逆流性食道炎)、あるいは感染後の咳が重なっていることもあります。

この記事では、寒暖差で増える咳の「正体」を、見分け方・検査・治療・セルフケアまで含めて、わかりやすく解説します。

 

1. そもそも「寒暖差アレルギー」とは?(実は“アレルギー”ではないことが多い)

一般に「寒暖差アレルギー」と呼ばれる症状の多くは、アレルゲン(花粉・ダニ・黄砂など)によるIgE型アレルギーというより、温度差・湿度差・冷気刺激で自律神経や鼻粘膜の血管が反応して起こる、非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎)のことが多いのです。

 

寒暖差で起きやすい症状

  • ・透明でサラサラした鼻水が急に出る

  • ・くしゃみが連発する

  • ・鼻づまり(特に片側が交互に詰まる感じ)

  • ・のどに鼻水が落ちる感じ(後鼻漏)

  • ・その結果として咳が出る/咳払いが増える

このタイプは、皮膚テストや特異的IgEが陰性でも起こり得ます。つまり検査でアレルギーが出ないのに症状がでます。

 

2. 寒暖差で咳が増えるメカニズム:鼻から?気道から?

寒暖差の咳は、大きく分けて (A) 鼻・上気道由来(B) 気管支(下気道)由来 の2つの原因があります。ここが見分けるカギです。

 

(A) 鼻・上気道由来:後鼻漏/上気道咳症候群(UACS)

鼻の分泌物がのどに落ちたり、のどの粘膜が刺激されたりして咳が続く状態で、長引くの主要原因のひとつです。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの上気道(鼻・副鼻腔)の状態が咳に深く関わることが知られています。

寒暖差鼻炎 → 後鼻漏 → のどのムズムズ・咳払い → 咳 という流れはとてもよくあります。

 

(B) 気管支(下気道)由来:喘息/咳喘息/気道過敏

冷たい乾いた空気は気道を刺激し、喘息体質の方では気道が収縮(気管支攣縮)しやすくなります。冷気吸入や運動+冷気で気道が狭くなりやすいことは古くから知られています。また、冷気が気道反応性を上げる(過敏にする)ことも報告されています。

さらに、気道には温度刺激などを感じるセンサー(TRPチャネルなど)があり、刺激が咳反射に関与します。

このように寒暖差によって気管支喘息や咳喘息の方では、咳が誘発される増えるのです。

 

3. 「寒暖差アレルギーの咳」と「喘息の咳」—見分けるポイント

以下はあくまで目安ですが、かなり役に立ちます。

寒暖差(鼻炎・後鼻漏)寄りの特徴

  • ・咳というより咳払いが多い、のどがイガイガする

  • ・鼻水・鼻づまり・くしゃみが主役

  • ・痰は少量で透明、あるいは「のどに落ちる感じ」

  • ・就寝中より、朝起きた時・外出時・電車や店舗の冷暖房で悪化

  • ・ゼーゼー(喘鳴)や息苦しさは目立たない

喘息/咳喘息寄りの特徴

  • ・夜間〜明け方に咳で目が覚める

  • ・風邪のあとに咳だけが長引きやすい

  • ・冷気、会話、笑い、運動で咳き込みやすい

  • ・胸が苦しい/息が吸いにくい感じがある

  • ・家族歴や既往(喘息、アトピー、アレルギー性鼻炎)がある

  • ・喘鳴(ゼーゼー)があることも(ただし咳喘息ではないことも多い)

※「喘鳴がない=喘息ではない」とは言い切れません。咳喘息は“咳が主症状”で、聴診でゼーゼーがはっきりしないこともあります。

 

4. 実は多い「重なり」:鼻炎×喘息、後鼻漏×気道過敏

実際に診療をしていると、咳の原因が寒暖差鼻炎(後鼻漏)だけ喘息だけで片付くよりも、鼻の問題(上気道)+気管支の問題(下気道)が重なっているケースがとても多いです。過去の研究でも、長引く咳の原因は複数の要因で起凝っているケースが約3分の1程度あると報告されています。

「鼻を整えたら咳が半分に減った」「喘息治療を足したら咳が止まった」というのはよくあります。

 

5. 受診の目安:こんな咳は早めに相談を

早めの受診をおすすめする症状

  • ① 咳が3週間以上続く/悪化している

  • ② 夜間〜明け方の咳で眠れない

  • ③ 息苦しさ、胸の痛み、ゼーゼーがある

  • ④ 発熱・血痰・体重減少などがある

  • ⑤ 仕事や日常生活に支障が大きい

  • ⑥ 市販薬で改善しない

特に、喘息は適切な治療でコントロールできる病気です。放置して気道の炎症が長引くと、治りにくくなることもあるため、長引く咳は早めの評価が大切です。

 

6. 当院で行う検査(原因に合わせて組み合わせます)

 

1) 呼吸機能検査(スパイロメトリー)

気道が狭くなっていないか、可逆性があるか(気管支拡張薬で改善するか)などを確認します。気管支喘息の診断に重要な検査になります。

 

2) 呼気一酸化窒素(FeNO)

気道の“好酸球性炎症(タイプ2炎症)”の目安になる検査です。長引く咳の中で咳喘息を診断する上で大事になってきま

す。 

※ただしFeNOは万能ではなく、低値でも喘息が否定できないことがあります(総合判断が重要)。

 

 

3) アレルギー検査(特異的IgEなど)

花粉・ダニ・動物など、アレルギー性鼻炎や喘息の背景を把握するのに有用です。当院では特異的IgE抗体検査、非特異的IgE抗体検査、好酸球数の測定などを行っています。血液検査で行います。

 

当院で実施しているアレルギー検査に関しては、詳しくはこちら

 

4) 画像検査やその他(必要時)

副鼻腔炎、肺炎、他疾患が疑われる場合は、胸部レントゲン検査やCT検査、副鼻腔のレントゲン・CT検査などを組み合わせます。

 

 

7. 治療:原因別に「効く治療」が違います

A. 寒暖差鼻炎(非アレルギー性鼻炎)・後鼻漏が主体の場合

ポイントは「鼻の炎症・過敏性を抑える」「分泌過多を抑える」ことです。

  • ① 点鼻薬(鼻噴霧用薬)
    症状により、ステロイド点鼻、抗ヒスタミン点鼻などを使い分けます。非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎)に対するアゼラスチン点鼻の有効性を示した試験報告があります。

  • ② 鼻洗浄

生理食塩水で行います(後鼻漏が強い方で有用なことがあります)

  • ③ 副鼻腔炎があれば、その治療(抗菌薬が必要な場合も)

 

B. 喘息/咳喘息が主体の場合

喘息の咳は「気道の炎症」が土台にあるため、気管支拡張薬だけでは十分でないことが多く、吸入ステロイドが重要になります(病状により併用薬も調整)。

 

C. “寒暖差の時期”にこそ効くセルフケア(共通)

  • マスク:冷気・乾燥を和らげ、気道刺激を減らします

  • 加湿:就寝時の加湿、のど・鼻の乾燥対策

  • 首元の保温:外気の刺激を減らす

  • 急な温度変化を避ける工夫:玄関・脱衣所・寝室の温度差を小さく

  • 運動前のウォームアップ:冷気+運動で咳き込みやすい人は特に重要(冷気で誘発されやすいことが示されています)

  • 香水・煙・スプレー・強い芳香を避ける(刺激で咳反射が過敏になりやすい)



8. よくある質問(FAQ)

Q1. 「寒暖差アレルギーなら、抗ヒスタミン薬で治りますか?」

“寒暖差鼻炎(非アレルギー性鼻炎)”は、典型的な花粉症のようなIgE型アレルギーとは違うため、内服抗ヒスタミンが効きにくい方もいます。一方で、点鼻の抗ヒスタミン薬が有効なケースも報告されています。症状(鼻水主体か、鼻づまり主体か、後鼻漏が強いか)で治療を組み合わせるのが現実的です。

 

Q2. ゼーゼーしないけど喘息のことはありますか?

あります。咳喘息は、ゼーゼーが目立たず「咳だけ」で続くことがあり、検査(呼吸機能、FeNO等)や治療反応を含めて判断します。FeNOは咳喘息の“見つけやすさ”の補助になります。

 

Q3. 寒暖差の咳は放っておいても治りますか?

一時的なものなら自然に軽快することもありますが、

  • ・3週間以上続く

  • ・夜間に悪い

  • ・毎年同じ時期に繰り返す

  • ・生活に支障がある
     

上記のような場合は、喘息や副鼻腔炎など治療が必要な原因が隠れていることもあるため、検査をおすすめします。

 

9. 当院からのメッセージ

寒暖差が大きい時期に増える咳は、「寒暖差アレルギー」と一括りにされがちですが、実際には 鼻(後鼻漏) が原因のこともあれば、喘息/咳喘息 が関わることもあり、両方が重なっている方も少なくありません。
咳が長引くほど体力も奪われ、睡眠や仕事のパフォーマンスにも影響します。気になる咳が続く場合は、呼吸機能検査や炎症の検査などを組み合わせて原因を整理し、あなたに合った治療とセルフケアを一緒に考えていきましょう。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院:熱田区)では、呼吸器内科専門医が呼吸機能検査・呼気NO検査・胸部レントゲン検査などを即日実施し、結果説明、治療の開始をスムーズに行うことができます。寒暖差による咳でお悩みの方は一度当院へご相談ください。

 

当院の長引く咳の記事はこちら

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

引用文献

  1. Côté A, Russell RJ, Boulet LP, Gibson PG, Lai K, Irwin RS, Brightling CE; CHEST Expert Cough Panel. Managing Chronic Cough Due to Asthma and NAEB in Adults and Adolescents: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2020;158(1):68-96. doi:10.1016/j.chest.2019.12.021.

  2. Song WJ, et al. Diagnostic accuracy of fractional exhaled nitric oxide measurement in predicting cough-variant asthma and eosinophilic bronchitis in adults with chronic cough: A systematic review and meta-analysis. J Allergy Clin Immunol. 2017;140(3):701-709.e?. doi:10.1016/j.jaci.2016.11.037.

  3. Khatri SB, et al. Use of Fractional Exhaled Nitric Oxide to Guide the Treatment of Asthma: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2021. doi:10.1164/rccm.202109-2093ST.

  4. Bateman ED, Reddel HK, O'Byrne PM, et al. As-Needed Budesonide-Formoterol versus Maintenance Budesonide in Mild Asthma. N Engl J Med. 2018;378(20):1877-1887. doi:10.1056/NEJMoa1715275.

  5. Strauss RH, McFadden ER Jr, Ingram RH Jr, Jaeger JJ. Enhancement of exercise-induced asthma by cold air. N Engl J Med. 1977;297(14):743-747. doi:10.1056/NEJM197710062971402.

  6. Dosman JA, Hodgson WC, Cockcroft DW. Effect of cold air on the bronchial response to inhaled histamine in patients with asthma. Am Rev Respir Dis. 1991;144(1):45-50. doi:10.1164/ajrccm/144.1.45.

実は胃酸が原因?長引く咳と「逆流性食道炎」の関係

呼吸器・咳

「咳が2か月以上続く」「夜や食後に咳が増える」「喘息の薬を使っても咳だけ残る」——。
こうした長引く咳の相談は、非常に多いです。原因としてまず挙げられるのは、咳喘息・気管支喘息、後鼻漏(鼻炎/副鼻腔炎)、感染後咳嗽などですが、実はもう一つ見落とされやすいのが逆流性食道炎/胃食道逆流症です。

逆流性食道炎というと「胸やけ」のイメージが強いですが、食道の外の症状——とくに長引く咳、喉の違和感、声がれなどに関与していることが分かっています。とはいえ「咳=胃酸」と単純に決めつけるのは危険で、診断・治療の当たり外れが起こりやすい領域でもあります。

この記事では、長引く咳と逆流性食道炎の関係を、できるだけ最新の科学データに基づいて分かりやすく解説します。

 

この記事でわかること

  • ・長引く咳の原因として「逆流性食道炎」が関係する仕組み

  • ・胸やけがなくても胃酸逆流が疑われる理由

  • ・「呼吸器内科」での考え方(ほかの原因との見分け方)

  • ・検査の選択肢(胃カメラ、二十四時間の逆流検査など)

  • ・治療は「薬だけ」ではなく生活改善が重要な根拠

  • ・胃酸を抑える薬が“効く人・効きにくい人”がいる理由

  •  

1. 長引く咳は「呼吸器の病気」だけが原因ではない

咳が続くと、多くの方は「気管支炎」「喘息」「アレルギー」「風邪が治りきらない」などを想像します。実際、呼吸器内科でよくみる長引く咳の原因には、咳喘息や気管支喘息鼻炎や副鼻腔炎に伴う鼻水ののどへの流れ込み感染後に咳だけが残る状態などが多く見られます。

一方で、見落とされやすいのが 胃酸や胃内容物が食道へ逆流する状態(逆流性食道炎、または内視鏡で炎症が見えないタイプの胃酸逆流) です。消化器の病気のイメージが強いですが、実は胃酸逆流が咳など食道以外の症状に関連することが分かっています。

 

 

2. 逆流性食道炎が咳を起こす仕組みは大きく二つ

 

 

 

「胃の病気が、なぜ咳に?」という疑問に思うかもしれません。考えられるメカニズムは主に二つあります。

 

① 食道が刺激されることで、反射的に咳が出やすくなる

食道の粘膜が胃酸などで刺激されると、咳神経(迷走神経)の反射を介して咳の反射が起こりやすくなると考えられています。咳は異物から気道を守る反応ですが、食道側の刺激が引き金になって“咳のスイッチ”が入りやすくなるイメージです。

 

② 逆流した内容物が、のどや気道を直接刺激する(微量の吸い込みを含む)

逆流が強い場合、胃酸や胃内容物が食道上部やのどの近くまで上がり、のどの違和感、声がれ、咳払いを引き起こすことがあります。さらに、微量に気道へ入り込むことで刺激となり、咳や気道の炎症に関与しうる、という考え方もあります。

 

 

3. 「胸やけがないのに咳だけ」でも逆流性食道炎はあり得る

逆流性食道炎は胸やけの病気、という印象が強い一方で、現実の診療では胸やけがはっきりしないのに咳が長引く人もいます。

ただし、ここが最大の落とし穴です。咳だけで逆流性食道炎と断定することは難しいのが実情です。胃酸逆流によって咳がでる場合、胸やけ・呑酸などの典型症状は約25%にしか見られない、と言われています。つまり、約75%は典型的逆流症状が目立たないことになります。

 

4. 「逆流性食道炎が疑われる咳」の特徴

実際の外来では、次のような情報がそろうほど、逆流の関与を疑いやすくなります(あくまで目安です)。

 

逆流性食道炎を疑うヒント

  • ・食後に咳が増える(特に食べ過ぎ、脂っこい食事、早食いの後)

  • ・横になると咳が出やすい、夜間や明け方に咳き込みやすい

  • ・胸やけ、酸っぱいものが上がる感じ、げっぷが増えた

  • ・のどのイガイガ、声がれ、咳払いが多い

  • ・飲酒で悪化、夜食で悪化しやすい

  • ・喘息の治療をしても、咳だけが残る(ただし別原因も多い)

通勤や生活リズムの影響で夕食が遅い・帰宅後すぐ横になるなどが重なり、逆流が起きやすい生活パターンになっていることもあります。生活背景は診断の大事な手がかりです。

 

5. まず重要:咳の原因を「胃酸だけ」にしない

咳が長引くとき、呼吸器内科がまず重視するのは「頻度が高い原因」と「見落としてはいけない原因」の整理です。慢性咳の診療指針でも、逆流性食道炎だけを最初に決め打ちするのではなく、段階的に評価することが推奨されています。

よくある原因(例)

  • ・咳喘息、気管支喘息

  • ・鼻炎や副鼻腔炎による鼻水ののどへの流れ込み

  • ・感染後に咳だけが残る状態

  • ・喫煙や受動喫煙、環境刺激



早めに除外したい原因(例)

  • ・肺炎、結核

  • ・心不全

  • ・肺がんなど(症状や画像所見で判断)

「逆流の治療をしたのに治らない」ケースの中には、実は 鼻の問題や喘息成分が主役で、逆流は脇役だった、ということも少なくありません。

 

6. なぜ「胃酸を抑える薬を飲めば治る」とは限らないのか(研究から)

逆流が疑われると、胃酸を抑える薬が処方されることがあります。ところが、慢性咳の領域では、胃酸を抑える薬の効果がはっきりしない研究も複数あります。

 

① 胸やけ症状が乏しい長引く咳では、胃酸を強く抑えても改善しないことがある

胸やけが少ない長引く咳の人を対象に、胃酸を強く抑える治療を行った研究では、咳に対して明確な上乗せ効果がみられないということが報告されています。同様に、別の比較研究でも、胃酸を抑える薬が咳に対して臨床的に重要な差を示さなかった、という報告があります。

 

② それでも逆流が咳の引き金になる人はいる

一方で、逆流が咳に関与する機序を検討した研究もあり、逆流と咳のつながり自体は否定されていません。

つまり結論はこうです。

  • 逆流が咳の原因になっている人は確かにいる

  • しかし慢性咳全体では、逆流が主因の人は一部であり、胃酸抑制だけでは改善しない人も多い

この背景を裏づける材料として、二十四時間の胃酸逆流検査などで精密に検査すると、慢性で原因がはっきりしない咳のうち、逆流が咳の主因と判断されるのは約四分の一程度だったという報告があります。

 

7. 検査はどう進む?

① 呼吸器内科で先に評価されやすいこと

まずは呼吸器としての基本的な検査が行われます。

  • ・胸部エックス線検査、必要に応じて胸部CT検査
  • ・呼吸機能検査(気道が狭くなっていないか)
  •  
  • ・呼気NO検査
  •  
  • ・喘息成分、鼻症状の関与の確認
  •  
  • これにより、重大疾患の見落としを防ぎつつ、頻度が高い原因を調べることができます。

  •  

② 逆流性食道炎の評価で重要になり得る検査

上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)

食道に炎症があれば逆流性食道炎の裏づけになります。ただし、内視鏡で炎症が見えないタイプの逆流もあり、内視鏡が正常でも逆流が否定されるわけではありません。

 

二十四時間の食道酸逆流検査、または酸以外の逆流も評価する検査

酸の逆流だけでなく、酸ではない逆流も含めて評価し、さらに「咳が起きたタイミングと逆流のタイミングの関連」を検討する方法があります。逆流と咳の関連を見極める上で、こうした検査が有用になり得ることが報告されています。

 

 

8. 治療:薬だけでなく「生活改善」が咳の改善に直結しやすい

逆流性食道炎の治療は、薬に注目されがちですが、生活面の対応も重要な柱です。長引く咳の人は、生活改善が“効きやすい”ことも多く、内服治療と並行して行ったほうがよいでしょう。

 

今日からできる生活の工夫

  1. ・寝る前二〜三時間は食事をしない(夜食を避ける)

  2. ・食後すぐ横にならない(ソファでうたた寝も含む)

  3. ・食べ過ぎと早食いを避ける(胃のふくらみを抑える)

  4. ・体重管理(腹圧を下げる)

  5. ・飲酒や脂っこい食事で悪化するなら調整する

  6. ・喫煙は咳そのものを悪化させやすいので禁煙を検討する

  7.  

薬物療法の位置づけ

  • 胃酸を抑える薬は逆流性食道炎の中核治療ですが、咳に対しては効く人と効きにくい人がいることが研究で示されています。

  • 胸やけや酸っぱい逆流感が明確な人、検査で逆流と咳の関連が示される人では、改善が期待されやすくなります。

薬の第一選択はプロトンポンプ阻害薬(ネキシウムやラベプラゾールなど)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(タケキャブ/ボノプラザン)で、胸やけや食道の炎症を改善します。

  •  

 

9. よくある質問

質問:胸やけがなくても、逆流性食道炎が原因で咳が続きますか?

起こり得ます。症状だけで確定は難しいという問題があります。

 

質問:胃酸を抑える薬を飲めば、長引く咳は治りますか?

逆流が主因の一部の人では改善し得ますが、研究では「胸やけが乏しい慢性咳では差が出にくい」報告もあり、万能ではありません。

 

質問:咳が主症状なら、呼吸器内科と消化器内科のどちらがよいですか?

主訴が咳であれば、まず呼吸器内科で頻度の高い原因を整理し、そのうえで胃酸逆流の検査が必要なら消化器内科と連携する流れがもっともよいです。

 

まとめ:長引く咳の背景に「逆流性食道炎」があることは確かにある。ただし見極めが重要

  • 長引く咳は、咳喘息や鼻の病気だけでなく、胃酸や胃内容物の逆流(逆流性食道炎)が関与していることがあります。とくに、胸やけなどの典型的な症状がはっきりしない場合でも、逆流が咳を悪化させているケースが報告されています。一方で、咳の原因は一つとは限らず、複数の要因が重なっていることも少なくありません。
    当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
    )では、呼吸器の病気(気管支喘息、咳喘息、感染後の咳、慢性閉塞性肺疾患など)を丁寧に問診・検査したうえで、症状の出方や生活背景から逆流の関与も含めて総合的に判断します。必要に応じて、消化器の評価も視野に入れ、原因に合わせた治療と生活指導を行います。
    「咳が八週間以上続く」「夜間や食後に咳が増える」「治療を受けても咳だけ残る」など、名古屋(熱田区・中区)で呼吸器の検査や治療をご希望の方は、当院へまずご相談ください。


 

長引く咳の記事はこちら

空咳の詳しい記事はこちら

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

引用文献

  1. ・Katz PO, Dunbar KB, Schnoll-Sussman FH, Greer KB, Yadlapati R, Spechler SJ. ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease. Am J Gastroenterol. 2022;117(1):27-56. doi:10.14309/ajg.0000000000001538. PMID: 34807007.

  2. ・Kahrilas PJ, Altman KW, Chang AB, Field SK, Harding SM, Lane AP, et al. Chronic Cough Due to Gastroesophageal Reflux in Adults: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2016;150(6):1341-1360. doi:10.1016/j.chest.2016.08.1458. PMID: 27614002.

  3. ・Shaheen NJ, Crockett SD, Bright SD, Madanick RD, Buckmire R, Couch M, et al. Randomised clinical trial: high-dose acid suppression for chronic cough - a double-blind, placebo-controlled study. Aliment Pharmacol Ther. 2011;33(2):225-234. doi:10.1111/j.1365-2036.2010.04511.x. PMID: 21083673.

  4. ・Faruqi S, Molyneux ID, Fathi H, Wright CE, Thompson R, Morice AH. Chronic cough and esomeprazole: a double-blind placebo-controlled parallel study. Respirology. 2011;16(7):1150-1156. PMID: 21707852.

  5. ・Herregods TVK, Pauwels A, Jafari J, Sifrim D, Smout AJPM, Bredenoord AJ, Tack J. Ambulatory pH-impedance-pressure monitoring as a diagnostic tool for the reflux-cough syndrome. Dis Esophagus. 2018;31(1):dox118. PMID: 29036585.

  6. ・Ing AJ, Ngu MC, Breslin ABX. Pathogenesis of chronic persistent cough associated with gastroesophageal reflux. Am J Respir Crit Care Med. 1994;149(1):160-167. doi:10.1164/ajrccm.149.1.8111576. PMID: 8111576.

・Gaude GS. Pulmonary manifestations of gastroesophageal reflux disease. Ann Thorac Med. 2009;4(3):115-123. doi:10.4103/1817-1737.53347. PMID: 19641641. 

在宅酸素療法とは?効果・機器・生活上の注意点を解説

呼吸器・咳

在宅酸素療法は、慢性的に体内の酸素が不足する状態(慢性呼吸不全など)に対して、自宅で酸素を吸入しながら生活する治療法です。外来通院を続けながら治療でき、息切れの軽減や生活の質(QOL)向上、病状の安定を目指します。

この記事では、在宅酸素療法について患者さん・ご家族が知りたいポイント(適応の目安、装置の種類、導入の流れ、日常生活の注意点、よくある質問)をまとめます。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院)では呼吸器内科を専門としており、在宅酸素療法を行っております。多くの酸素機器提供会社と連携しており、在宅酸素療法を継続したい・開始したいと考えている方は、一度当院へご相談ください。

 

 

在宅酸素療法が必要になるのはどんなとき?

空気中の酸素濃度は約20%ですが、肺や心臓の病気で酸素を取り込む力が落ちると、血液の酸素が十分に保てなくなります。そのような状態で、医師の判断のもと自宅でも酸素吸入を行えるようにするのが在宅酸素療法です。

酸素を吸入する方法としては、機械からチューブを通して酸素が送られてきます。主に鼻に酸素チューブをつけて酸素を吸入します。

 

 

 

適応(導入)の目安

在宅酸素療法は、検査や症状から医師が総合的に判断します。具体的には、主に動脈血ガス検査(採血)、安静にしている時や動いたときのSpO₂(酸素飽和度)などの検査結果と、患者様の息切れの程度などを見て判断します。

また、導入時の目安としては、動脈血液ガス検査においてPaO₂(動脈血酸素分圧)55mmHg以下、または60mmHg以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素がある場合などがあります。

※数値はあくまで「目安」で、病気の種類、二酸化炭素貯留の有無、合併症、生活状況により最適な治療は変わります。

 

 

在宅酸素療法ってどうやって行うの?

酸素を吸入する方法としては、機械からチューブを通して酸素が送られてきます。主に鼻に酸素チューブをつけて酸素を吸入します。

機械には部屋の空気から酸素を濃縮するタイプや液体酸素などのボンベを使用するタイプなど様々なものがあります。現在は携帯型タイプのものもあります(後述します)。

 

 

対象となる主な病気(原因)

在宅酸素療法が検討される代表例は、慢性呼吸不全をきたす病気です。よく見られる原因としては以下が挙げられます(実際の適応は医師が判断します)。

在宅酸素療法で期待できる効果

患者さんが実感しやすいメリットは次のとおりです。

  • ・息切れの軽減(特に動作時)

  • ・睡眠の質の改善(夜間の低酸素がある場合)

  • ・日中の活動量アップ(外出・リハビリの継続)

  • ・慢性呼吸不全の治療の一部として、病状を安定させることを目指す

治療のゴールは「酸素を吸うこと」自体ではなく、必要な酸素を確保して“生活を保つ・広げる”ことです。

 

在宅酸素療法の装置の種類:酸素濃縮器・液体酸素・ボンベ(携帯)

在宅酸素療法では、自宅に設置する装置からチューブ(鼻カニューラなど)で酸素を吸入します。主な酸素供給装置として、酸素濃縮器液体酸素、外出時の携帯用ボンベ/携帯型濃縮器などがあります。

 

1)酸素濃縮器(最も主流)

空気から酸素を濃縮して供給します。家庭用電源を使うタイプが中心で、多くの患者さんで選ばれます。

メリット

  • ・残量を気にせず使いやすい(電気があれば継続使用可能)

注意点

  • ・停電時は止まるため、非常用(ボンベ等)の備えが重要



2)液体酸素

液体酸素を気化させて酸素を作ります。電気が不要な点が特徴です。

メリット

  • ・電気が不要(停電時も継続しやすい)

  • ・外出用の“子器”が軽量な場合がある

  • ・酸素流量が高い流量が得られる

注意点

  • ・液体酸素を充填する必要がある
  •  
  • ・持ち運びが不便

3)携帯用酸素(ボンベ/携帯型濃縮器)

外出や通院、リハビリ時に使用します。近年は携帯型濃縮器も普及し、外出の幅が広がっています。車のシガーソケットなどで充電が可能なタイプもあります。

 

 

導入までの流れ(外来での一般的なイメージ)

クリニックで説明する際に使いやすい、一般的な流れです。

  1. ① 症状の確認(息切れ、夜間の苦しさ、歩行時の低酸素など)

  2. ② 検査(SpO₂、必要に応じて動脈血ガス、画像、呼吸機能、運動時・睡眠時評価)

  3. ③ 適応判断:酸素が必要な状況・流量・使用時間帯を検討

  4. ④ 機器の選択:生活導線、外出頻度、停電対策、設置環境を踏まえて決定(装置の選択肢が整理されています)

  5. ⑤ 指導・開始:装着方法、皮膚トラブル対策、火気注意、外出時の取り扱いなど

  6. ⑥ 定期フォロー:症状・SpO₂・副作用(乾燥、鼻出血など)・必要流量の見直し

 

*在宅酸素療法の開始には、医師の酸素処方箋が必要です。

 

名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院では以下の酸素提供会社と提携しています。

・メディカルケア

・小池メディカル

・テイジン

・エバ(エバホームケアサービス)

他にも提携している会社もございますので、お問い合わせください。

 

 

日常生活での注意点:安全に続けるために

火気(禁煙・火の近くで使わない)

酸素そのものは燃えませんが、燃焼を強く助けます

  • ・禁煙(本人だけでなく同居家族も協力を)

  • ・ガスコンロ、ストーブ、ろうそく、線香などの火気は距離を取る

  • ・火気のある場所での酸素使用は避ける

乾燥・鼻や皮膚のトラブル

鼻カニューラで、鼻の乾燥、痛み、鼻出血、耳周りの擦れが起こることがあります。保湿やチューブ固定の工夫、必要なら医療者に相談しましょう。

 

外出・旅行(飛行機を含む)

在宅酸素療法でも外出は可能です。航空機利用などは事前準備が必要になることがあり、学会マニュアルでも旅行時の評価・準備がまとめられています。
「外出してもいいの?」「旅行したい」など、遠慮なく主治医に相談してください。

 

健康保険は使える?費用は?

在宅酸素療法は、適応基準を満たす場合に健康保険が使えることが多いです。自己負担割合(1割〜3割)、公費制度や難病・障害福祉などの対象有無で負担は変わるため、導入時に個別に確認する必要があります。

 

在宅酸素療法が必要な患者様は、病気が進行している状態のことが多く、場合によっては身体障害者認定や難病指定により医療費の負担が大幅に軽減されることがあります。

 

身体障害者認定(呼吸機能障害)についての詳しい記事はこちら

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 酸素は「クセ」になりますか?

医師が必要と判断した低酸素を補う治療であり、いわゆる依存の意味で「クセになる」ものではありません。むしろ、必要な酸素を補わず我慢すると体に負担がかかることがあります。

 

Q2. 何時間くらい吸う必要がありますか?

病状と検査結果、日中・夜間・運動時の低酸素の程度で変わります。処方された流量・時間を守り、息苦しさやSpO₂が下がる場面がある場合は主治医へ相談しましょう。

 

Q3. 酸素を増やせば楽になりますか?

自己判断で流量を変更すると、状態によっては危険な場合があります(特に二酸化炭素が溜まりやすい方など)。流量変更は必ず医師の指示で行ってください。

 

Q4. 在宅酸素療法でも運動・リハビリはできますか?

多くの場合、安全に配慮しつつ運動や呼吸リハビリを継続することが大切です。外出用酸素や歩行時の設定など、医療者と一緒に調整します。

 

クリニックからのメッセージ

  • 「階段や坂で息切れが強い」

  • 「歩くとSpO₂が下がると言われた」

  • 「夜間の息苦しさ・寝起きの頭痛がある」

  • 「肺の病気で治療中だが、最近活動量が落ちた」

このような場合は、低酸素が隠れていることがあります。検査で状態を確認し、必要があれば在宅酸素療法を含めた治療をご提案します。名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック(金山駅前院:熱田区)では、血液中の酸素濃度や動作時の息切れなどを見て、酸素の導入ができるかどうか、どのくらいの酸素流量がよいかを決定しています。様々な酸素提供会社と連携しておりますので、他の病院からの転院・転医も受け入れています。お困りの際は、一度当院へご相談ください。

 

当院の呼吸器内科の紹介はこちら

 

 

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参考記事

  1. Nocturnal Oxygen Therapy Trial Group. Continuous or nocturnal oxygen therapy in hypoxemic chronic obstructive lung disease: a clinical trial. Ann Intern Med. 1980 Sep;93(3):391-398. doi:10.7326/0003-4819-93-3-391. PMID:6776858.

  2. ・Medical Research Council Working Party. Long term domiciliary oxygen therapy in chronic hypoxic cor pulmonale complicating chronic bronchitis and emphysema. Lancet. 1981 Mar 28;1(8222):681-686. PMID:6110912.

  3. ・Albert RK, Au DH, Blackford AL, et al. A Randomized Trial of Long-Term Oxygen for COPD with Moderate Desaturation. N Engl J Med. 2016 Oct 27;375(17):1617-1627. doi:10.1056/NEJMoa1604344. PMID:27783918.

  4. ・Jacobs SS, Krishnan JA, Lederer DJ, et al. Home Oxygen Therapy for Adults with Chronic Lung Disease. An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2020 Nov 15;202(10):e121-e141. doi:10.1164/rccm.202009-3608ST. PMID:33185464.

  5. ・Ahmadi Z, Sundh J, Bornefalk-Hermansson A, Ekström M. Long-Term Oxygen Therapy 24 vs 15 h/day and Mortality in Chronic Obstructive Pulmonary Disease. PLoS One. 2016 Sep 20;11(9):e0163293. doi:10.1371/journal.pone.0163293. PMID:27649490.

 

いびきについて完全解説、睡眠時無呼吸との違いは?

睡眠時無呼吸

 

「いびきがうるさいと言われた」「最近いびきが大きくなった」——そんな悩みは珍しくありません。いびきには、健康への影響が小さい単純性いびき(原発性いびき)もあれば、呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。大切なのは、まず“どちらに当てはまるか”を見極め、そのうえで原因に合った対策を選ぶことです。この記事では、単純性いびきの特徴、セルフチェックのポイント、治療・対処法をわかりやすく解説します。

 

 

1) 単純性いびきとは何か

いびきは、睡眠中に上気道(鼻〜のど)が狭くなり、空気が乱流になって粘膜が振動して生じる音です。単純性いびきは、いびきはあるが、睡眠時無呼吸(反復する無呼吸/低呼吸、酸素低下、過度の覚醒反応)がない状態を指します。

単純性いびきは、睡眠時無呼吸とは異なり寿命が短くなったり病気などのリスクとはなりません。その一方、本人やパートナーの睡眠障害、関係性、日中の生活に大きく影響するため、お悩みの方も多いです。

いびきで本人・パートナーの日常生活に影響が出ている場合、マウスピースの作成をお勧めしています。

 

「単純性いびきと思っていたら睡眠時無呼吸だった」を疑うサイン

次がある場合は、単純性いびきより睡眠時無呼吸を優先して検査します(睡眠検査の適応になりやすい):

  • ① 就寝中に呼吸が止まる/窒息感で目覚める(同居者の目撃含む)

  • ② 日中の強い眠気、居眠り運転リスク、集中力低下

  • ③ 起床時頭痛、夜間頻尿、睡眠の質が悪い

  • ④ 高血圧、肥満、首回りが太い、2型糖尿病など併存
  •  



2) 単純性いびきの診断(やることは「睡眠時無呼吸の除外」+「狭窄部位と誘因の特定」)

A. 問診(本人+同居者情報が強い)

  • ・いびき頻度(週何回)、音量、仰向けで悪化するか、飲酒後に悪化するか

  • ・無呼吸の目撃、寝汗、窒息感、夜間覚醒

  • ・日中の眠気、朝の頭痛、集中力、仕事・運転への影響

  • ・体重増加、薬(睡眠薬・抗不安薬)、鼻炎症状

※スマホ録音やいびきアプリは“目安”にはなりますが、睡眠時無呼吸の確定/除外は睡眠検査が基本です。

 

B. 診察(耳鼻科・睡眠外来でよく見る所)

    • BMI(肥満度)、頸囲、血圧
  • 鼻(鼻中隔弯曲、下鼻甲介肥大、アレルギー性鼻炎)

  • 口腔・咽頭(扁桃、口蓋垂、軟口蓋、舌の大きさ)

  • 顎の後退、小顎、歯列

C. 検査(必要に応じて)

  • 睡眠検査(ポリソムノグラフィー検査または簡易睡眠検査):睡眠時無呼吸の除外や診断のために行います。単純性いびきと決め打ちせず、疑わしい場合は検査が安全です。当院では簡易睡眠検査(アプノモニター)とポリソムノグラフィー検査を自宅にて行っております。

  • 鼻閉が強い場合:鼻腔通気度、内視鏡などを検討します。

  • 体位依存(仰向けで悪化)評価:生活情報+睡眠検査データで判断します。

 

3) 治療・対処

単純性いびきは生命予後の高リスク疾患ではない一方、本人/同床者の睡眠障害、関係性、日中機能に大きく影響します。治療は次の優先度が一般的です。

 

① 生活習慣・誘因の是正(まず全員に)

(1) 就寝前の飲酒を避ける
アルコールは上気道筋を弛緩させ、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させ得ます。過去の県k集データからも、アルコール摂取がいびき・AHI(無呼吸・低呼吸指数)・最低SpO₂(酸素飽和度)悪化と関連することが示されています。

(2) 体重管理(特に体重増加後に悪化した人)
いびき・睡眠時無呼吸は体重と強く連動します。睡眠時無呼吸での研究では減量するとがAHI(無呼吸・低呼吸指数)を改善することが示されており、単純性いびきでも「体重増加で悪化」タイプは減量の合理性が高いです。

(3) 睡眠薬・鎮静薬の見直し(処方医と相談)
鎮静により上気道がさらに潰れやすくなることがあります。

(4) 鼻づまり対策(後述の局所治療とセット)
鼻呼吸が保てると、口呼吸由来の振動が減る人がいます。

 

② 体位療法(“仰向けで悪化”が明確なら有力)

  • ・仰向けで舌根が落ちるタイプでは、横向き寝で改善しやすいです。

  • ・枕調整などを行います。

近年の研究では、単純性いびきに対してマウスピ-スと体位を組み合わせた治療法がより有効な可能性が示されています。

 

③ 鼻の治療(鼻炎・鼻閉がある人に“効く可能性が高い”)

アレルギー性鼻炎/慢性鼻炎がある場合:点鼻ステロイド
いびき患者を対象にした研究で、点鼻ステロイド薬が鼻呼吸割合を増やし、いびき頻度を“控えめに”減らしたことが報告されています。

※鼻腔拡張テープ等は個人差が大きく、鼻閉が主因の人には試す価値がありますが、万能ではありません。

 

④ 口腔内装置(マウスピース)

マウスピース(下顎前方移動装置)は、下あごを前に出して舌根沈下を抑え、気道を広げます。

  • ・睡眠時無呼吸のない単純性いびきに対して、マウスピースを無治療より推奨しています。

  • 近年の研究で、マウスピースは体位などの治療より効果が高い可能性が示されました(いずれもいびきを低減)。

注意点(副作用・適合)

  • 顎関節痛、歯の痛み、唾液、噛み合わせ変化などがあり得るため、歯科での調整・フォローが重要です。

⑤ 口腔咽頭の筋トレ

口・舌・軟口蓋の筋機能を上げ、気道の“たわみ”を減らす狙いです。過去の研究でも、3か月の口腔咽頭エクササイズにより、いびきが有意に低下した報告があります。一方で、対象(肥満の程度、睡眠時無呼吸の合併、解剖学的特徴)により効果が揺れやすい報告もあり、「効く人を選ぶ」が重要となってきます。

 

 

<効果が出やすい人・出にくい人>

出やすい傾向

  • ・口呼吸・口が開きやすい(起床時の口の渇き)

  • ・舌が低位(普段、舌先が下の歯の裏に付いている)

  • ・仰向けでいびきが増える

  • ・鼻の通りは比較的保てている(※鼻閉が強いと口呼吸が固定されやすい)

出にくい/先に別対応が要ることが多い

  • ・強い鼻詰まりがある(まず鼻炎治療が優先)

  • ・顎の後退が強い・歯列/咬合問題が大きい

  • ・すでに中等度以上の睡眠時無呼吸疑い(無呼吸や強い眠気がある)→睡眠検査優先

 

⑥ 手術

「ここが強く狭い」という部位が明確で、上述のような治療でも不十分な場合に検討されます。

鼻中隔弯曲など鼻手術は、睡眠時無呼吸では鼻づまりなどの症状改善が中心で、無呼吸の改善は乏しいと報告されています。また単純性いびきでも「鼻づまりが主因」の場合に適応となりやすいです。

重要:手術は不可逆で、効果の個人差も大きいので、原因評価(鼻・咽頭・顎・体位)→適応があれば手術の順が安全です。

 

⑦ レーザー治療

いびきに対する「レーザー治療」は、大きく2つに分かれます。効果やリスクがかなり違うので、ここを分けて理解するのが重要です。

  • A:切る/焼く系(アブレーティブ:焼灼)
    代表:LAUP(laser-assisted uvulopalatoplasty:レーザー口蓋垂軟口蓋形成術)=軟口蓋や口蓋垂をレーザーで切開・蒸散して短縮/瘢痕化させる

  • B:引き締め系(非切開・非アブレーティブ:非焼灼)
    代表:Er:YAG “NightLase” など=粘膜表層を強く傷つけずに熱作用で組織をタイトニング(コラーゲン変性/再構築を狙う)

以下、それぞれの効果(どれくらい効くか)/エビデンスの強さ/限界/安全性を、科学的根拠ベースで整理します。

 

 

A:LAUP(切るレーザー)の特徴と効果

1) いびきへの効果

  • 過去の研究では、「1回で行うLAUP」は期待されたほどの効果が示せなかった、という結論の報告があります。

  • 別の研究では、主観的には改善した人が一定数(約半数)いる一方で、日中の眠気は改善しにくく、副作用は「よく起きた」と報告されています。

つまり、LAUPは「効く人もいる」が、「効果の再現性・大きさが安定しない」、というのが全体像です。

また原則としていびきの症状だけでは、LAUPによる治療は保険適用にはなりません。

 

2) 睡眠時無呼吸への効果・安全性

  • 米国睡眠医学会では、LAUPは睡眠時無呼吸の治療として推奨されないとされています。

  • さらに、LAUPの睡眠時無呼吸に対する研究では、平均的には無呼吸指数が下がる傾向があっても、個人データではAHI悪化が見られるなど、結果が好ましくない点が強調され、「慎重に(あるいは避けるべき)」という論調です。

 

  • 睡眠時無呼吸がある場合は、LAUPが保険適応となる場合があります。

3) まとめ(LAUPの位置づけ)

  • 単純性いびきに限っても、“必ず効く治療”ではない

  • 不可逆(組織を切る/焼く)で、痛み・嚥下違和感・声の変化などのリスクが問題になりやすい

  • 現代では「まずは可逆的な治療(体位、鼻治療、MAD、筋トレなど)」を優先し、手術は適応をかなり厳密にする流れが一般的です。

B:非切開・非アブレーティブの特徴と効果

Er:YAG “NightLase” など

 

1) いびきへの効果(短期〜中期)

  • 過去の研究では、非アブレーティブEr:YAGでいびきの主観評価が改善する一方、無呼吸指数などの指標は変わらないことが多い、とまとめられています。

  • Er:YAG(NightLase)はいびき関連スコアを改善したと報告されています。

要するに、「いびき音や同床者の困り感など“いびきそのもの”の改善」には一定の根拠が出てきていますが、主に軽症〜単純性いびき向けの話です。

2) 持続性(どれくらいもつ?)

  • 追跡研究(例:2年フォロー)もありますが、長期効果の確実性はまだ強いとは言いにくいのが現状です。

臨床的には「効いたとしても、時間とともに戻るので追加照射(メンテナンス)が提案されることがある」領域ですが、メンテ周期の最適解はまだ分かっていないのが現状です。

3) 安全性

  • 非アブレーティブEr:YAGは多くの報告で麻酔不要・痛み軽度・大きな有害事象が少ないとされます。 ただし、研究規模が大きくはないため、稀な合併症まで含めた確実な頻度推定は今後の課題です。

4) まとめ(非アブレーティブEr:YAGの位置づけ)

  • 単純性いびきで、「切る手術は避けたい」「MADが合わない/歯科的に難しい」などの条件なら検討余地

  • ただし、効果評価が主観指標中心になりやすく、長期の確実性はまだ発展途上

  • 中等度以上睡眠時無呼吸が疑われる人の“代替治療”にはしない(まず睡眠検査と標準治療の検討が優先)

  •  

じゃあ、レーザーは「やる価値がある」のはどんな人?

次の条件に比較的フィットすると、レーザーの“期待値”が上がります(特に非アブレーティブ系):

  • ① 睡眠検査で睡眠時無呼吸が否定されている

  • いびきの主因が「軟口蓋の振動」寄り(耳鼻科内視鏡などで評価)

  • ③ BMIが高すぎない(高度な肥満ではない)、鼻閉が重度ではない(口呼吸固定が強いと限界)

  • ④ まずは可逆的治療(禁酒・体位・鼻治療・筋トレ)を試したが、十分でない

逆に、無呼吸の目撃・強い眠気・高血圧/肥満などがある場合は、レーザー検討より先に睡眠時無呼吸評価が優先です。

 

 

4) 受診の目安(単純性いびきでも受診して良い)

  • ・同居者からの苦情が強く、生活に支障

  • ・眠気・頭痛・集中力低下がある

  • ・高血圧・肥満・糖代謝異常がある

  • ・無呼吸が疑われる(最優先で評価)

 

5) 当院からのメッセージ

いびきは「疲れているだけ」と思われがちですが、鼻づまりや体重、寝姿勢などの影響で起こることもあれば、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院)では、まず丁寧な問診と診察で原因を見極め、必要に応じて睡眠の検査を行い、生活改善・鼻の治療・体位の工夫・マウスピース治療など、無理のない方法から段階的にご提案します。必要に応じて、歯科へのマウスピースの作成紹介も行っております。

「家族に指摘されて気になる」「最近いびきが大きくなった」「日中眠い」など、どんな小さなお悩みでもご相談ください。あなたとご家族が、安心して眠れる毎日を一緒につくっていきます。

 

当院の睡眠時無呼吸の検査についてはこちら

当院の睡眠時無呼吸の治療に関してはこちら

いびきに関する別の記事はこちら「いびき=睡眠時無呼吸ではありません。放置で何が起きる?

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表紀仁

 

 

引用文献

  1. ・Ramar K, Dort LC, Katz SG, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015. J Clin Sleep Med. 2015;11(7):773-827. doi:10.5664/jcsm.4858. PMID:26094920.

  2. ・Ioerger P, Afshari A, Hentati F, et al. Mandibular Advancement vs Combined Airway and Positional Therapy for Snoring: A Randomized Clinical Trial. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2024;150(7):572-579. doi:10.1001/jamaoto.2024.1035. PMID:38780959.

  3. ・Ieto V, Kayamori F, Montes MI, et al. Effects of Oropharyngeal Exercises on Snoring: A Randomized Trial. Chest. 2015;148(3):683-691. doi:10.1378/chest.14-2953. PMID:25950418.

  4. ・Koutsourelakis I, Keliris A, Minaritzoglou A, Zakynthinos S. Nasal steroids in snorers can decrease snoring frequency: a randomized placebo-controlled crossover trial. J Sleep Res. 2015. doi:10.1111/jsr.12249. PMID:25306888.

  5. ・Burgos-Sanchez C, Jones NN, Avillion M, et al. Impact of Alcohol Consumption on Snoring and Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-analysis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2020;163(6):1078-1086. doi:10.1177/0194599820931087. PMID:32513091.

  6. ・Stuck BA, Sauter A, Hörmann K, Verse T, Maurer JT. Radiofrequency surgery of the soft palate in the treatment of snoring. A placebo-controlled trial. Sleep. 2005;28(7):847-850. doi:10.1093/sleep/28.7.847. PMID:16124664.

    Sateia MJ. International classification of sleep disorders-third edition: highlights and modifications. Chest. 2014. doi:10.1378/chest.14-0970. PMID:25367475.

  7. Foster GD, Borradaile KE, Sanders MH, et al. A Randomized Study on the Effect of Weight Loss on Obstructive Sleep Apnea Among Obese Patients With Type 2 Diabetes: The Sleep AHEAD Study. Arch Intern Med. 2009. (PMC参照)

 

毎年同じ時期に咳が出る人は「咳喘息」かもしれません

「春になると咳が続く」「秋の花粉の時期だけ夜に咳き込む」――毎年ほぼ同じ季節に咳が出て、しかも長引く場合、原因のひとつとして 咳喘息(せきぜんそく) が疑われます。
咳喘息は、ゼーゼー(喘鳴)や強い息苦しさが目立たなくても、気道(空気の通り道)の炎症や刺激により咳が続く“喘息の一タイプ”です。放置すると、典型的な気管支喘息へ進行することもあるため、早めの評価と治療が大切です。

 

 

 

この記事でわかること

  • ・「毎年同じ時期の咳」が起こる主な理由

  • ・咳喘息の特徴(症状・季節性・悪化因子)

  • ・検査と診断の流れ(他の病気との見分け方)

  • ・治療(吸入治療が中心)と、再発予防のコツ

  • ・受診の目安(危険サイン)

  •  

「毎年同じ時期に咳が出る」—なぜ季節性が出るの?

・季節性の咳の背景には、次のような“引き金”が繰り返し存在します。

  • ・花粉・カビ(真菌)・ダニなどのアレルゲン

  • ・気温差・冷気・乾燥(秋冬や季節の変わり目)

  • ・黄砂・大気汚染・受動喫煙・香料などの刺激

  • ・風邪(ウイルス感染)後に咳だけが残る

  • ・引っ越し・職場環境などで同じ時期に曝露が増える

咳喘息は、こうした刺激に対してアレルギー反応などが起こって気道が過敏になり、咳反射が過剰に起こることで症状が続きます。「毎年同じ時期」というパターンは、アレルゲンや環境要因と結びつくことが多く、咳喘息を疑う重要な手がかりです。

 

咳喘息の典型的な症状

次の項目に当てはまるほど、咳喘息の可能性が上がります。

  • ① 咳が 3週間以上 続く(特に8週間以上なら要注意)

  • ② 痰は少なめ〜ほぼ無し、乾いた咳が多い

  • ③ 夜間〜明け方、または 運動・会話・冷気で悪化

  • ④ 風邪が治ったのに 咳だけ数週間から数か月残ることがある

  • ⑤ 毎年、特定の季節に繰り返す

  • ⑥ 喘鳴(ゼーゼー)や強い息苦しさは 目立たないことも多い

  • ⑦ アレルギー性鼻炎・花粉症がある/家族に喘息体質がいる

※逆に、高熱・膿のような痰・血痰・体重減少などがある場合は、別の病気を優先して確認します。

 

咳喘息と間違えやすい病気(“季節性の咳”の鑑別)

「季節に出る咳=咳喘息」と決めつけないことが重要です。呼吸器内科では、次のような原因も同時に評価します。

  •  
  • 上気道の病気:鼻炎・副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水が喉へ落ちる)

  • ・胃食道逆流症:胸やけがなくても咳だけ出ることがある

  • ・好酸球性気管支炎:喘息に似るが、気道が狭くなりにくいタイプ

  • ・感染後咳嗽:風邪のあとに咳だけ長引く

  • ・慢性閉塞性肺疾患(喫煙歴が長い方)

  • ・薬剤性(ACE阻害薬などの降圧薬など)

  •  
  • まれに:肺結核、間質性肺炎、肺がん など(危険サインがある場合)

  •  

受診したら何をする?(検査と診断の流れ)

呼吸器内科では、「咳の原因を見落とさない」ために段階的に確認します。

 

1)問診:季節性・時間帯・誘因が鍵

  • ・いつから、どの季節に出るか

  • ・夜〜明け方に増えるか

  • ・冷気・運動・会話・香料で誘発されるか

  • ・花粉症やアトピー体質、家族歴

  •  

2)胸部レントゲン

肺炎や結核、肺がんなどの“別の原因”を除外するために実施します。

 

 

3)呼吸機能検査(肺の空気の通り道を評価)

喘息(気管支喘息)では、気道が狭くなったり拡がったりする“変動”がみられることがあり、呼吸機能検査で吐く力(一秒率・ピークフロー)が低下します。咳喘息では、呼吸機能検査ではほぼ正常です。

 

4)気道の炎症評価

呼気中の炎症指標(例:吐く息の検査)などを参考にすることがあります。特に呼気中の一酸化窒素濃度(FeNO)は重要で、気道のアレルギー性炎症(好酸球性炎症)を数値化して見ることができます。咳喘息や気管支喘息の診断の助けになることがあります。

 

5)アレルギー検査

原因となるアレルゲンを特定するために実施することがあります。ダニ・HD、花粉(スギ・ヒノキ、イネ科、ブタクサ・ヨモギなど)、カビ(真菌)、ペット(イヌ・ネコ・ウサギなど)を主に調べます。当院では特異的IgE抗体を血液検査によって調べています。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院)で実施しているアレルギー検査はくわしくはこちら

 

 

6)治療反応(吸入治療で咳が改善するか)

咳喘息は、吸入の抗炎症治療(主に吸入ステロイドや気管支拡張薬)で改善しやすいことが知られています。検査だけで断定できない場合でも、医師の判断で治療反応を見ながら診断に近づけることがあります。

 

咳喘息の治療:中心は「気道の炎症を抑える吸入治療」

咳喘息は、咳止めだけで抑え込もうとしても再発しやすいのが特徴です。基本方針は以下です。

吸入ステロイド(抗炎症薬)が治療の軸

  • 気道の炎症を抑え、咳を減らし、再発を防ぐ目的で使用します

  • 早めに適切な治療を始めることが、長引く咳を断ち切る近道です

  •  

必要に応じて追加する治療

  • ・気道を広げる吸入薬の併用

  • ・アレルギー対策(鼻炎治療、環境整備)

  • ・胃食道逆流症が疑わしい場合はその治療

  • ・咳のトリガー(冷気・香料・喫煙・粉塵)回避

※治療期間は症状の程度や再発のしやすさで変わります。「症状が消えたらすぐ終了」では再燃することもあるため、自己判断で中断せず、医師と相談しながら調整します。

 

再発を減らすコツ(毎年同じ時期に悩む方へ)

  • 花粉の時期は 早めに対策開始(鼻炎治療も重要)

  • 室内は 乾燥対策(加湿、就寝前の水分、喉の保護)

  • 香料・煙・粉塵を避ける(柔軟剤・アロマで悪化する人も)

  • 風邪を引いたら「咳が長引く前」に受診

  • 運動時・冷気で悪化する人は、外出時のマスクなどで防御

  •  

すぐ受診してほしいサイン(危険サイン)

次の場合は、咳喘息以外の病気も含めて早めの受診をおすすめします。

  • ・息苦しさが強い、会話がつらい

  • ・血痰、胸の強い痛み

  • ・高熱が続く、体重が減ってきた

  • ・夜間に呼吸が苦しくて起きる

  • ・喫煙歴が長い/高齢で初めて出てきた長引く咳

  •  

よくある質問(FAQ)

  1. Q. ゼーゼーしないのに喘息ですか?
    A. はい。咳喘息は「咳が主役」の喘息タイプで、ゼーゼーが目立たないことがあります。
  2.  
  3. Q. 毎年同じ季節だけなら放置してもいい?
    A. おすすめしません。毎年繰り返す咳は生活の質を落とすだけでなく、気道の過敏さが固定化して長引きやすくなることがあります。原因を整理し、再発予防まで含めて治療するのが安心です。
  4.  
  5. Q. 市販の咳止めで良くならないのはなぜ?
    A. 咳喘息は「気道の炎症」が土台にあるため、咳止めだけでは根本が改善しにくいことがあります。吸入治療など“炎症に対する治療”が重要です。
  6.  

まとめ

  • ・毎年同じ時期に咳が出るのは、花粉・寒暖差・乾燥などが引き金となる 咳喘息 のサインかもしれません。

  • ・咳喘息は ゼーゼーがなくても 起こります。

  • ・胸部レントゲン等で他の病気を除外しつつ、呼吸機能や炎症評価、治療反応を組み合わせて診断します。

  • ・治療の中心は 吸入ステロイド など、気道の炎症を抑える治療です。

「毎年の咳」を“いつものこと”で終わらせず、一度呼吸器内科で原因を整理しましょう。

 

 

当院の咳喘息の詳しい記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

引用文献

  1. Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2025.

  2. ・Mukae H, et al. The Japanese Respiratory Society guidelines for the management of cough and sputum (digest edition). Respir Investig. 2021. 

  3. ・Morice AH, et al. ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children. Eur Respir J. 2020;55(1):1901136.

  4. ・Côté A, et al. Managing Chronic Cough Due to Asthma and Nonasthmatic Eosinophilic Bronchitis in Adults: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2020.

  5. ・Dicpinigaitis PV, et al. Chronic Cough Due to Asthma: ACCP Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 2006.

  6. ・Niimi A. How long should patients with cough variant asthma or non-asthmatic eosinophilic bronchitis be treated? J Thorac Dis. 2021.

  7. ・Magni C, et al. Cough variant asthma and atopic cough. Multidiscip Respir Med. 2010.

CPAPは一生続ける必要がありますか?呼吸器内科医が回答

睡眠時無呼吸

 

「CPAPは一生続けないといけませんか?」「体重が減ったのでやめられますか?」——睡眠時無呼吸症候群でCPAP治療を続けていると、こうした疑問を持つ方は少なくありません。

結論から言うと、CPAPは原則として治療を継続していかなければいけないですが、原因が改善して睡眠時無呼吸症候群が軽快・消失した場合には、医師の管理下で中止できる可能性もあります。ただし、自己判断での中断は再発や体調悪化につながることがあるため注意が必要です。

この記事では、CPAP中止を検討できるケース、判断基準、再検査の流れまでをわかりやすく解説します。

 

 

1. 結論:CPAPは「原則、長期継続治療」。ただし中止できる人もいます。

 

 

睡眠時無呼吸症候群は、一時的な体調不良ではなく、背景に「上気道(のど)の狭さ」や「顎の形」「舌の大きさ」「筋肉のゆるみ」「加齢」「体重」「鼻づまり」「飲酒」「睡眠姿勢」などが複合して関わる、慢性的に再発しやすい病気です。
そのためCPAPは「一定期間使ったら治って終わり」という治療というより、使っている間に無呼吸を確実に抑え、低酸素や睡眠の分断を防ぎ、合併症リスクを下げる“長期管理の治療”として位置づけられています。

 

一方で、すべての方が“必ず一生”という意味ではありません。
たとえば 減量による体重減少が維持できた場合、扁桃肥大の手術や鼻閉の治療などで気道の通りが改善した場合、口腔内装置(マウスピース)で十分にコントロールできる場合など、原因や悪化因子が大きく改善して、CPAPを外した状態でも検査で安全が確認できれば、医師の管理下で中止を検討できることがあります。

ただし重要なのは、「最近眠くない」「いびきが減った気がする」といった自覚症状だけで“治った”と判断しないことです。睡眠時無呼吸症候群は、本人が気づきにくい形で無呼吸・低酸素が残っていることもあります。だからこそ、CPAP中止の可否は症状だけではなく、CPAPオフでの再検査(簡易検査や終夜睡眠検査)と、合併症リスクを含めた総合判断が必要になります。

 

 

2. なぜ自己判断でCPAPを中断してはいけないのか(短期間でも再発しやすい)

CPAPは「治す薬」というより、使っている間だけ気道を広げて無呼吸を防ぐ治療です。そのため中止すると、比較的短期間で無呼吸が再発しやすいことが研究で示されています。 

自己判断での中断が危険な理由

  • ① いびき・無呼吸・日中の眠気が戻る
  • ② 血圧や心拍、交感神経の亢進などが悪化しうる
  • ③ 運転や仕事の安全性(眠気・集中力低下)に影響
  • ④「症状がない気がする」だけでは、低酸素や無呼吸が残っていることがある

などの理由があります。

 

3. CPAP中止を検討できる代表的なケース

ケースA:体重減少(減量)で重症度が下がった

肥満が主因の方は、減量でAHI(無呼吸低呼吸指数)が大きく改善することがあります。
ただし、減量後も睡眠時無呼吸症候群が残る人が多いことが知られています(「体重が落ちた=治った」とは限りません)。

 

 

 

ケースB:外科治療(扁桃手術・鼻手術・顎顔面手術など)や口腔内装置で改善

手術やマウスピース(口腔内装置)で改善した場合も、治療効果の確認検査が重要です。 

 

ケースC:睡眠姿勢・飲酒・鼻炎治療など、誘因を是正できた

横向き寝で改善する“体位依存”タイプ、鼻閉が主因のタイプなどは、環境・治療で軽快することがあります。ただし、これも検査での確認が必須です。

 

4. CPAP中止の判断基準

中止の可否は、「症状」+「客観検査」+「合併症リスク」で総合判断します。

① 症状の基準

以下が数か月以上しっかり改善しているかを確認します。

  • ・いびき・無呼吸の指摘がない
  • ・起床時の頭痛、熟睡感のなさがない
  • ・日中の眠気(会議中・運転中の眠気)がない
  • ・夜間頻尿や中途覚醒が減った

※「慣れたから眠くない」こともあるため、症状だけで判断しません

 

② 検査の基準:“CPAPオフ”での再評価が必須

CPAPを外した状態で、以下を確認します。

  • ・AHIが十分に低い(目安:AHI<5で“正常域”、少なくとも中等症以上が否定できること)
  • ・酸素飽和度低下(ODI、SpO₂<90%の時間など)が問題ない
  • ・必要に応じてPSG(終夜睡眠ポリグラフ)で睡眠の質も評価

どの検査を選ぶか(PSGか簡易検査/HSATか)は、重症度・合併症・職業(運転業務など)で変わります。診断・フォローの検査適応に関する指針も参考になります。

 

詳しい検査方法についてはこちら

 

4-3. 体重・生活習慣の基準

  • 体重が減った場合、リバウンドがない/維持できている
  • 飲酒・睡眠不足・鎮静薬など、悪化因子がコントロールできている

※臨床ガイドラインでは、体重変化後のフォロー検査の重要性が述べられています(例:大きな体重変化後の再評価)。

 

4-4. 合併症・高リスク職種の基準

以下に当てはまる方は、たとえ症状が軽くても慎重に判断します。

  • ・高血圧・心房細動・心不全・脳卒中既往など循環器リスクが高い
  • ・糖尿病、重い肥満、COPDなど
  • ・職業運転手など、眠気が重大事故につながる

 

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 「体重が10kg減った」のでCPAPはやめられますか?

可能性はありますが、減量後も睡眠時無呼吸症候群が残るケースは多いです。CPAPオフでの再検査で確認しましょう。

ちなみに、体重を10%減らすと、AHIは平均で約26%低下(逆に10%増えると約32%上昇)すると言われています。

 

Q2. いびきが減った気がします。検査なしで中止していい?

おすすめしません。自覚症状が乏しくても、夜間の無呼吸や低酸素が残ることがあります。 

 

Q3. CPAPをやめたらまた再開できますか?

CPAP再開自体はすぐに可能です。状況によっては再評価(検査)が必要になります。症状再燃や体重増加があれば早めに受診しましょう。

 

6. まとめ:CPAP中止の判断は「再検査で安全確認」が基準

  • CPAPは原則、長期的に継続治療が必要です。ただし、減量・手術・口腔内装置・生活改善などで中止できる人もいます。中止の判断は、症状+CPAPオフでの検査(PSG/簡易検査)+合併症リスクで総合的に判断します。自己判断の中断は避け、医師と「やめ時」「再検査のタイミング」を一緒に決めるのが安全です。

 

 

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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

引用論文

  1. ・Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, et al. Treatment of adult obstructive sleep apnea with positive airway pressure: An American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2019;15(2):335-343.
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  3. ・Epstein LJ, Kristo D, Strollo PJ Jr, et al. Clinical guideline for the evaluation, management and long-term care of obstructive sleep apnea in adults. J Clin Sleep Med. 2009;5(3):263-276.
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  5. ・Kapur VK, Auckley DH, Chowdhuri S, et al. Clinical practice guideline for diagnostic testing for adult obstructive sleep apnea: An American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(3):479-504.
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  7. ・Caples SM, Anderson WM, Calero K, Howell M, Hashmi SD. Use of polysomnography and home sleep apnea tests for the longitudinal management of obstructive sleep apnea in adults: An American Academy of Sleep Medicine clinical guidance statement. J Clin Sleep Med. 2021;17(6):1287-1293.
  8.  
  9. ・Kohler M, Stradling JR. Effects of continuous positive airway pressure therapy withdrawal in patients with obstructive sleep apnea: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2011;184(10):1192-1199.
  10.  
  11. ・Young LR, Taxin ZH, Norman RG, Walsleben JA, Rapoport DM. Response to CPAP withdrawal in patients with mild versus severe obstructive sleep apnea/hypopnea syndrome. Sleep. 2013;36(3):405-412.
  12.  
  13. ・Lettieri CJ, Eliasson AH, Greenburg DL. Persistence of obstructive sleep apnea after surgical weight loss. J Clin Sleep Med. 2008;4(4):333-338.

CPAPマスクの種類と特徴

睡眠時無呼吸

CPAP治療(睡眠時無呼吸症候群の標準治療)は、「機械」よりも「マスク」が合うかどうかで続けやすさが大きく変わります。実際、研究でも鼻マスク/鼻ピローは、口鼻マスク(フルフェイス)より残存AHI(無呼吸・低呼吸指数)が低く、圧が低く済み、継続率が良い傾向が報告されています。


この記事では、患者さんが選びやすいように CPAPマスクの種類・向き不向き・トラブル対策をまとめます。あなたに合う“付け心地”で治療効果と継続率を上げるコツを解説します。

 

 

 

 

CPAPマスクは大きく3タイプ

1) 鼻マスク(Nasal mask)

鼻だけを覆う、最も標準的なタイプ。

メリット

  • ・治療成績と快適性のバランスが良い(第一選択になりやすい)

  • ・漏れ(リーク)や違和感が比較的少ない設計が多い

デメリット

  • ・口が開くと口漏れ(マウスリーク)で乾燥・効果低下につながることがある

向いている人

  • ・鼻呼吸が基本の人

  • ・初めてCPAPを始める人(まずはここからが多い)

画像:https://cpap-lab.com/products/philips-nuancepro-nasal-pillowgel.html

 

  •  

2) 鼻ピロー(Nasal pillows)

鼻孔に“枕(ピロー)”のように当てて送気する、最小接触タイプ。

メリット

  • ・顔を覆う面積が小さく、圧迫感が少ない

  • ・鼻症状がある人でも、口鼻マスクより継続率が良い

デメリット

  • ・鼻の入口が痛い/乾燥する、サイズが合わないと漏れやすい

  • ・標準鼻マスクと比べて「必ずしも使用時間が伸びるとは限らない」という報告もあります

向いている人

  • ・顔に物が当たるのが苦手、閉塞感が強い

  • ・寝返りが多い(合う製品だとズレにくい)

画像:https://cpap-lab.com/products/philips-nuancepro-nasal-pillowgel.html

 

  •  

3) 口鼻マスク(Full face:フルフェイス)

口と鼻の両方を覆うタイプ(“口呼吸だから必須”と思われがち)。

メリット

  • ・鼻づまりが強い時期でも治療を続けやすい

  • ・強い口漏れがどうしても止まらない人の受け皿になる

デメリット

  • ・研究では、鼻系(鼻マスク/鼻ピロー)に比べて必要圧が上がりやすく、残存AHIが増えやすく、継続率が不利になりうると報告されています

  • ・マスク面積が広い分、フィット調整が難しいことがある

向いている人

  • ・強い鼻閉があり、鼻呼吸が難しい日が多い

  • ・口漏れ対策(後述)をしても改善しない

  •  

画像:https://cpap-lab.com/products/philips-dreamwear-fullface.html

 

  •  

「口呼吸=フルフェイス」が正解とは限らない

「鼻が悪いから」「口呼吸だから」口鼻マスクを選びがちですが、鼻症状があっても鼻系マスクの方が継続が高いという報告もあります。 また、鼻症状の治療(加温加湿、点鼻ステロイド、必要に応じて治療介入)を行い、鼻マスク継続を助けた方がよいとされています

 

 

マスク選びで失敗しやすいポイントと対策

1) 空気漏れ(リーク)

  • ① 原因:サイズ不一致、締めすぎ/緩すぎ、寝返りでズレ、皮脂・汗、ヒゲ

  • ② 対策

    • まずサイズ見直し(同じMでも製品で形が違う)

    • “締めすぎ”は逆に漏れやすい

    • マスククッションの交換時期を守る(劣化で漏れ増)

    •  

2) 口漏れ(マウスリーク)・口の乾燥

  • ① 原因:睡眠中の開口、圧が高い、鼻閉

  • ② 対策

    • 加温加湿の調整(乾燥対策の第一歩)

    • 鼻閉があるなら治療(点鼻、アレルギー対策など)

    • 必要に応じてチンストラップやマスク変更(鼻マスク+チンストラップが有利なケースも)

    •  

3) 鼻の痛み・赤み(鼻ピローで多い)

4) 圧迫感・閉塞感(フルフェイスで多い)

  • 対策:鼻系への変更を検討(治療成績・圧・残存AHIの面でも利点が出やすい)

  •  

マスク選びの“最短ルート”:当院おすすめの考え方

  1. まずは鼻マスク(または鼻ピロー)でフィッティング

  2. 鼻症状(鼻づまり・鼻炎)があれば並行して治療

  3. 口漏れが強ければ、加湿調整→チンストラップ等→それでも難しければ口鼻マスクへ

  4. 変更後は、データ(使用時間・リーク・残存AHI)で客観的に再評価

  5.  

よくある質問(FAQ)

  1. Q. 鼻づまりがあるので最初からフルフェイスが良い?
    A. 一概には言えません。鼻症状があっても、鼻系マスクの方がアドヒアランスが良い可能性が示されており、鼻症状の治療を併用しながら鼻系で継続できることも多いです。

花粉症やアレルギー性鼻炎などの鼻炎対策についてはこちらの記事を参考にしてください。

  1.  
  2. Q. 鼻ピローは“最強”ですか?
    A. 合う人にはとても快適ですが、研究では鼻マスクと同等で「必ずしも使用時間が増えるとは限らない」報告もあります。大事なのは“あなたに合う形とサイズ”です。
  3.  
  4. Q. マスクを変えたら圧の再調整が必要?
    A. とくに鼻系→口鼻マスクへ変更すると、必要圧が上がることがあり、再評価が推奨されます。
  5.  
  6.  

当院からのメッセージ

CPAPは「慣れれば楽」になる治療ですが、最初につまずく原因の多くはマスクの不快感・漏れ・乾燥です。マスクは“我慢して慣れる”より、合うものに調整・変更する方が近道です。装着の癖、鼻炎の有無、寝返り、圧設定などを一緒に見直し、データと体感の両方から最適解を探します。

 

 

当院のCPAP治療に関する記事はこちら

引っ越しや転勤で当院への転院・通院を希望される方はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器専門医・医学博士  表紀仁

 

 

参考文献

  1. ① Rowland S, Aiyappan V, Hennessy C, et al. Comparing the Efficacy, Mask Leak, Patient Adherence, and Patient Preference of Three Different CPAP Interfaces to Treat Moderate-Severe Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2018;14(1):101-108. doi:10.5664/jcsm.6892.

  2. ② Genta PR, Kaminska M, Edwards BA, et al. The Importance of Mask Selection on Continuous Positive Airway Pressure Outcomes for Obstructive Sleep Apnea. An Official American Thoracic Society Workshop Report. Ann Am Thorac Soc. 2020;17(10):1177-1185. doi:10.1513/AnnalsATS.202007-864ST.

  3. ③ Chen LY, Chen YH, Hu SW, et al. In search of a better CPAP interface: A network meta-analysis comparing nasal masks, nasal pillows and oronasal masks. J Sleep Res. 2022;31(6):e13686. doi:10.1111/jsr.13686.

  4. ④ Ryan S, Garvey JF, Swan V, Behan R, McNicholas WT. Nasal pillows as an alternative interface in patients with obstructive sleep apnoea syndrome initiating continuous positive airway pressure therapy. J Sleep Res. 2011;20(2):367-373. doi:10.1111/j.1365-2869.2010.00873.x.

  5. ⑤ Schell AE, Soose RJ. Positive airway pressure adherence and mask interface in the setting of sinonasal symptoms. Laryngoscope. 2017;127(10):2418-2422. doi:10.1002/lary.26486.

睡眠時無呼吸症候群と咳の関係

睡眠時無呼吸

 

「咳だけが何週間も続く」「夜〜明け方に咳が増える」「朝起きた直後に咳が出る」――このような咳の背景に、睡眠時無呼吸症候群が関与していることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、“いびき・無呼吸”の病気として知られますが、近年は長引く咳(8週以上続く咳)との関連も複数報告されています。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群が咳を引き起こす仕組み、見分け方、検査・治療(CPAP含む)を、呼吸器内科医の視点で解説します。

 

SASが咳に関係する“根拠(データ)”

1)咳が長引く患者さんに睡眠時無呼吸症候群が多い

日本の報告では、慢性的に咳が続く患者さんを調べてみると…

  • ・75人のうち44%に睡眠時無呼吸症候群

  • ・そのうちCPAP治療で93%が咳の改善
     

といったデータがあります。

また、ほかの研究でも、睡眠時無呼吸症候群の患者さんで慢性咳が多く、CPAPで改善することが報告されています。これらのデータからも睡眠時無呼吸と咳は関連があることがわかります。

 

2)CPAPで咳症状が改善

慢性の原因不明咳嗽(>2か月)かつ睡眠時無呼吸症候群の患者さんを、CPAPとシャムCPAP(偽物のCPAP)に無作為化した試験で、6週間後に咳のQOL指標がCPAP群で有意に改善していました。シャムCPAPとは偽物のCPAPで、気道に十分な圧がかからないような仕組みになっています。

CPAP治療が咳を改善させるって、意外ですよね。

 

なぜ睡眠時無呼吸症候群で咳が出るの?(主なメカニズム3つ)

睡眠時無呼吸症候群と咳との関連性は、単に「太っているから」だけでは説明できず、複数の要因が重なって咳が長引きます。以下がその代表的な要因になります。

 

① 胃食道逆流が増え、喉が刺激される

無呼吸・低呼吸時には胸腔内陰圧が強くなり、胃酸が上がりやすい条件が揃います。また睡眠時無呼吸症候群の患者さんにCPAP治療を行うと胃酸の逆流が大きく減少しました。

→ 逆流が咳に関わっている方では、睡眠時無呼吸症候群の治療が“咳の引き金”を下げる可能性があります。

 

② 鼻づまり・口呼吸・乾燥(後鼻漏も)で咳が出やすくなる

睡眠時無呼吸症候群では鼻閉(鼻づまり)を合併しやすく、口呼吸が増えると咽頭が乾燥し、夜間〜起床時の咳が出やすくなります。また、鼻炎/副鼻腔炎に伴う後鼻漏(のどに鼻水が落ちる)は慢性的な咳が続く代表原因で、睡眠時無呼吸症候群と併存すると“治りにくい咳”になりがちです。

 

③ 喘息・咳喘息のコントロールを悪化させる

睡眠時無呼吸症候群は睡眠分断や炎症、自律神経の変化などを介して、喘息症状の悪化因子になり得ます。実際、睡眠時無呼吸症候群を合併した喘息患者さんで、CPAP導入後に喘息コントロールやQOL、肺機能が改善した報告があります。喘息の患者さんでは、「吸入はしているのに夜間症状が残る」「早朝の咳が強い」場合、睡眠時無呼吸症候群の関与を疑う価値があります。

 

気管支喘息や咳喘息に関する詳しい記事はこちら 「気管支喘息」・「咳喘息」 

 

睡眠時無呼吸症候群が関係していそうな咳の特徴

次に当てはまるほど、咳の背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性が上がります。

  • ① 夜〜明け方に咳が増える/寝ると咳が出る

  • ② 朝起きた直後に咳が出る、喉がイガイガする・声枯れ

  • ③ いびきが大きい/家族に無呼吸を指摘された

  • ④ 日中の眠気、集中力低下、起床時頭痛

  • ⑤ 夜間頻尿(夜中にトイレ)

  • ⑥ 胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる)、喉の違和感

  • ⑦ 鼻づまり、後鼻漏がある

  • ⑧ 喘息/咳喘息の治療中なのに夜間症状が残る



検査:何をすればわかる?

自宅でできる簡易検査(まずはここから)

ご自宅で1~2晩計測し、無呼吸低呼吸指数(AHI相当)や酸素低下を評価します。装着方法も簡単で、忙しい方でも検査しやすいのが利点です。当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック)でも簡易検査であるアプノモニターを行っております。

 

 

精密検査(PSG:ポリソムノグラフィ)

必要に応じて、脳波・呼吸・心拍などを同時測定し、重症度やタイプを詳しく判定します。当院は在宅PSGを行っており、自宅で検査が可能です。

 

睡眠時無呼吸症候群の検査方法については詳細はこちら

 

治療:睡眠時無呼吸症候群を治すと咳は良くなる?

1)CPAP療法(中等症〜重症の標準治療)

CPAPは気道の閉塞を防ぎ、睡眠の質を改善することができ、睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療方法です。

咳に関しては、慢性咳嗽×睡眠時無呼吸症候群でCPAPにより咳QOLが改善した研究結果があります。また、CPAPが胃酸の逆流を減らすことは多くの研究で示されています。。

※注意:CPAP開始直後は、乾燥・鼻炎で咳が一時的に増えることがあります。加湿設定やマスク調整、鼻治療で改善することが多いです。

 

2)生活指導(“咳”にも“無呼吸”にも効く)

  • 就寝前の飲酒を控える(無呼吸悪化)

  • 就寝2〜3時間前までに夕食(逆流・咳対策)

  • 体重管理(特に内臓脂肪)

  • 横向き寝(仰向けで悪化しやすい)

  • 枕を少し高く(逆流・咽頭刺激対策)

3)咳の“合併原因”を同時に治療する

睡眠時無呼吸症候群だけでなく、胃酸逆流・後鼻漏・喘息/咳喘息が絡むことが多いため、咳が長引く場合は同時評価が重要です。

 

よくある質問(FAQ)

  1. Q. 咳が主症状でも睡眠時無呼吸症候群の検査をしていい?

  2. A. はい。慢性咳嗽と睡眠時無呼吸症候群の関連や、CPAPでの改善を示す報告があります。咳の原因精査の一環として検討する価値があります。
  3.  
  4.  
  5. Q. 逆流があると咳が出るのはなぜ?
    A. 胃酸や胃内容物が食道〜喉を刺激し、咳反射が起きます。OSAでは陰圧などにより夜間逆流が増えやすく、CPAPで逆流が減った研究があります。
  6.  
  7.  
  8. Q. CPAPで咳が増えた…やめた方がいい?
    A. 乾燥や鼻症状が原因のことが多く、加湿・マスク調整・鼻治療で改善しやすいです。自己中断せずご相談ください。

 

当院からのメッセージ

咳が長引くと「風邪が治らないのでは」と不安になりますが、実は睡眠時無呼吸症候群が関係していることがあります。夜〜朝に咳が強い、いびきや日中の眠気がある、胸やけや鼻づまりも気になる…そんなときは一度ご相談ください。当院では、咳の原因(喘息・後鼻漏・逆流など)を丁寧に整理しながら、自宅でできる睡眠時無呼吸症候群検査やCPAP治療まで一貫して対応しています。

 

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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器専門医・医学博士  表紀仁

 

 

参考文献

  1. Sundar KM, Willis AM, Smith S, et al. A randomized, controlled, pilot study of CPAP for patients with chronic cough and obstructive sleep apnea. Lung. 2020;198:449-457. PMID: 32356074.

  2. Yokohori N, et al. Utility of continuous positive airway pressure therapy for treating chronic coughs in patients with obstructive sleep apnea. Intern Med. 2014;53(10):1079-1082. doi:10.2169/internalmedicine.53.1855. PMID: 24827489.

  3. Kim TH, et al. Impact of high-risk of obstructive sleep apnea on chronic cough: data from the Korea National Health and Nutrition Examination Survey. BMC Pulm Med. 2022. PMID: 36384528.

  4. Wang TY, et al. Chronic cough and obstructive sleep apnoea in a sleep laboratory-based pulmonary practice. Sleep Breath. 2013. PMID: 24188336.

  5. Kerr P, Shoenut JP, Millar T, Buckle P, Kryger MH. Nasal CPAP reduces gastroesophageal reflux in obstructive sleep apnea syndrome. Chest. 1992;101(6):1539-1544. doi:10.1378/chest.101.6.1539. PMID: 1600771.

  6. Li C, et al. Effect of continuous positive airway pressure on gastroesophageal reflux in patients with obstructive sleep apnea: a meta-analysis. Sleep Breath. 2021. PMID: 33118054.

  7. Serrano-Pariente J, et al. Asthma outcomes improve with continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnea. Allergy. 2017. PMID: 27732758

 

名古屋市熱田区・中区で睡眠時無呼吸の治療(CPAP)を継続できるクリニックをお探しの方へ

睡眠時無呼吸

「CPAPを始めたけど、仕事が忙しくて通院が続かない…」

「引っ越し・転勤で、熱田区・中区あたりでCPAPを継続できるところを探している」

当院では、多くのCPAP管理会社と提携しており、スムーズに安心してCPAP治療を引きつぎ継続できます。通院の間隔もCPAP治療を問題なく使用でき落ち着いている方では、2~3ヶ月毎の通院としています。金山駅近くで通いやすい当院で無理なくCPAP治療を継続していきましょう。

 

 

<CPAPは「始める」より「続ける」ことが大事です>

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、治療を継続することで

 

・日中の眠気・集中力低下

・いびき・睡眠の質

・血圧や生活習慣病リスク(合併しやすい)

などの改善が期待できます。

 

一方で、CPAPは継続できない理由がはっきりしています。よくあるのは次の4つです。

 

・マスクが合わない(痛い・漏れる・跡がつく)

・鼻づまり・乾燥・喉の違和感

・途中で外してしまう/違和感で眠れない

・通院が負担(場所・時間・予約の取りづらさ)

 

だからこそ、通いやすさと細かい調整を相談できる環境が、CPAP継続の鍵になります。

 

<当院は通いやすいクリニックがモットーです>

 

当院の特徴は、

 

・24時間Web予約可能、いつでも簡単予約!

・時間帯予約制で待ち時間少ない!

・アクセス:金山駅から徒歩1分!

・データ確認と説明が手厚い!(使用時間、AHI、漏れ、圧設定などを見て改善策を提示)

 

金山駅前院では、「装置を貸して終わり」ではなく、続けやすさを上げる支援を重視します。(※対応内容は機種・状態により異なります)

 

 

<金山駅前院でのCPAPフォロー>

 

1)CPAPデータを確認し、“原因”から対策

 

同じ「眠い」「外れる」でも原因は色々です。

・漏れが多い → マスクフィットやサイズ、装着方法の見直し

・圧が合わない → 設定の再評価(必要に応じて)

・使用時間が伸びない → 乾燥・鼻症状・寝具環境などを一緒に調整

 

2)鼻づまり・乾燥の対策も一緒に

 

CPAPが続かない最大要因の一つが鼻症状です。アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・口呼吸などがあると、CPAPは一気に難しくなります。呼吸器・アレルギーの視点で、鼻の状態も含めて整えていくと継続しやすくなります。

 

3)「忙しくても続けられる」導線づくり

 

CPAPは“毎月の定期的な見直し”が重要になりやすい治療です。通院負担が大きいと、良い治療でも続きません。金山駅前院は、熱田区・中区からも通いやすいエリアとして、継続しやすい受診導線を意識しています。

 

<こんな方はご相談ください>

 

・いびき・無呼吸を指摘された、または検査を迷っている

・CPAP中だが、マスクが合わない/鼻がつらい/途中で外れる

・引っ越し・転勤で、熱田区・中区近くでCPAP継続先を探している

・日中の眠気が残る(データ上の問題が隠れていることがあります)

 

<よくある質問(FAQ)>

 

  1. Q1. 他院で導入したCPAPでも継続できますか?
  2. 多くのケースで継続可能です。現在の状況(機種、設定、困りごと)を確認し、必要な手続きを案内します。

 

  1. Q2. CPAPが合っているか分からないです。
  2. AHI、漏れ、使用時間、症状をセットで評価するのが大切です。数字だけでなく「眠気」「途中覚醒」「鼻症状」も含めて見直します。

 

  1. Q3. 鼻炎があるとCPAPは無理ですか?
  2. いいえ。鼻の治療や加湿、マスクの工夫で続けられる方も多いです。まずは原因を整理しましょう。

 

<まとめ>

CPAPは、続けるほどメリットが出やすい治療です。だからこそ、熱田区・中区で継続先を探すときは、アクセスとフォローの質に注目してください。

 

金山駅前院では、CPAPのデータ確認とトラブル対策を通じて、“続けられる治療”を一緒に作っていきます。気になる症状やお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。

 

当院のCPAP治療の詳しい説明はこちら

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係

睡眠時無呼吸

< なぜ“寝ている間の無呼吸”が血圧を上げるのか>

 

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧のリスクとなります。睡眠時無呼吸症候群の方では夜間高血圧・早朝高血圧・治療抵抗性高血圧が多く、心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞)のリスクを高めます。CPAP治療により血圧が改善することも、科学的に示されています。

 

 

 

<なぜ睡眠時無呼吸症候群で高血圧になるのか>

  1.  
  2. 夜間の低酸素
    無呼吸・低呼吸により血液中の酸素飽和度が反復して低下します。これが血管内皮障害と動脈硬化を促進し、血圧を高めます。

  3.  
  4. 交感神経の過剰亢進
    低酸素と覚醒反応により交感神経が持続的に活性化し、夜間も血圧が下がらない(non-dipper)状態になります。交感神経は、体を活動モードにする神経です。緊張やストレス時に働き、心拍数や血圧を上げます。

  5.  
  6. レニン・アンジオテンシン系の活性化
    血圧を上昇させるホルモンであるレニンやアンギオテンシンの活性化が起こります。体液貯留や血管収縮が進み、血圧が上昇します。

  7.  
  8. 胸腔内圧の大きな陰圧
    無呼吸中の強い吸気努力が心負荷を増やし、血圧を上昇させます。

 

<睡眠時無呼吸症候群に特徴的な高血圧のタイプ>

 

① 夜間高血圧/non-dipper型:睡眠中に血圧が下がらない

② 早朝高血圧:起床時に血圧が高い

③ 治療抵抗性高血圧:降圧薬3剤以上でも目標未達

これらは家庭血圧を測ることで知ることができます。

 

  • <CPAP治療は血圧を下げる?>
  •  
  • ・CPAPは無呼吸を抑え、低酸素・交感神経亢進を改善させます。

  • ・過去の研究ではCPAP治療によって、平均2–5 mmHg程度の血圧低下が報告されています(効果は使用時間が長いほど大きくなります)。

  • ・とくに夜間高血圧・治療抵抗性高血圧では改善が期待できます。

 

  • ・マウスピース治療でも血圧を下げる効果があります。軽症〜中等症の睡眠時無呼吸患者において、マウスピース使用により血圧が数mmHg低下することが報告されています。CPAPほどの効果はないものの、装着しやすく継続率が高い点が利点で、特に軽症例やCPAPが合わない方では高血圧管理の補助治療として有用です。

 

  •  
  • <こんな方は睡眠時無呼吸症候群の検査を>
  •  
  • ① 高血圧が若年発症、または薬が効きにくい

  • ② いびき・日中の眠気・起床時頭痛がある

  • ③ 肥満、首回りが太い、男性、更年期以降
     

簡易検査(アプノモニター)やポリソムノグラフィー検査(PSG)を行いましょう。

 

アプノモニター検査の解説YOUTUBEはこちら(ドクターおもての呼吸器専門チャンネル【名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック公式】)

 

 

 

  • <生活習慣でできる対策(治療と併用)>
  •  
  • 減量(体重5–10%減でもAHI・血圧改善)

  • 飲酒制限・就寝前飲酒を避ける

  • 横向き寝(体位療法)

  • 鼻づまりの治療(アレルギー性鼻炎など)

  •  
  •  
  • <まとめ>
  •  
  • ・睡眠時無呼吸症候群は高血圧の重要な原因で、夜間・早朝高血圧や治療抵抗性高血圧と密接に関連しています。

  • ・CPAP治療+生活改善で血圧と心血管リスクを下げられます。
  •  
  • ・高血圧が“なかなか下がらない”方は、睡眠の質を疑うことが大切です。

当院では睡眠時無呼吸の検査を行い、必要に応じてCPAP治療やマウスピース治療を行っています。お悩みの方は、当院へご相談ください。

 

CPAP治療の詳しい記事はこちら

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

参考文献

  1. Peppard PE, Young T, Palta M, Skatrud J. Prospective study of the association between sleep-disordered breathing and hypertension. N Engl J Med. 2000;342(19):1378–1384.

  2. Marin JM, Agusti A, Villar I, et al. Association between treated and untreated obstructive sleep apnea and risk of hypertension. JAMA. 2012;307(20):2169–2176.

  3. Logan AG, Perlikowski SM, Mente A, et al. High prevalence of unrecognized sleep apnoea in drug-resistant hypertension. J Hypertens. 2001;19(12):2271–2277.

  4. Fava C, Montagnana M, Favaloro EJ, et al. Obstructive sleep apnea syndrome and cardiovascular diseases. Semin Thromb Hemost. 2011;37(3):280–297.

  5. Bratton DJ, Gaisl T, Wons AM, Kohler M. CPAP vs mandibular advancement devices and blood pressure in patients with OSA. JAMA. 2015;314(21):2280–2293.

  6. Martínez-García MÁ, Capote F, Campos-Rodríguez F, et al. Effect of CPAP on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea and resistant hypertension. JAMA. 2013;310(22):2407–2415.

 

CPAPはレンタルと購入どっちがいい?

睡眠時無呼吸

コスト・サポート・アップデートの違いをわかりやすく解説

 

CPAP(シーパップ)療法を始める際、患者さんからよく聞かれるのが

「レンタルと購入、どちらが得なんですか?」

という疑問です。
結論から言うと、日本では原則「レンタル」が標準で、理由があります。

この記事では

・ コストの違い

・サポート体制

・機器のアップデート


という3つの視点から、分かりやすく解説します。

 

 

CPAPレンタルとは?

日本の保険診療では「レンタル」が基本

日本では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)でCPAP適応と診断された場合、
CPAP装置は保険適用でレンタルします。

  • ・機器は医療機関やCPAP業者から貸与
  • ・毎月定額(保険適用)
  • ・診察・データ管理とセットで運用

自己判断での購入では保険が使えません

 

CPAP購入とは?

 

CPAP購入は、主に

  • ・海外
  • ・自由診療
  • ・保険適用外ケース

で選ばれる方法です。

  • ・初期費用が高額
  • ・サポートは自己管理
  • ・故障時も自己責任

日本の保険診療ではあまり一般的ではありません

 

 

レンタルと購入の違い【一覧表】


 

 

コスト面の違いをもう少し詳しく

レンタルのコスト感

  • 月額:約4,000~5,000円(3割負担)
  • 年間:約5~6万円

初期費用ゼロ
✔ 故障・交換込み
✔ 継続しやすい

購入のコスト感

  • 本体:10~20万円以上
  • マスク・チューブ:消耗品は別途

⚠ 長期間使わないと割高
⚠ 故障時は追加出費

 

サポート体制の違いはとても重要

レンタルの場合

  • ・使用データを医師が確認
  • ・効果が弱ければ圧設定を調整
  • ・マスク不具合・空気漏れも相談可能
  • ・マスクや附属備品の定期交換も実施

👉 「続けられる仕組み」がある

 

購入の場合

  • ・データ確認は自己管理
  • ・トラブル時は自分で対応
  • ・医師が効果を把握しづらい

👉 途中でやめてしまう人が多い

 

アップデート・機器進化の違い

レンタルの強み

  • 新型CPAPが出れば切り替え可能
  • 静音性・快適性が向上
  • 自動圧調整機能なども進化

📌 常に“今の標準治療”を受けられる

購入の注意点

  • 機器は購入時点で固定
  • 新機能を使うには再購入が必要
  •  

結論:日本ではレンタルがおすすめ

こんな方は「レンタル」

  • 初めてCPAPを使う
  • 保険診療で治療したい
  • サポートを重視したい
  • 機器トラブルが不安

👉 ほとんどの患者さんはこちら

購入が向くケース

  • 海外在住
  • 保険が使えない
  • 医師管理なしで使用する場合
  •  

当院からのメッセージ

CPAP治療で最も大切なのは、「続けられる環境」です。

当院では

  • ・データを見ながらの調整
  • ・マスクトラブルへの対応
  • ・不安や違和感の相談

まで含めて、CPAP治療をサポートしています。当院では設定の落ち着いた方や問題なくCPAPを装着できるようになれば2-3か月毎の通院としています。またCPAP療法士の資格を持った看護師・臨床検査技師も勤務しており、CPAP治療を相談しやすい環境です。

CPAPを始めるか迷っている方も、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

当院のCPAP治療の記事はこちら

 

 

記事作成:

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器専門医・医学博士 表紀仁

 

 

参考文献:

Weaver TE, Grunstein RR.

Adherence to continuous positive airway pressure therapy: the challenge to effective treatment.

Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):173–178. doi:10.1513/pats.200708-119MG 

PMID: 18250209

 

Rotenberg BW, Murariu D, Pang KP.

Trends in CPAP adherence over twenty years of data collection: a flattened curve.

J Otolaryngol Head Neck Surg. 2016;45(1):43. doi:10.1186/s40463-016-0156-0

PMID: 27526079

 

Bakker JP, Weaver TE, Parthasarathy S, Aloia MS.

Adherence to CPAP: What Should We Be Aiming For, and How Can We Get There?

Chest. 2019;155(6):1272–1287. doi:10.1016/j.chest.2019.01.012

PMID: 30817841

 

Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, et al.

Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea with Positive Airway Pressure: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline.

J Clin Sleep Med. 2019;15(2):335–343. doi:10.5664/jcsm.7640

PMID: 30736887

 

日本呼吸器学会HP 「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

吸入ステロイドが不安な方へ:本当に安全なの?

呼吸器・咳

 

 

吸入ステロイドは「怖い薬」ではなく、気道の炎症を抑えて発作や悪化を防ぐ“土台”の薬です。とはいえ、ステロイドと聞くと「長い間使っていて大丈夫なの?」「副作用が多くないの?」など不安になる方も多いと思います。ここでは、吸入ステロイドにはどんな副作用があるのか、副作用を減らす使い方、いつ減らせるのか、自己判断でやめるリスクをやさしく解説します。

 

 

吸入ステロイドって、そもそも何をする薬?

吸入ステロイドは、喘息などで起きている気道の炎症(腫れ・むくみ)を鎮める薬です。ぜんそく発作が起きたときに一時的に楽にする薬(発作止め)というより、発作を起こしにくくする“予防の柱”として使われます。

「ステロイド」と聞くと、飲み薬(内服)や点滴の強い副作用を想像しがちですが、吸入は気道に直接届けるため、一般に全身への影響はずっと小さく設計されています。

 

 

みなさんが不安に感じやすいポイント

吸入ステロイドの不安は、だいたい次の3つに集約されます。

  1. ① 副作用が怖い(太る?骨が弱くなる?)

  2. ② ずっと続けないといけないの?(“やめ時”はある?)

  3. ③ 症状がないから、やめてもいいのでは?

結論から言うと、吸入ステロイドは多くの方にとって 「必要な期間、最少量で続ける」のが基本です。 そして、状態が安定すれば減量(ステップダウン)を検討できます。

 

吸入ステロイドの副作用:多いもの/注意が必要なもの

よくある(けれど予防しやすい)副作用

① 声がかすれる(嗄声)

② 口の中にカビ(口腔カンジダ)

③ 喉の違和感(ヒリヒリなど)


これは“薬が口の中に残る”ことが原因で起きやすいです。

 

予防のコツ(ここが重要)

・吸入前後にうがい(できれば「うがい→吐き出す」)

吸入手技を見直す(吸うタイミング・息止め)

・器具によってはスペーサーの使用で口腔内への付着を減らせます

・吸入をパウダータイプからガスタイプ(pMDI)に変更する

これだけで、トラブルが大きく減る方が多いです。吸入ステロイドの中では、オルベスコ(シクレソニド)が最も口の中の副作用が少ないと言われています。オルベスコは肺でエステラーゼにより活性化される吸入薬になります。そのため口腔・咽頭ではほぼ不活性のままなのでカンジダや嗄声が起こりにくいと言われています。さらに微粒子で肺到達性が高く、嚥下分も初回通過代謝で分解され全身移行が少ないと考えられています。

 

「全身への副作用」は、主に“高用量・長期”で注意

吸入ステロイドは基本的に安全性が高い一方、高用量を長く使う場合や、体質・併用薬によっては注意点があります。

  • 小児の身長(成長速度):1年目に成長速度がわずかに低下するという研究結果があります(平均で約0.5cm/年の差)。ただし、小児の喘息治療において吸入ステロイドは非常に重要で、適切に使用すれば喘息症状から解放されるお子さんがたくさんいます。喘息コントロールの利益が大きく、最終身長への影響は小さい、ないし限定的と考えてよいと思います。

  • 骨(骨粗しょう症・骨折):喘息では、特に経口ステロイド(飲み薬)の反復高用量吸入ステロイドでリスクが上がり得ます。必要最少量にする意味がここにあります。また他の骨粗しょう症リスク因子(高齢、閉経後、低BMI、喫煙、ビタミンD不足、長期の経口(飲み薬)ステロイド使用など)が重なると、骨への悪影響が出やすくなる可能性があります。

  • 目(眼圧・緑内障、白内障):関連を検討した研究があり、心配が強い方やリスクがある方は定期チェックが安心です。

  • 肺炎リスク:過去90日以内に吸入ステロイドを使用している患者さんでは、使用していない人に比べて肺炎のリスクが増えたという報告があります。ただし、肺炎のリスクは上昇するものの、死亡するリスクまでは上昇させてないと考えられています。吸入ステロイドの中では、ブデゾニドが肺炎のリスクを最も上昇させないのではないか、という意見もあります。

大事なのは、「副作用が怖いからゼロにする」ではなく、悪化(発作)を防ぎながら、必要最少量へ近づけることです。発作で救急受診や入院になり、結果的に“飲み薬のステロイド”が必要になる方が、体への負担は大きくなりやすいからです。

 

 

*高用量の吸入ステロイドは、以下の吸入薬が該当になります。

・レルベア200、テリルジー200

・シムビコート 6吸入/日以上(>800μg/日)

・アドエア500(1日2吸入)

・フルティフォーム125(1日2回 1回3~4吸入)

 

 

“やめ時”の考え方:基本は「ステップダウン(減らす)」

いつ減らせる?目安は「良い状態が2〜3か月続いたら」

国際ガイドラインでは、良好なコントロールが2〜3か月維持できたら、治療を段階的に減らす(ステップダウン)ことを検討するとしています。

ステップダウンを考える条件は、

・日中の症状がほぼない/あっても軽い

・夜間症状がない

・発作止めの使用が増えていない

・直近で増悪(救急・点滴・内服ステロイド)がない

・吸入手技・継続が安定している

減らし方のイメージ

・体調が落ち着いているタイミング(風邪中・旅行前・妊娠中などは避ける)を選ぶ

・25〜50%ずつ段階的に減量して様子を見る(数か月単位で評価することが多い)

※具体的な減らし方は、使っている吸入薬の種類やこれまでの重症度で変わります。

 

「完全にやめる」はアリ?ナシ?

結論は少し丁寧に言う必要があります。

  • “自己判断で急にやめる”のは基本NG
    炎症がぶり返し、発作や咳が再燃することがあります。

  • 一方で、長く安定していて、リスクが低い方は、医師と相談しながらごく少量まで減らす/吸入回数を調整するなど、“実質的に負担を最小化”できるケースもあります。

目標は「ゼロ」よりも、まず*最少量で安定”です。そこまで来ると、多くの方が不安が大きく減ります。

 

「喘息は治るのか?」に対する疑問に対しては、こちらのYOUTUBEで解説しています。「喘息って治せる?吸入薬は一生?呼吸器内科医が解説」

 

 

不安が強い方へ:今日からできる「副作用を減らす3つ」

  1. 吸入後はうがい(吐き出す)

  2. ・吸入手技チェック(2〜3分で効果が変わる)

  3. ・可能ならスペーサー等の活用(適応は薬剤・デバイスによります)
  4.  


  5.  

よくある質問(FAQ)

Q1. 吸入ステロイドで太りますか?

吸入は局所投与で、一般に内服ステロイドのような体重増加は起こりにくいです。

 

Q2. 症状がないのに続ける意味は?

喘息の炎症は、症状がない時期も“くすぶっている”ことがあります。症状がない=治った、とは限らないため、安定してから段階的に減らすのが安全です。

 

Q3. 口の中が荒れます…

うがい・吸入方法の調整で改善することが多いです。改善しなければ吸入薬の種類やデバイス変更も選択肢になります。医師と一度相談してみましょう。

 

まとめ:吸入ステロイドは「怖い薬」より「守る薬」

  • 吸入ステロイドは、喘息の炎症を抑えて悪化を防ぐ土台の薬

  • 副作用はゼロではないが、多くは予防・調整が可能、メリットがデメリットを上回る

  • “やめ時”は、安定してからのステップダウンで考える(自己判断で中止しない) 
  •  

 

 

気管支喘息の記事はこちら

咳喘息に関する記事はこちら

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

参考文献

GINA guideline 2025

 

CPAP開始1か月の「つまずき」大全

睡眠時無呼吸

乾燥・口開き・鼻詰まり・うるさい…よくある悩みと対処法を専門医が解説

CPAP(シーパップ)療法を始めて 最初の1か月
実はこの時期が、継続できるかどうかの最大の分かれ道です。

  • 「喉や鼻が乾燥してつらい」

  • 「寝ている間に口が開いてしまう」

  • 「鼻が詰まってCPAPが苦しい」

  • 「音が気になって眠れない」

これらは失敗ではなく“よくある通過点”です。
本記事では、呼吸器内科・睡眠医療の立場から、CPAP開始1か月で多い“つまずき”と具体的な解決策をわかりやすく解説します。

 

なぜCPAPは「最初の1か月」がつらいのか?

CPAPは、これまで経験したことのない

  • ・空気が常に流れる

  • ・マスクを装着する

  • ・機械と一緒に寝る

という新しい睡眠環境に体を慣らす治療です。

▶ 多くの方が
1~2週間:違和感が強い → 3~4週間:徐々に慣れる
という経過をたどります。

つまり、
👉 最初の不調=治療が合っていない、ではありません

 

 

つまずき① 乾燥する(喉・鼻がカラカラ)

 

よくある症状

  • ・朝、喉が痛い・イガイガする

  • ・鼻の中が乾いてヒリヒリする

  • ・鼻血が出やすい
  •  

原因

  • ・CPAPの空気は乾燥した圧縮空気

  • ・加湿が不足していることが多い

対処法

① 加湿器(加温加湿)の設定を上げる
→ 冬場・エアコン使用時は特に重要

② 部屋の湿度を40~60%に保つ

③ 鼻・喉の乾燥が強い場合は鼻スプレーや軟膏を併用

👉 乾燥は「設定調整」で改善することがほとんどです

 

つまずき② 口が開いてしまう(口漏れ)

 

よくある症状

  • ・朝、口の中がカラカラ

  • ・風が口から漏れる感じ

  • ・CPAPを使っているのに眠気が取れない

原因

  • ・鼻マスク使用中に口が自然に開く

  • ・鼻づまりが背景にあることも

対処法

① チンストラップ(顎バンド)の使用

② フルフェイスマスクへの変更

  • 鼻+口を覆うため口漏れしにくい

③ 鼻の通りを改善する(後述)

👉 「口が開く=失敗」ではなく、マスク選びの問題なことが多い

 

つまずき③ 鼻が詰まる・息がしにくい

よくある症状

  • ・CPAPをつけると鼻が詰まる

  • ・空気が苦しく感じる

  • ・花粉症・アレルギー性鼻炎がある

原因

  • ・アレルギー性鼻炎・慢性鼻炎

  • ・CPAPの風による粘膜刺激

対処法

① 点鼻薬(ステロイド点鼻など)を併用
→ CPAP継続率が大きく改善します

② 加湿設定を上げる

③ 鼻マスクが合っていない可能性も

👉 鼻炎治療+CPAP調整はセットで考えるのが重要

 

つまずき④ うるさい・音が気になる

よくある訴え

  • ・機械音が気になって眠れない

  • ・空気漏れの「シュー」という音

  • ・家族から音を指摘される

原因

  • ・マスクのフィット不良

  • ・チューブの接触音

  • ・本体の設置場所

対処法

① マスクサイズ・装着位置を再調整

② チューブがベッドや壁に当たらないよう配置

③ 本体を床や少し離れた場所に置く

👉 多くは「音そのもの」ではなく「空気漏れ」が原因

 

CPAPは「合わない」ではなく「調整不足」がほとんど

CPAPが続かない理由の多くは、

❌ 意志が弱い
❌ 我慢が足りない

ではありません。

設定・マスク・鼻の状態の調整不足
これが原因です。

 

CPAPを成功させる3つのコツ

1️⃣ 困ったら我慢せず相談する
2️⃣ 1か月以内に一度は調整を受ける
3️⃣ 「慣れるまでが治療」と理解する

 

よくある質問(FAQ)

  1. Q1. CPAPはどのくらいで慣れますか?
    A. 多くの方が2~4週間で違和感が軽減します。
  2.  
  3. Q2. 乾燥や鼻づまりがあると使い続けられません
    A. 加湿調整や鼻炎治療で改善するケースが大半です。
  4.  
  5. Q3. 音が気になって眠れません
    A. マスク調整で解決することが多く、本体音自体は非常に静かです。
  6.  

当院からのメッセージ

CPAPは、正しく使えれば睡眠の質・日中の眠気・心血管リスクを大きく改善できる治療です。
しかし、そのためには「最初の1か月」を一人で悩まないことが何より重要です。

・当院では

  • ・CPAP導入後のきめ細かなフォロー

  • ・鼻炎・アレルギーを含めた総合的な調整

  • ・マスク・設定の最適化

を行い、「続けられるCPAP」をサポートしています。

CPAPがつらい・合わないと感じたら、ぜひ一度ご相談ください。

 

 

CPAP治療の詳しい記事はこちら

睡眠時無呼吸症候群の検査についてはこちら

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

参考文献

いびき=睡眠時無呼吸ではありません。放置で何が起きる?

睡眠時無呼吸

「いびきがある=睡眠時無呼吸症候群」とは限りません。いびきは“空気の通り道(上気道)が狭くなって振動している音”で、疲労・飲酒・鼻づまり・体重増加・仰向け寝などでも起こります。一方で、いびきの裏に「無呼吸(呼吸が止まる/浅くなる)」が隠れていることもあり、ここを見分けるのがとても大切です。

この記事では、「いびき=無呼吸ではない」を前提にしつつ、もし無呼吸(閉塞性睡眠時無呼吸)があった場合に、放置すると何が起きうるかを、科学的なデータをもとに分かりやすく解説します。

 

まず結論:いびき単独は“良性”のこともある。でも「無呼吸を伴ういびき」は放置が危険

 

  • 単なるいびき(いわゆる単純性いびき)

  • 生活習慣や鼻の状態で起きることも多く、必ずしも重い病気ではありません。
  •  
  • 無呼吸を伴ういびき
  •  
  • 睡眠中に何度も気道が塞がり、窒息状態による低酸素と覚醒(睡眠の分断)を繰り返します。これが長期間続くと、健康リスク(高血圧や心筋梗塞・狭心症)が積み上がります。
    →CPAPやマウスピースでの治療が必要です。

 

 

 

“無呼吸が疑わしい” いびきのサイン

次のうち複数が当てはまる場合、いびきの背後に睡眠時無呼吸がある可能性が上がります。

  • ・家族に「呼吸が止まっていた」「むせる・あえぐように息をしていた」と言われる

  • ・起床時に頭痛、口の渇き

  • ・日中の強い眠気、集中力低下、居眠り運転が心配

  • ・高血圧と言われた/血圧が薬でも下がりにくい

  • ・体重増加、首回りが太くなった

  • ・寝ても疲れが取れない、夜間頻尿

※問診票やアプリだけで確定診断はできず、検査(簡易検査 or PSG:終夜睡眠ポリソムノグラフィー)で確認するのが基本です。

 

放置で何が起きる?(睡眠時無呼吸だった場合の“積み上がるリスク”)

1) 心筋梗塞・脳卒中などの心血管リスクが上がる可能性

睡眠時無呼吸の重症度が高いほど、将来の心血管病(狭心症や心筋梗塞)や死亡リスクが上がることが、様々な研究で示されています。たとえば重症の無呼吸症候群では、心血管疾患・脳卒中・全死亡のリスク上昇が報告されています。

また、未治療の重症の睡眠時無呼吸症候群で心血管病が多く、CPAP治療を行っている方ではリスクが低いことが示されています。

重要ポイント:
「治療で心血管イベントが必ず減る」と言い切れるかは研究デザインで結論が分かれます。たとえば心血管疾患をすでに持つ患者を対象にした大規模研究(SAVE試験)では、平均使用時間が短かった背景もあり、CPAP追加による心血管病の抑制は明確ではありませんでした。一方で、いびき・眠気・QOLは改善しています。

 

2) 高血圧が悪化・コントロール不良になりうる

睡眠時無呼吸症候群は高血圧と関連し、夜間の低酸素や交感神経亢進が血圧に影響すると考えられています。さらに近年、「睡眠時無呼吸がない人でも、客観的に測定した“頻回のいびき”が高血圧(コントロール不良)と関連」した報告もあります。

 

3) 眠気による事故リスク(仕事のミス・運転事故)

OSAは睡眠が分断されるため、日中の眠気や注意力低下が起きやすくなります。過去の研究では、睡眠時無呼吸と交通事故リスク上昇が示されています。 「自分は大丈夫」と思っていても、単調な運転・午後の会議などで出やすいのが特徴です。

 

4) 代謝への影響(インスリン抵抗性など)

睡眠時無呼吸症候群は代謝異常と関連する可能性があり、糖尿病がない睡眠時無呼吸症候群でCPAP治療によりインスリン抵抗性が改善した報告があります(インスリン抵抗性とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなっている状態のことです)。

 

5) 生活の質が落ちる(疲労、気分、家庭内の問題)

いびき・無呼吸は本人だけでなく、家族の睡眠も妨げます。CPAP治療によっていびき・眠気・QOL・気分の改善することがわかっています。

 

「検査しないと分からない」理由:音(いびき)の大きさだけでは判断できない

いびきが大きくても無呼吸が軽い人もいれば、いびきが目立たなくても無呼吸がある人もいます。したがって、疑わしい場合は 検査で“呼吸の状態(AHIなど)”を数値で確認するのが確実です。

当院での受診の流れ

  1. 当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック)での検査・治療の流れは以下のようになっています。
  2.  
  3. 問診:症状(眠気・起床時頭痛・夜間頻尿など)と背景(飲酒、体重変化、高血圧など)を確認

  4. 検査

    • まずは 自宅での簡易検査(アプノモニター検査) を検討します。

    • 結果が陰性でも疑いが強い/合併症がある場合は 精密検査であるPSG(終夜睡眠ポリソムノグラフィー) を検討します。

  5. 治療(重症度や原因に応じて):生活習慣(減量、飲酒、睡眠姿勢)、鼻治療の検討、CPAP療法などを検討します。

 

詳しい検査方法はこちら:睡眠時無呼吸症候群(検査・治療)

 

 

 

よくある質問(FAQ)

Q1. いびきだけでも受診した方がいい?
A. 「家族に無呼吸を指摘された」「日中眠い」「血圧が高い/下がりにくい」などがあれば、睡眠時無呼吸の検査を強くおすすめします。

Q2. 痩せていても無呼吸はありますか?
A. あります。顎や気道の形、扁桃・鼻づまりなどでも起きます(体型だけで否定できません)。

Q3. CPAPは一生必要?
A. 原因(体重、鼻、顎、飲酒、睡眠姿勢など)が改善すれば見直しできる場合もあります。まずは検査で重症度を把握し、現実的な治療目標を一緒に設定します。

 

まとめ:いびきを“放置していいか”は、無呼吸の有無で変わる

  • いびき=無呼吸ではない

  • でも、無呼吸を伴ういびき(OSA)なら放置でリスクが積み上がる(心血管、血圧、事故、代謝、QOL)

  • 判断は「音」ではなく、検査で呼吸状態を見える化するのが近道です。

 

当院からのメッセージ


いびきは「よくある症状」ですが、いびき=睡眠時無呼吸とは限らない一方で、無呼吸が隠れている場合は放置しないことが大切です。

「家族に呼吸が止まっていると言われた」「日中の眠気が強い」「血圧が高い/下がりにくい」「朝の頭痛やだるさがある」など、少しでも思い当たることがあれば、早めに一度ご相談ください

当院では、まず問診で状況を整理し、必要に応じてご自宅で行える簡易検査(睡眠時無呼吸の検査)をご案内します。結果に基づき、生活習慣の改善(体重・飲酒・睡眠姿勢・鼻症状のケア)から、必要な場合はCPAP治療まで、患者さんの生活背景に合わせて無理のない治療方針を一緒に考えます。「いびきは体質だから仕方ない」と諦める前に、まずは“無呼吸があるかどうか”を確認することが、将来の健康を守る近道です。

金山駅前院は、お仕事帰りや忙しい方でも通いやすい体制を整え、安心して相談できるクリニックを目指しています。気になる症状があれば、お気軽にご受診ください。

 

CPAP治療に関する詳しい記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

参考文献

・Kapur VK, Auckley DH, Chowdhuri S, Kuhlmann DC, Mehra R, Ramar K, Harrod CG. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(3):479-504. doi:10.5664/jcsm.6506. PMID:28162150.

・Wang X, Ouyang Y, Wang Z, Zhao G, Liu L, Bi Y. Obstructive sleep apnea and risk of cardiovascular disease and all-cause mortality: a meta-analysis of prospective cohort studies. Int J Cardiol. 2013;169(3):207-214. doi:10.1016/j.ijcard.2013.08.088. PMID:24161531.

・McEvoy RD, Antic NA, Heeley E, et al; SAVE Investigators and Coordinators. CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med. 2016;375(10):919-931. doi:10.1056/NEJMoa1606599. PMID:27571048.

・Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AGN. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005;365(9464):1046-1053. PMID:15781100.

・Tregear S, Reston J, Schoelles K, Phillips B. Obstructive sleep apnea and risk of motor vehicle crash: systematic review and meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2009;5(6):573-581. PMID:20465027.

・Iftikhar IH, Khan MF, Das A, Magalang UJ. Meta-analysis: Continuous positive airway pressure improves insulin resistance in patients with sleep apnea without diabetes. Ann Am Thorac Soc. 2013;10(2):115-120. doi:10.1513/AnnalsATS.201209-081OC. PMID:23607839.

・Lechat B, Naik G, Appleton S, et al. Regular snoring is associated with uncontrolled hypertension. NPJ Digit Med. 2024;7(1):38. doi:10.1038/s41746-024-01026-7. PMID:38368445.

横になると咳が出る原因とは?(呼吸器内科医が解説)

呼吸器・咳

 

「日中はそこまででもないのに、横になると咳が出る」「寝ようとすると咳き込んで眠れない」――このタイプの咳は、原因がある程度しぼられます。代表は 胃食道逆流症(逆流性食道炎)後鼻漏(鼻水がのどに落ちる)喘息(咳喘息を含む)ですが、まれに心不全など緊急性の高い病気が隠れていることもあります。

 

この記事では、呼吸器内科医の立場から、素人の方にもわかりやすく、「横になると咳が出る」の代表的原因・セルフチェック・家庭でできる対策・受診の目安・医療機関での検査と治療を、最新のデータを踏まえて解説します。

 

 

まず結論:横になると咳が出る“よくある3大原因”

  1. ① 胃食道逆流症
    寝ると胃酸や胃内容物が上がりやすく、胃酸の刺激によって咳反射が出ます。

  2. ② 後鼻漏(鼻炎・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など)=上気道咳嗽症候群
    横になると鼻水がのどへ流れ込み、咳が誘発されます。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻水が増えると起こりやすくなります。

  3. ③ 気管支喘息/咳喘息
    夜間の気道過敏や炎症で、寝入りばなに咳が出やすくなります。夜中や朝方の咳は喘息の重要なサインです。

この3つで多くを占めますが、心不全や感染後咳嗽(がいそう)などでも見られることがあります。

 

 

 

 

なぜ「横になる」と咳が出やすいのか(メカニズム)

横になることで、体の条件がいくつか変わります。

  • ● 逆流が起こりやすくなる:重力が弱まり、胃内容が食道・のどへ上がりやすい

  • ● 鼻水がのどへ落ちやすくなる:後鼻漏が増え、のどが刺激される

  • ● 夜間は気道が狭くなりやすい:自律神経や気道炎症の影響で気管支がせまくなりやすく、喘息が悪化しやすい

  • ● 体液が胸へ戻りやすい:心不全では肺うっ血が進み、咳・息切れ(起座呼吸:苦しくて座る)につながる

このような条件が組み合わさり、横になると咳が出やすくなります。

 

原因別:症状の特徴とセルフチェック

1) 胃食道逆流症:寝ると咳、のどの違和感

特徴

  • ・横になる/前かがみ/食後に咳が増える

  • ・胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる)、げっぷがあることも(ない人もいます)

  • ・のどのイガイガ、嗄声(声がれ)、咽頭の違和感

ポイント

  • ・上記のような胃酸の逆流症状がない方もいます。

家庭でできる対策

  • ・就寝4時間前から食べない(特に脂っこい食事・夜食)

  • ・枕を高くする(上半身ごと10〜20cm程度の挙上)

  • ・左向きで寝る:左側臥位は夜間逆流を減らす可能性が示されています。

  • ・体重管理、アルコール・チョコ・ミント・カフェイン・辛いものの調整(個人差あり)

2) 後鼻漏:寝ると“のどに落ちる感じ”+咳

特徴

  • ・のどの奥に痰が貼りつく/鼻水が落ちる感じ

  • ・鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ(アレルギー性鼻炎)

  • ・顔面痛や濃い鼻汁(副鼻腔炎)

  • ・横になると咳が増える、起床時に痰がからむ

エビデンス

  • ・日本ではこの後鼻漏による咳が多く、点鼻薬(ステロイド点鼻薬)の治療で症状の改善が期待できることが報告されています。

家庭でできる対策

  • ・就寝前の鼻洗浄(生理食塩水)

  • ・寝室のホコリ・ダニ対策(寝具カバー、掃除、加湿しすぎ注意)

  • ・花粉/ハウスダストが疑わしければ、日中の曝露を減らす(換気や掃除)

治療の基本(医療機関)

  • ・鼻噴霧ステロイド、抗ヒスタミン薬を主に使用します。必要により副鼻腔炎治療(抗菌薬など)を行います。

 

3) 喘息/咳喘息:夜間~早朝に悪化、ゼーゼーがなくても要注意

特徴

  • ・夜〜明け方に咳が出る、運動・冷気・会話・香水で誘発

  • ・風邪の後に長引く

  • ・ゼーゼーがなくても「咳だけ喘息(咳喘息)」があり得る

  • ・胸の締め付け感、息苦しさを伴うことも

エビデンス

  • ・夜間咳は喘息関連症状として臨床的に重要で、特に夜中の3時に咳が一番増加すると言われています。

家庭でできる対策

  • ・喫煙(受動喫煙含む)回避、寝室のハウスダスト対策

  • ・…風邪後に悪化しやすい人は、自己判断で咳止めだけに頼らず受診を

治療の基本(医療機関)

  • ・吸入ステロイドなどの吸入薬が中心になります。症状が強い場合は、ステロイドの内服薬を追加することもあります。

気管支喘息の詳しい記事はこちら、咳喘息の詳しい記事はこちら

 

 

4) 心不全:横になると息苦しい・咳、起きると楽(起座呼吸)

特徴

  • ・横になると咳+息苦しさ、座ると楽

  • ・夜間に息苦しくて目が覚める(発作性夜間呼吸困難)

  • ・足のむくみ、体重増加、動くと息切れ

メカニズム

  • なぜ心不全で「横になると咳」が出るのか?以下のような理由があります。

  •  
  • 1) 横になると血液が胸に戻りやすくなる立っている時は血液の一部が下半身に貯留しますが、仰向けになると下半身から心臓へ血液が戻りやすくなり(静脈還流↑)、心臓にかかる負荷が増えます。

    2) 心臓がさばけないと肺の血管が“渋滞”する

  • 左心不全(左心機能低下)などで心臓のポンプが弱いと、戻ってきた血液を十分に送り出せず、肺静脈圧が上がって肺の毛細血管から水分がにじみ出る。

    3) 肺うっ血・軽い肺水腫で咳反射が刺激される

  • 肺の間質に水分がたまると、気道周囲がむくみ、気道が狭く感じる・息苦しい・咳が出るといった症状が出ます。夜間はこの変化が強まりやすく、横になると咳・息苦しさ→起き上がると楽という形になります(起座呼吸)。

このパターンは早めに受診(息苦しさが強ければ救急)が必要です

 

5) 感染後咳嗽:風邪のあとに咳が長引く

特徴

  • ・風邪(感冒)のあとに咳だけが残る(発熱など他の症状は改善しているのに咳が続く)

  • ・咳の期間は3〜8週間が典型

  • ・乾いた咳(空咳)が多いが、痰が少し絡むこともある

  • ・自然に改善することが多い一方、咳が8週を超える/息切れ・血痰・発熱が続くなどは詳しい検査が必要

 

6) 睡眠時無呼吸(OSA):いびき+日中眠い+夜間咳

特徴

  • ・大きないびき、無呼吸の指摘、日中の強い眠気などの症状

  • ・逆流や上気道炎症を介して咳が関連する可能性があります

  • ・CPAP治療によって咳が改善したという研究データもあります

睡眠時無呼吸に関する詳しい記事はこちら

  •  

 

まず家でできる「今夜からの対処法」チェックリスト

原因が確定していなくても、比較的安全で効果が期待できる対策があります。

寝る姿勢・寝室環境

  • 上半身を少し起こす(枕を増やすより“上体ごと”が理想)

  • 可能なら左向きで寝る(逆流が疑わしい場合)

  • 寝室の乾燥対策(加湿は40〜60%目安、加湿器は清潔に)

  • 受動喫煙を避ける、香水・芳香剤を減らす

食事・生活

  • 寝る3時間前は食べない(逆流対策)

  • アルコールは控えめ(逆流・鼻炎・喘息いずれにも悪化要因になり得る)

  • 風邪後に咳が長引く体質なら、早めに医療機関へ(咳喘息の可能性あり)

鼻・のどケア(後鼻漏対策)

  • 就寝前の鼻洗浄(生理食塩水)

  • 寝具(枕・布団)のダニ対策

受診の目安:この症状があれば早めに医療機関へ

すぐ受診(または救急も検討)

  • 息苦しさが強い/会話がつらい/横になると息ができない

  • 血痰、胸痛、意識が遠のく

  • 高熱が続く、強い全身状態悪化

  • 足のむくみ・急な体重増加+夜間の咳(心不全の可能性)

数日〜1〜2週間以内に受診

  • 2〜3週間以上続く咳

  • 夜間の咳で睡眠が保てない

  • 市販薬で改善しない

  • 喘息・COPDの既往がある/妊娠中/高齢/心臓の病気がある

 

医療機関では何を調べる?

 

病院では、問診で頻度の高い原因(後鼻漏・喘息関連・逆流など)を意識しつつ、危険な病気を除外しながら検査を進めます。

一般的には:

  1. ① 問診:咳が出るタイミング(横になる・食後・運動・冷気)、胸やけ、鼻症状、息切れ、薬剤

  2. ② 聴診・SpO₂(酸素飽和度)

  3. ③ 胸部X線(必要あれば胸部CTを実施)

  4. ④ 呼吸機能検査(スパイロ)/気道炎症(FeNO):喘息・咳喘息の検査

  5. ⑤ 鼻・副鼻腔評価(必要なら耳鼻科連携)

  6. ⑥ 逆流評価:症状や治療反応で判断、必要なら専門的検査

  7. ⑦ 心不全が疑わしければ BNP(血液検査)、心電図、心エコー など

 

まとめ(この記事の要点)

  • 「横になると咳」は 胃食道逆流症/後鼻漏/喘息(咳喘息) が三大原因

  • 今夜からできる対策は「就寝前の食事回避」「上半身挙上」「(逆流疑いなら)左向き」「鼻ケア」「寝室環境」

  • 息苦しさやむくみを伴う夜間咳は心不全もあり得るため早めの受診

当院では、症状の出方(横になると悪化するタイミング、食後・早朝の咳、鼻症状の有無など)を丁寧に確認したうえで、必要に応じて 胸部レントゲン、呼吸機能検査、気道炎症の評価(FeNO)、アレルギー評価 などを組み合わせ、原因を見極めて適切に治療します。

「咳が続いて眠れない」「市販薬で改善しない」などお困りの方は、我慢せずご相談ください。

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表 紀仁

 

参考文献

  1. Morice AH, Millqvist E, Bieksiene K, et al. ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children. Eur Respir J. 2020 Jan 2;55(1):1901136. doi:10.1183/13993003.01136-2019. PMID: 31515408.

  2. Kahrilas PJ, Altman KW, Chang AB, et al. Chronic Cough Due to Gastroesophageal Reflux in Adults: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2016 Dec;150(6):1341-1360. doi:10.1016/j.chest.2016.08.1458. PMID: 27614002.

  3. Katz PO, Dunbar KB, Schnoll-Sussman FH, et al. ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease. Am J Gastroenterol. 2022 Jan 1;117(1):27-56. doi:10.14309/ajg.0000000000001538. PMID: 34807007.

  4. Simadibrata DM, Lesmana E, Amangku BR, et al. Left lateral decubitus sleeping position is associated with improved gastroesophageal reflux disease symptoms: A systematic review and meta-analysis. World J Clin Cases. 2023 Oct 26;11(30):7329-7336. doi:10.12998/wjcc.v11.i30.7329. PMID: 37969463.

  5. Schuitenmaker JM, Kuipers T, Oude Nijhuis RAB, et al. Sleep Positional Therapy for Nocturnal Gastroesophageal Reflux: A Double-Blind, Randomized, Sham-Controlled Trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2022 Dec;20(12):2753-2762.e2. doi:10.1016/j.cgh.2022.02.058. PMID: 35301135.

  6. Schuitenmaker JM, Kuipers T, Schijven MP, et al. The effect of sleep positional therapy on nocturnal gastroesophageal reflux measured by esophageal pH-impedance monitoring. Neurogastroenterol Motil. 2023 Aug;35(8):e14614. doi:10.1111/nmo.14614. PMID: 37246930.

  7. Yasuda K. Upper airway cough syndrome may be the main cause of chronic cough in Japan: a cohort study. Fam Pract. 2021 Nov 24;38(6):751-757. doi:10.1093/fampra/cmab046. PMID: 34114606.

  8. Sundar KM, Daly SE, Willis AM. A Randomized, Controlled, Pilot Study of CPAP for Patients with Chronic Cough and Obstructive Sleep Apnea. Lung. 2020 Jun;198(3):449-457. doi:10.1007/s00408-020-00354-1. PMID: 32356074.

  9. Wang CS, FitzGerald JM, Schulzer M, Mak E, Ayas NT. Does this dyspneic patient in the emergency department have congestive heart failure? JAMA. 2005 Oct 19;294(15):1944-1956. doi:10.1001/jama.294.15.1944. PMID: 16234501.

  10. Nava S, Larovere MT, Fanfulla F, et al. Orthopnea and inspiratory effort in chronic heart failure patients. Respir Med. 2003 Jun;97(6):647-653. doi:10.1053/rmed.2003.1495. PMID: 12814149.

  11. Ekundayo OJ, Howard VJ, Safford MM, et al. Value of orthopnea, paroxysmal nocturnal dyspnea, and medications in prospective population studies of incident heart failure. Am J Cardiol. 2009 Jul 15;104(2):259-264. doi:10.1016/j.amjcard.2009.03.025. PMID: 19576357.

Ishiura Y, et al. Prevalence and causes of chronic cough in Japan. Respir Investig. 2024 May;62(3):442-448. doi:10.1016/j.resinv.2024.02.017. PMID: 38522360. 

 

日本咳嗽学会HP 咳について

妊娠と喘息(ぜんそく)について呼吸器内科医が解説

呼吸器・咳

妊娠中の喘息、薬は続けて大丈夫?安全なの?――結論は「妊娠中も吸入ステロイドを含むぜんそく治療を継続し、発作(増悪)を防ぐことが母体と胎児の両方に最も安全です。」最新の国際ガイドラインでも、妊娠中に吸入薬を減量・中止しないことをはっきりと推奨しています。

 

本記事では、妊娠中の喘息治療の考え方、妊娠期ごとの注意点、使用できる薬の安全性、増悪時の対処、授乳期のポイントまでわかりやすく解説します。

 

 

  1. 1. なぜ「治療継続」が最優先なのか?→「コントロール不良の喘息は、母児ともにの転帰悪化と関連」

 

結論から言うと、妊婦中の喘息は早産・低出生体重などのリスク上昇と関連することが過去の多くの研究で示されています。また妊娠初期に喘息増悪を起こした場合、先天奇形が増加したという報告もあり、特に増悪(発作)を避けることが重要となってきます。

 

またぜんそく治療で最も重要となる吸入ステロイドは妊娠中も安全に使用できます。特にブデソニド(パルミコート)は妊娠中のデータが豊富で先天奇形などの増加報告はありません。他の吸入ステロイドでも主な奇形リスクの上昇は認められていません。

 

以上から妊娠中は吸入ステロイドを使用し、喘息を良好な状態に保ち発作を予防することが重要となってきます。

 

  1. 2. 妊娠が喘息に与える影響

 

妊娠により喘息の経過は悪化・不変・改善がそれぞれ約1/3と古くから言われます。また喘息が悪化しやすい時期は妊娠中期〜後期(17~24週)と言われており、この時期は要注意です。

 

妊娠をきっかけに新しく発症した喘息の場合は、以前より喘息のある方より自発早産リスクが高いとの報告があり、見逃し防止(早期診断)が重要となってきます。

 

  1. 3. 妊娠中に推奨される薬物治療:安全性と使い分け

 

基本的には、「吸入ステロイド」を継続することが重要です。

咳や息苦しさ・喘鳴などの症状がある場合、気管支拡張剤(β2刺激薬や抗コリン薬)・抗ロイコトリエン拮抗薬などを併用します。喘息発作が強い場合はステロイドの内服を行い、重傷喘息では生物学的製剤(注射薬)を併用する、という風に考えていただくとよいと思います。

 

ここでは、喘息の治療で使用される主な薬と、妊娠・授乳中の投与の安全性について説明します。

 

 

 

① 吸入ステロイド

商品名:パルミコート、アニュイティ、オルベスコなど

 

第一選択の薬です。特にパルミコート(ブデソニド)は最も妊娠中の使用データが豊富で、安全性が高く、10,000例超のデータでも先天奇形増加は認められていません。

 

吸入ステロイドの安全性に関する詳しい記事はこちら

 

② 長時間作用性β2刺激薬(LABA):気管支拡張剤

 

商品名:吸入ステロイドとの合剤としては、ブデホル(シムビコート)、レルベア、アドエア、フルティフォーム、アテキュラなどがあります。

 

吸入ステロイドとの併用で使用します。ホルモテロール(ブデホル・シムビコート・フルティフォームに含まれる薬)は妊娠中に使用しても有害事象は明らかには増加しなかったと報告されています。

 

③ ロイコトリエン受容体拮抗薬

 

商品名:シングレア(モンテルカスト)、オノン、キプレスなど

 

妊娠中のデータは吸入ステロイドほど豊富ではありませんが、大きな先天奇形増加のデータは乏しいと考えられています。授乳中も母乳中移行は極めて少量で安全に使用できます。

 

④ 吸入抗コリン薬:気管支拡張薬

 

商品名:吸入ステロイドと長時間作用性β2刺激薬と抗コリン薬の配合剤として、テリルジーやエナジアなどがあります。短期作用型として、アトロベントがあります。

 

SAMA(イプラトロピウム)は増悪時の補助薬として妊娠中も概ね安全に使用できます。一方でLAMA(チオトロピウム)の妊娠期データは少なく、「必要性が明確であれば継続/導入を専門医のもとで慎重に判断」というふうに考えられます。授乳ではいずれも母乳移行が極めて少なく問題になりにくいです。

 

 

⑤ 短期作用型β2刺激薬:気管支拡張薬

 

商品名:メプチン、サルタノール

 

吸入短期作用型β2刺激薬(頓用)は使用可能です。ただし単独使用はあまり推奨できず、吸入ステロイドを併用することが重要です。

 

⑥ ステロイド(内服・注射)

 

商品名:プレドニン、プレドニゾロン、リンデロン

 

ステロイドの内服や点滴は、喘息発作や咳や呼吸困難などの症状が強い場合に使用します。

妊娠初期では口唇裂・口蓋裂リスクの軽度上昇したという報告はありますが、近年の大規模研究データでは明らかなリスク上昇はないと言われています。

そして妊娠中でも、喘息が悪化した場合はステロイドの内服や点滴が必要になることがあります。これは赤ちゃんを守るためでもあり、治療しないことの方がリスクが高いと分かっています。医師の管理下で短期間使う分には、安全性は確立されています。

 

 

⑦ 生物学的製剤(注射薬)

 

商品名:テゼスパイア、ヌーカラ、ファセンラ、ゾレア、デュピクセント

 

オマリズマブ(ゾレア)の過去のデータ(妊娠中の250例)は、主要先天奇形率・生存出生率などはあまり問題なかったとされています。そのため妊娠中にはゾレアが使用されることが多いです。使用妊娠前から使用中の症例では継続の選択肢があります。新規開始は個別判断となります。

 

  1. 4. 妊娠期別の実践:初期・中期・後期・分娩・産褥

 

妊娠初期(〜13週):赤ちゃんの主な臓器・骨格が作られる器官形成期ですが、喘息の治療中断による低酸素リスク>薬剤リスクとなり、通常の治療は継続する必要があります。

 

中期〜後期:横隔膜の上昇・胃食道逆流・睡眠障害で夜間の喘息症状が出やすい時期になります。

 

分娩:通常の吸入治療を継続します。

 

産後・授乳:多くの吸入薬は母乳移行ごく少量のため継続していきます。ステロイドの内服は母乳への移行はわずかなため、比較的安全に投与できます。

 

  1.  
  2. 5. 「治療を続ける」根拠:安全性データの要点

 

吸入ステロイドである、ブデソニドはスウェーデンの出生・健康レジストリを含む1万例超のデータで先天奇形増加なかったと報告されています。そのため妊娠中の第一選択の吸入ステロイドとして長年位置づけられています。また吸入ステロイド全体でも多くの研究で主要奇形・早産・低出生体重の増加ないと報告されています。

 

  1. 6. 授乳と薬:母乳移行のデータ

 

吸入薬は、基本的には授乳中も安全に使用可能です。

 

モンテルカストは母乳移行はごく少量で、通常特別な注意は不要です。

 

授乳中の経口ステロイド(プレドニゾロンなど)は、母乳への移行がわずかなため、短期間・低用量なら授乳可能とされることが多いですが、必ず医師と相談が必要です。

 

テオフィリン徐放製剤に関しては、大量に服用すると新生児・乳児に興奮・不眠などの精神症状が出現することがあるため注意が必要です。

 

国立成育医療センターのホームページ上で、「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」をリスト化しているので、こちらも参考になります。HPへのリンクはこちら

 

  1. 7. よくある誤解と正しい理解(FAQ)

 

Q1. 妊娠がわかったら薬は一旦やめるべき?

  1. いいえ、中断は危険です。吸入ステロイドは継続し、必要に応じ吸入ステロイド+気管支拡張剤で増悪抑制します。メプチンやサルタノールなどの短期作用型β刺激薬の単独使用は避けたほうが望ましいです。

 

Q2.長期作用型β2刺激薬(気管支拡張剤)は妊娠に不向き?

  1. いいえ。吸入ステロイドと併用し、安全性はあまり問題なかったと報告されています。むしろ未治療・不良コントロールの方が危険と考えられます。

 

Q3. 生物学的製剤は全て中止?

  1. 一概に中止ではありません。生物学的製剤の投与により得られるメリット多い例では継続が検討されます(オマリズマブのデータは概ね問題ないデータあり)。主治医と個別判断する必要があります。

 

Q4. 授乳が始まったら吸入薬は控える?

  1. その必要は通常ありません。ブデソニドは母乳中微量、モンテルカストも少量移行で問題になりにくいと考えられています。

 

  1. 8. 当院からのメッセージ

 

妊娠と喘息の両立に、不安を抱えるのは当然です。重要なのは「発作を起こさないために治療を継続することが、母子ともに最も安全」ということ。最新指針でも、吸入ステロイドを含む治療を中断しないことが推奨されています。

 

当院では、女性の呼吸器内科医師・看護師・薬剤師が一つのチームとなり、吸入手技の確認、原因対策、発作時の自宅対応、分娩時の連携、授乳期の薬の安全性まで、根拠に基づいてわかりやすくご説明します。

「安心して吸える、安心して産める」—それが当院の方針です。気になることはご相談ください。

 

 

喘息の詳しい記事はこちら

咳が長引いて困っている方はこちらの記事を参考にしてください

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

 

参考文献:

Namazy JA, Blais L, Andrews EB, Scheuerle AE, Cabana MD, Thorp JM, et al. Pregnancy outcomes in the omalizumab pregnancy registry and a disease-matched comparator cohort. J Allergy Clin Immunol. 2020 Feb;145(2):528-536.e1. doi:10.1016/j.jaci.2019.05.019. PMID:31145939.

 

Källén B, Rydhstroem H, Aberg A. Congenital malformations after the use of inhaled budesonide in early pregnancy. Obstet Gynecol. 1999 Mar;93(3):392-395. PMID:10074986.

 

Norjavaara E, Gerhardsson de Verdier M. Normal pregnancy outcomes in a population-based study including 2,968 pregnant women exposed to budesonide. J Allergy Clin Immunol. 2003 Apr;111(4):736-742. doi:10.1067/mai.2003.1340. PMID:12704351.

 

Silverman M, Sheffer A, Diaz PV, Lindmark B, Radner F, Broddene M, et al.; START Investigators Group. Outcome of pregnancy in a randomized controlled study of patients with asthma exposed to budesonide. Ann Allergy Asthma Immunol. 2005 Dec;95(6):566-570. doi:10.1016/S1081-1206(10)61020-4. PMID:16400897.

 

Cossette B, Beauchesne MF, Forget A, Lemière C, Larivée P, Rey E, et al. Relative perinatal safety of salmeterol vs formoterol and fluticasone vs budesonide use during pregnancy. Ann Allergy Asthma Immunol. 2014 May;112(5):459-464. doi:10.1016/j.anai.2014.02.010. PMID:24656659.

 

Charlton RA, Snowball J, de Vries CS, Knight M, Boyd PA. Safety of fluticasone propionate prescribed for asthma during pregnancy: A UK population-based cohort study. J Allergy Clin Immunol Pract. 2015;3(5):772-779.e3. doi:10.1016/j.jaip.2015.05.009. PMID:26116951.

 

Murphy VE, Namazy JA, Powell H, Schatz M, Chambers C, Attia J, et al. A meta-analysis of adverse perinatal outcomes in women with asthma. BJOG. 2011 Oct;118(11):1314-1323. doi:10.1111/j.1471-0528.2011.03055.x. PMID:21749633.

 

Xu Z, Doust JA, Wilson LF, Dobson AJ, Dharmage SC, Mishra GD. Asthma severity and impact on perinatal outcomes: an updated systematic review and meta-analysis. BJOG. 2022 Feb;129(3):367-377. doi:10.1111/1471-0528.16968. PMID:34651419.

 

Namazy JA, Murphy VE, Powell H, Gibson PG, Chambers C, Schatz M, et al. Effects of asthma severity, exacerbations and oral corticosteroids on perinatal outcomes. Eur Respir J. 2013 May;41(5):1082-1090. doi:10.1183/09031936.00195111. PMID:22903964.


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PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16443708/

 

GINA GUIDELINES & REPORTS 2024

 

 

睡眠中に「心臓がバクバク」——それって睡眠時無呼吸症候群?

睡眠時無呼吸

就寝中に起きると心臓が「ドキドキ」「バクバク」しているといった症状は、睡眠時無呼吸症候群でよくみられる現象です。睡眠時無呼吸症候群は夜間の低酸素・息こらえ・交感神経の緊張を繰り返し、不整脈リスク(心房細動や期外収縮、夜間発作性頻拍など)を高めます。正しい診断と治療(CPAPなど)で動悸の改善や再発予防が期待できます。

 

<目次>

  1. 1. 睡眠中の動悸と睡眠時無呼吸の関係

2. なぜ心臓がバクバクするのか(科学的メカニズム)

3. こんな症状があれば要注意(危険サイン)

4. 自己チェック(ESS質問票)

5. 受けるべき検査(簡易検査とPSG)

6. 治療すると良くなる?(CPAPと心臓)

7. よくある質問(FAQ)

8. 当院からのメッセージ

 

 

  1. 1. 睡眠中の動悸と睡眠時無呼吸の関係

 

睡眠時無呼吸では、上気道が閉塞して呼吸が止まる→血中酸素が下がる→脳が「覚醒反応」を起こして呼吸を再開…という窒息と覚醒のミニイベントが一晩に何十回も起こります。このたび重なる交感神経*の急上昇が、夜間の動悸・頻脈・不整脈を誘発します。過去の研究でも、睡眠時無呼吸患者では心電図異常や不整脈の合併が多いことが示されています。

 

*交感神経は、体を「活動モード」にする神経です。緊張や運動、ストレス時に働き、心拍を速くし血圧を上げ、すぐ動ける状態を作ります。

 

 

  1. 2. なぜ心臓がバクバクするのか

 

低酸素・再酸素化の反復が活性酸素と炎症を惹起します。また陰圧負荷(息を吸おうと胸腔内圧が強く下がる)で心臓の壁応力が増大し、交感神経のサージ(カテコラミン増加)で心拍・血圧が急上昇します。長期的には心房細動や心室性不整脈の土台になります。

 

  1. 3. こんな症状があれば要注意

・家族に大きないびきや無呼吸を指摘される

・夜間の動悸・胸部不快感・息切れで目が覚める

・朝の頭痛・強い日中の眠気・集中力低下

・高血圧(特に治療抵抗性)、肥満、糖尿病、甲状腺機能異常の既往

・既往に心房細動や心不全がある

これらが重なるほど、睡眠時無呼吸と不整脈の合併リスクは高まります。

 

  1.  
  2. 4. 自己チェック

 

下記のESS問診表が参考になります。まずは睡眠時無呼吸のセルフチェックしてみてはいかがでしょうか?

 

合計点が11点以上: 睡眠時無呼吸症候群の疑いが強い

合計点が5~10点:  睡眠時無呼吸症候群の疑いがある

と判断します。

 

 

  1. 5. 受けるべき検査

 

在宅簡易検査(酸素、呼吸、いびき、体位などを測る)をまず行います。自宅で2晩機械を装着して寝ることで、検査します。当院では検査機器の貸し出しを行っております。

場合によっては、さらなる精密検査である終夜睡眠ポリグラフ(PSG)を行います。こちらでは脳波などを含めて睡眠の深さも計測することができます。

 

  1. 6. 治療すると良くなる?

 

睡眠時無呼吸の代表的な治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、上気道の閉塞を押し広げ、無呼吸を改善します。夜間の低酸素と交感神経サージを抑え、動悸・不整脈の誘発因子を低減します。研究では、睡眠時無呼吸症候群の患者さんで心房細動の新規発症や再発が減ることを示されています。

 

  1. 7. よくある質問(FAQ)

 

Q1. いびきがなくても睡眠時無呼吸で動悸は起きますか?

  1. 可能です。いびきは典型ですが、体位や睡眠段階によって目立たないこともあります。動悸・夜間覚醒・日中の眠気があれば検査を。

 

Q2. 簡易検査とPSG、どちらを受けるべき?

  1. スクリーニングとしては在宅簡易検査で十分なことが多く、結果や合併症でPSGを追加します。

 

Q3. CPAPは不整脈の再発も抑えますか?

  1. 研究では心房細動の発症・再発リスクの低下が示されており、特にアブレーション後の再発抑制の報告が増えています。

 

Q4. 自分でできる対策は?

  1. 減量、飲酒制限、仰向け回避、鼻閉治療。これらは無呼吸の改善に寄与し、夜間の動悸リスクを下げます。

 

  1.  
  2. 8. 当院からのメッセージ

 

「いびき」「日中の眠気」だけでなく、夜間の動悸・息苦しさ・不整脈の背景に、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。

 

睡眠中に呼吸が止まると、体は低酸素状態となり、脳が覚醒反応を起こして交感神経が急激に高まります。この負荷が一晩に何十回も繰り返されることで、高血圧・心疾患・不整脈・脳卒中のリスクが高まることが分かっています。

 

睡眠時無呼吸症候群は、正確な検査と適切な治療で改善が期待できる病気です。夜間の動悸が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

睡眠時無呼吸症候群の詳しい検査方法はこちら

CPAP治療に関する詳しい情報はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表紀仁

 

 

参考情報:

日本睡眠学会 睡眠障害を診断するための検査

日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群

 

咳に効く飲み物・食べ物【呼吸器内科医が解説】

呼吸器・咳

咳が止まらなくて眠れない、咳が長引いている、市販の風邪薬が効かない……など咳でお困りの方はいると思います。また、病院に受診したくても仕事や家庭の都合で受診できない方はけっこういらっしゃると思います。このような場合に、薬以外で咳を緩和する方法はないか、咳によい飲み物や食べ物はないか、そんな質問を良く受けます。今回はそんな質問に対して、民間療法ではなく最新の科学データに基づいて、咳の対処法を解説していきたいと思います。

 

下記のYOUTUBEでも解説しています!

 

 

1) はちみつ

 

まず最有力がはちみつです。特に“夜の咳”で困っている時には有効でしょう。過去の研究によると、こどもの咳(風邪に伴う咳)では、はちみつが咳の頻度・重症度や睡眠を改善すると報告されています。

 

なぜ効きやすい?

はちみつは「咳をよくする薬理作用」だけでなく、トロトロとしていることによる喉の保護(demulcent作用)と、甘味で咳反射閾値が上がる作用(=咳が出にくくなる方向)を同時に持ち合わせます。甘味で咳反射が改善したという生理学的研究もあります。

 

注意として1歳未満はNGです。ボツリヌス菌が含まれており、菌により重篤な感染症を起こす可能性があります。アレルギー(蜂製品)にも注意が必要です。

 

実用的な方法として、温かい飲み物に小さじ1程度を溶かして、就寝前に飲むのがよいでしょう。

 

2) 温かい飲み物(ホットドリンク、スープ、温かいお茶など)

 

次にあったかい飲み物も咳によいとされています。

これまでの研究で、温かい飲み物は咳やなどを、室温飲料より改善した報告があります(客観的な鼻腔通気は変わらず=体感の改善が中心)。

 

なぜ効きやすい?

温かさで唾液や気道分泌が増え、喉の乾燥刺激が和らぐ、湯気で上気道が楽になる、心地よさによる中枢性の咳の感じ方の変化、などが重なって咳症状が改善するのではないかと考えられています。ここで重要なのは「成分」より温度・水分です。極端に熱いものは逆に粘膜刺激になるので避けます。

 

実用的な方法としては、暖かいスープやお茶、ハチミツを入れた白湯などがよいでしょう。

 

 

3) メンソール

 

メントールは、咳反射そのものの感受性を下げる(=咳が出にくくなる)可能性があります。

 

健康な大人に、カプサイシン(唐辛子成分)で咳を誘発する試験を使って調べた研究で、メントールの蒸気を吸うと約25%閾値が上がった(咳が出にくくなった)という結果が報告されています。「咳は気道を守る反射で、刺激を感じる神経が「発火」すると出ます。甘味やメントールは、感覚入力や脳の咳の制御に影響して、「咳のスイッチ」が入りにくくなる、というイメージです。

 

実用的な方法として、甘味のあるメンソールの入ったあめ(龍角散、Vicksのどあめなど)がよいでしょう。

 

 

4) コーヒー

 

コーヒーに含まれるカフェイン、気管支喘息の咳に効果がある可能性があります。

 

カフェインはメチルキサンチン系で、喘息で使用される薬であるテオフィリンと親戚関係にあります。カフェインは喘息患者の気道機能を“軽度”改善し、その効果は最大で約4時間続く可能性が示されています。

 

運動誘発性の喘息については、7 mg/kgのカフェインを運動の約2時間前に摂ると、喘息症状を抑えたという研究があります。ただ、7 mg/kgは体重60 kgなら 約420 mg(コーヒー数杯〜エナジードリンク相当になり得る)で、カフェインの副作用(動悸・不眠・手の震え・不安など)のリスクも上がるため、日常で「運動誘発性の喘息対策にカフェインを推奨できない」と考えられます。

 

5) 地中海食

 

野菜・果物・豆・全粒穀物・ナッツ・オリーブ油+魚を中心として食事パターンで、ギリシャなどで主に行われています。

 

成人喘息で、食習慣を地中海食寄りに変える介入により、QOLや肺機能に少し改善が見られたと報告されています。「これを食べれば効く」ではなく、“毎日のベース食”を植物中心に寄せることが、よいのではと考えられています。

 

話はそれますが、ダイエットや体重を減らすことは喘息のコントロール(病状)を良くします。そのため地中海食のような野菜・果物を中心とした食事は、体重が減り、咳などの喘息症状を改善させた可能性があります。

 

6) よくない食事、やってはいけないこと

 

見落とされがちなんですが、咳の原因として多いのが胃食道逆流(GERD)です。胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)がある人は、“足す”より悪化させる飲食を引く方が効くことがあります。

 

そして重要な点として、逆流が疑われても、胸やけや逆流症状がない人に胃薬だけ使っても咳には効きにくい、という推奨があります。なので、

・寝る直前の飲食を避ける

・脂っこい大量摂取を控える

・アルコール、強いカフェイン、酸の強いもの、辛いものは“合わない人は避ける”

このあたりが合理的です。

 

7) まとめ

 

咳に「効く」食べ物・飲み物は、原因そのものを治すというより、喉の刺激を減らし、咳反射を落ち着かせて症状を和らげる目的で役立ちます。

・温かい飲み物(白湯・お茶・スープ)

・はちみつ(1歳以上)

・のど飴(甘味)/メントール系

はよいでしょう。息苦しさ、血痰、高熱が続く、胸痛、3週間以上続く咳は様子を見ずに受診をおすすめします。

 

咳の原因や治療についての詳しい記事はこちら

気管支喘息の詳しい記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

参考文献:

Wise PM, Breslin PAS, Dalton P. Sweet taste and menthol increase cough reflex thresholds. Pulm Pharmacol Ther. 2012 Jun;25(3):236-41. doi: 10.1016/j.pupt.2012.03.005. PMID: 22465565.

Plevkova J, Kollarik M, Poliacek I, Brozmanova M, Surdenikova L, Tatar M, Mori N, Canning BJ. The role of trigeminal nasal TRPM8-expressing afferent neurons in the antitussive effects of menthol. J Appl Physiol (1985). 2013 Jul 15;115(2):268-74. doi: 10.1152/japplphysiol.01144.2012. PMID: 23640596.

Buday T, Brozmanova M, Biringerova Z, Gavliakova S, Poliacek I, Calkovsky V, Shetthalli MV, Plevkova J. Modulation of cough response by sensory inputs from the nose - role of trigeminal TRPA1 versus TRPM8 channels. Cough. 2012 Dec 3;8(1):11. doi: 10.1186/1745-9974-8-11. PMID: 23199233.

Millqvist E. TRPV1 and TRPM8 in Treatment of Chronic Cough. Pharmaceuticals (Basel). 2016 Jul 28;9(3):45. doi: 10.3390/ph9030045. PMID: 27483288.

Stinson RJ, Morice AH, Sadofsky LR. Modulation of transient receptor potential (TRP) channels by plant derived substances used in over-the-counter cough and cold remedies. Respir Res. 2023 Feb 8;24(1):45. doi: 10.1186/s12931-023-02347-z. PMID: 36755306.

Oduwole O, Udoh EE, Oyo-Ita A, Meremikwu MM. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4(4):CD007094. doi: 10.1002/14651858.CD007094.pub5. PMID: 29633783.

Cohen HA, Rozen J, Kristal H, Laks Y, Berkovitch M, Uziel Y, Kozer E, Pomeranz A, Efrat H. Effect of honey on nocturnal cough and sleep quality: a double-blind, randomized, placebo-controlled study. Pediatrics. 2012 Sep;130(3):465-71. doi: 10.1542/peds.2011-3075. PMID: 22869830.

Paul IM, Beiler J, McMonagle A, Shaffer ML, Duda L, Berlin CM Jr. Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Arch Pediatr Adolesc Med. 2007 Dec;161(12):1140-6. doi: 10.1001/archpedi.161.12.1140. PMID: 18056558.

Shadkam MN, Mozaffari-Khosravi H, Mozayan MR. A comparison of the effect of honey, dextromethorphan, and diphenhydramine on nightly cough and sleep quality in children and their parents. J Altern Complement Med. 2010 Jul;16(7):787-93. doi: 10.1089/acm.2009.0311. PMID: 20618098.

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お酒を飲むと苦しくなる?【喘息と飲酒の関係を呼吸器内科医が解説】

呼吸器・咳

喘息の人の3人に1人は「アルコールでぜんそく症状が悪化した経験」があります。お酒の種類としては、とくにワインを飲んで喘息症状が悪化したと多く報告されています。ただし、悪化する原因は1つではありません。原因となるものには、お酒に含まれる酸化防止剤(亜硫酸塩:サルファイト)やアセトアルデヒド、サリチル酸塩などがあります。

 

またALDH2活性(お酒の分解酵素)が低い人は、アセトアルデヒドの上昇を介してアルコール誘発喘息を起こしやすくします。対策は「自分の誘因を知る」「量と種類を調整」「吸入などの喘息治療を最適化する」です。


  1.  
  2.  
  3. 1. なぜアルコールで喘息が悪化するのか?

 

アルコールは単独の「アレルゲン」ではないことが多く、飲料に含まれる添加物・発酵産物・代謝産物などが複合的に関わります。主な候補は以下です。

 

(1) サルファイト(亜硫酸塩)

 

ワインや一部のビール・リキュールに含まれる酸化防止剤です。一部の喘息患者で気管支収縮を誘発することが臨床試験で示されています。ただし反応する人は一部で、濃度が高いと誘発されやすい一方、低濃度では反応しない例もあります。

 

(2) アセトアルデヒド(代謝産物)

 

アセトアルデヒドはアルコールが体内で代謝される際に生じる物質です。ALDH2活性(分解酵素)が低い人(日本人を含む東アジアに多い体質)では血中アセトアルデヒドが上がり、気道過敏性が高い喘息患者で気管支収縮が起こりやすいことが報告されています。

 

(3) サリチル酸塩・フェノール類

 

ワインに含まれるサリチル酸塩(自然由来の微量成分)がアスピリン喘息患者さんの反応に関与する可能性が指摘されています。

 

(4) ヒスタミン・生体アミン

 

赤ワインや熟成酒に多いヒスタミンなどの生体アミンが鼻・気道症状を悪化させることがあります。ただしヒスタミン濃度と不耐の相関がはっきりしない研究もあり、個人差が大きいと考えられています。

 

  1. 2. どのくらいの人が影響を受けるの?

 

喘息患者さんの約33%が「アルコールで喘息が悪化した経験がある」と言われています。誘発されやすい飲料はワインで、症状は1時間以内に出現することが多いと報告されています。

 

またアスピリン喘息では飲酒によって75%が鼻症状、51%が喘鳴・息切れを経験します。少量の摂取(数口)でも起こり、赤ワインが強い誘因になりやすいという傾向があります。特にALDH2 低活性の人(分解酵素が低い人)は、アセトアルデヒドの上昇とともに一秒量の低下(気流制限)を起こしやすいという報告があります。

 

  1. 3. 飲料別の特徴

 

ポイント:「種類」だけでなく「量」と「その人の体質・併存疾患(アスピリン喘息の有無)」の相互作用で決まります。

 

① 赤ワイン

サルファイトや生体アミン(ヒスタミン)含有、ポリフェノール類が豊富です。誘因として最も報告が多いアルコール飲料です。

 

② 白ワイン

赤ワインより生体アミンは少なめでも、酸化防止剤音サルファイト濃度は比較的高いものがあります。

 

③ ビール

発酵由来アミン、亜硫酸塩を含む製品もあります。喘息症状がでるかどうかは個人差が大きい飲み物でもあります。

 

④ 蒸留酒(ウイスキー・焼酎・ウォッカ等)

サルファイト/アミンは比較的少ないが、カラメル色素・フーゼル油などに反応する人もいます。

 

  1. 4. 呼吸器内科の推奨:安全に楽しむための7つの工夫

 

・病状コントロールを最優先:吸入ステロイド(ICS)などの治療を最適化する。

・トリガーの同定と回避:まずは赤ワインなど誘因になりやすい種類を減らす/避ける。

・量をコントロール:最初の数口で症状が出るタイプは少量でも誘発され得ます。無理はしない。

・食事と一緒に:空腹時の一気飲みを避け、ゆっくり飲む。

・反応しやすい人はサルファイト(酸化防止剤)高めのワインを避ける、蒸留酒のソーダ割りなどに切り替えを検討する。

・発作時の備え:メプチンなどの発作時の吸入薬は常に携帯しましょう。

・飲まない選択も:症状が毎回出る人はノンアルコールを上手に活用しましょう。

 

  1. 5. よくある質問(FAQ)

 

Q1. 「赤ワインはダメ、蒸留酒ならOK」って本当?

  1. 多くの研究でワインが誘因として多いのは事実ですが、個人差が大きいです。蒸留酒で症状が出にくい人はいますが、完全に安全とは限りません。

Q2. 低サルファイトのワインなら安心?

  1. 一部の人には有効ですが、全員に効くわけではないことが対照試験で示唆されています。

Q3. 顔がすぐ赤くなる体質(フラッシャー)です。喘息発作も出やすい?

  1. ALDH2 低活性の人では、アセトアルデヒド上昇に伴いFEV₁低下など気道反応が起こりやすいという報告があります。無理な飲酒は避けましょう。

 

  1. 6. まとめ

 

喘息とアルコールの関係は個人差が大きいですが、ワイン(特に赤)が誘因になりやすいと言われています。対応は「誘因の同定」「量と種類の調整」「吸入などの喘息治療の最適化」です。必要に応じて呼吸器内科専門医に相談しましょう。



喘息に関する詳しい記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表紀仁

 

 

 

参考文献

 

Vally H, de Klerk N, Thompson PJ. Alcoholic drinks: important triggers for asthma. J Allergy Clin Immunol. 2000 Mar;105(3):462-467. doi:10.1067/mai.2000.104548. PMID:10719294.

https://www.jacionline.org/article/s0091-6749(00)25009-4/fulltext

 

Vally H, Thompson P. Role of sulfite additives in wine induced asthma: single dose and cumulative dose studies. Thorax. 2001 Oct;56(10):763-769. doi:10.1136/thorax.56.10.763. PMCID:PMC1745927.

https://thorax.bmj.com/content/56/10/763

 

Vally H, Carr A, El-Saleh J, Thompson P. Wine-induced asthma: a placebo-controlled assessment of its pathogenesis. J Allergy Clin Immunol. 1999 Jan;103(1 Pt 1):41-46. doi:10.1016/S0091-6749(99)70523-3.

https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(99)70523-3/fulltext

 

Takao A, Shimoda T, Kohno S, Asai S, Harda S. Correlation between alcohol-induced asthma and acetaldehyde dehydrogenase-2 genotype. J Allergy Clin Immunol. 1998 May;101(5):576-580. doi:10.1016/S0091-6749(98)70162-9.

https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(98)70162-9/fulltext

 

Cardet JC, White AA, Barrett NA, et al. Alcohol-induced respiratory symptoms are common in patients with aspirin-exacerbated respiratory disease. J Allergy Clin Immunol Pract. 2014 Mar-Apr;2(2):208-213. doi:10.1016/j.jaip.2013.12.003. PMCID:PMC4018190.

https://www.jaci-inpractice.org/article/S2213-2198(13)00507-2/fulltext

 

Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2024 update. Published May 22, 2024. Available from: https://ginasthma.org

https://ginasthma.org/2024-report/

天気・気圧・寒暖差で喘息が悪くなる?—呼吸器内科医が解説

呼吸器・咳

「台風が近づくとゼーゼーする」「雨の前日に咳が増える」「寒暖差で息苦しい」……これらの症状は喘息の方からよく聞く訴えです。

 

結論から言うと、天気(気圧・気温・湿度・雷雨など)と喘息悪化には関連を示す研究結果が多数あり、特に急な気象変化や雷雨・寒冷・猛暑などは喘息症状を悪化させます。ただし重要なのは、「気圧そのものが直接の犯人」というより、気圧変化に伴って起こる環境の変化(冷え・乾燥・風・花粉・カビ胞子・大気汚染・感染流行・行動変化)が重なって喘息の悪化が起きる、という見方が正しいと考えられます。今回はここを分かりやすく説明・整理したいと思います。

 

1)そもそも喘息は「気道が過敏な体質」

 

 

喘息の本体は、気管支のアレルギー炎症と気道過敏性です。刺激(冷気、煙、ウイルス、花粉、運動など)で気道が収縮し、粘液が増え、咳・喘鳴(ゼーゼー)・息苦しさが出やすくなります。

 

この中でも、気圧(低気圧・台風)は古くから喘息を悪化させる要因の一つと言われています。低気圧や台風などの天候悪化が起こると、喘息の発作や入院・救急外来への受診が増えることが分かっています。また国内でも東京の小児喘息の夜間救急受診を調べた研究では、高い気圧からの急な気圧低下などの条件で受診が増えたと報告されています。 

 

この要因としては、低気圧や前線が来るとしばしば下記のようなことがセットで起こるためと考えられます。

・気温低下(冷気)

・風で花粉・黄砂・PM2.5が舞う

・湿度変化(乾燥 or 高湿度)

・雷雨で花粉が微粒子化

・室内滞在が増え、ダニ・カビ曝露が増える

こうした複合要因が、喘息の気道にとって刺激の盛り合わせになり、病状を悪化させます。

 

また極端な寒さ・暑さ、そして寒暖差は、喘息増悪と関連する研究があります。これは寒冷・乾燥:吸い込む空気で気道が冷えて乾き、収縮しやすいからといわれています。また猛暑も脱水・オゾン増加・炎症亢進などが絡みやすいということもわかっています。寒暖差は自律神経や気道の反応が乱れやすいことが要因となっています。

 

2)雷雨喘息(Thunderstorm asthma):知っておくべき“例外的に危険な現象”

雷雨喘息(Thunderstorm asthma)は、花粉やカビ(真菌)などのアレルゲンが多い時期に雷雨が起きた直後〜数時間の間に、喘息発作(咳・ゼーゼー・息苦しさ)が急増する現象です。ふだん喘息と診断されていない人でも起こり得て、まれに大規模流行(多数の救急受診)になります。

 

雷雨喘息は「雷そのもの」ではなく、雷雨の気象条件が“吸い込みやすいアレルゲンを大量に作って地上付近に集めることがポイントです。

 

① 花粉が破裂して、肺の奥まで届くサイズに

 

花粉は本来サイズが大きく、鼻で止まりやすいのですが、雷雨の前後に高湿度・雨滴などの影響(浸透圧ショック等)で花粉が破裂し、微小な粒子(sub-pollen particles)が大量に放出されます。これが気管支の奥まで入りやすいため、喘息発作が起こりやすくなります。 

 

② 下降気流(突風)が地表付近に濃いアレルゲン雲を作る

 

雷雨の前線で起こる強い風や下降気流が、花粉・微粒子・(時に)真菌胞子を巻き込み、地上の人が吸う高さに高濃度で運びます。

 

有名な事例として、2016年11月21日、オーストラリア・メルボルンで世界最大級の雷雨喘息が起き、救急受診が数千件規模で急増し、死亡例も報告されました。この事例が示した重要点は、「ふだん喘息と診断されていない人」も多数巻き込まれたことです。

 

 

3)天気だけじゃない:大気汚染が増悪の土台になる

 

PM2.5、NO2、オゾンなどの汚染物質は喘息増悪と関連します。 天気が悪い日(寒い・風がない・逆転層など)ほど汚染が滞りやすく、「天気×汚染」で悪化しやすい、と考えられています。

 

 

4)今日からできる:天気で悪化しやすい人のセルフケア

 

① 悪くなるパターンを見える化しましょう

 

天気(気圧・気温・湿度)と症状(咳、息苦しさ、夜間覚醒、頓用回数)を2〜4週間メモしてみましょう。可能ならピークフロー(PEF)測定も行うとよいです(朝・夜)。

→「低気圧の日」よりも、気温差が大きい日や雨の前日、雷雨の夕方、乾燥+冷えなど、あなたの個人の症状悪化のトリガーが見つかります。

 

② 悪化しやすい日の行動を調整する

 

・吸入薬(特に吸入ステロイドなど)をサボらない

・冷気対策:マスクやスカーフで吸気を温める

・雷雨・強風+花粉シーズン:できれば屋内、窓を閉める

・空気が悪い日:激しい屋外運動を避ける

・室内湿度は40〜60%目安(乾燥しすぎ/加湿しすぎの両方を避ける)

 

 

5)まとめ:天気は「引き金」になり得る。だからこそ“準備”が効く

 

気圧低下や前線通過などの急な気象変化は、喘息悪化と関連する研究結果があります 。ただし多くは、気圧そのものより冷え・乾燥・花粉/カビ・大気汚染・感染・行動変化の複合で悪化すると考えられています。天気で悪化しやすい人ほど、吸入治療の継続+悪化日の行動調整+(できれば)ピークフローで早期の症状悪化を察知することが有効です。

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器専門医・医学博士 表紀仁

 

参考文献

Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention (2024 update): Main Report. 2024.

https://ginasthma.org/2024-report/

 

Zhang Y, Peng L, Kan H, et al. Effects of Meteorological Factors on Daily Hospital Admissions for Asthma in Adults: A Time-Series Analysis. PLOS ONE. 2014;9(7):e102475.

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0102475

 

Makrufardi F, et al. Extreme weather and asthma: a systematic review and meta-analysis. European Respiratory Review. 2023;32(168):230019.

https://publications.ersnet.org/content/errev/32/168/230019

 

Inspector-General for Emergency Management (IGEM), Victoria. Review of response to the thunderstorm asthma event of 21–22 November 2016 – Final report. 2017.

https://www.igem.vic.gov.au/publications/igem-reports/review-of-response-to-the-thunderstorm-asthma-event-of-21-22-november-0

美容師は喘息になりやすい?【呼吸器内科医が解説】

アレルギー  / 呼吸器・咳

1) まず結論:美容師は喘息になりやすい?

 

髪のブリーチ(脱色)剤に含まれる過硫酸塩が、美容師の方の鼻炎・職業性喘息の「最大の原因候補」として挙がります。

 

一方で、酸化染毛剤(いわゆるアルカリカラー:PPDなどのパラアミノ化合物)も原因になり得ますが、報告数は過硫酸塩より少ないと考えられています。さらに縮毛矯正・髪質改善(ホルムアルデヒドを扱う施術)では、ホルムアルデヒド曝露によって新たに喘息を発症した方がいると報告されており、重要な原因物質の一つと考えられています。

 

 

2) 「美容師の喘息」は2つに分けて考えると整理しやすい

 

  1. 職業性喘息(Occupational Asthma: OA)

 

職場でのアレルゲン曝露が原因で新たに喘息を発症するパターンです。典型的には「働き始めてから数か月〜数年後(潜伏期間)に職場で症状が悪化→休日に軽快」の経過を取りやすいです。美容師では、過硫酸塩や一部の染毛剤がこの枠に入りやすいと考えられています。

 

  1. 仕事増悪性喘息(Work-exacerbated asthma)

 

元々喘息のあった方が、刺激性ガス・ミスト・香料・粉じんなどで症状が悪化するパターンです。換気不良、同時多剤曝露、ピーク曝露で悪化しやすいと言われています。

 

美容室は化学物質が“複合曝露”になりやすく、AとBが混ざる例も起こります。ブリーチ粉末・アンモニア・過酸化水素・スプレー類など、曝露源は多岐にわたることが研究でも示唆されています。

 

3) ブリーチ(脱色)と喘息:過硫酸塩が「主役」になりやすい理由

 

研究でいちばん強く「美容師の職業性喘息の原因」として挙がるのが、「ブリーチ粉に含まれる“過硫酸塩(かりゅうさんえん)”」です。

 

・過硫酸塩って何が問題?

ブリーチの粉を「開ける」、「計量する」、「混ぜる」、「塗る」、このタイミングで、目に見えない粉が舞って吸い込みやすくなります。

 

医学研究では、美容師さんを詳しく検査すると、職業性喘息と確定した人の多くが過硫酸塩(ブリーチ粉)が原因だった、という報告があります。

・「鼻炎が先、次に咳」という流れが多い

過硫酸塩が関係するケースでは、最初にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、などの鼻炎が出て、あとから喘息っぽい症状(咳・息苦しさ)が出ることも多いとされています。

 

・ダストフリーでも安心しきれない理由

粉が舞いにくい“ダストフリー”系は基本的に良い方向ですが、研究では空気中濃度は下がっても症状が完全にゼロにはならない場合がある、という示唆もあります。(すでに敏感になっている人は少量でも反応する可能性がある、ということ)

 

・さらに深堀データ

職業性喘息疑いで紹介された美容師47人を調査し、吸入誘発試験で24人が職業性喘息(51.1%)と診断され、その原因の87.5%が過硫酸塩でした。さらに職業性鼻炎の合併も多く見られたと言われています。過硫酸塩は喘鳴・呼吸困難リスクが最大3.9倍、さらにブリーチ粉末曝露による呼吸器症状リスクが20倍といった推定が紹介されています

 

4) カラー剤(酸化染毛)と喘息

 

カラー剤(酸化染毛剤)は皮膚のかぶれ(接触皮膚炎)で有名ですが、呼吸器でも問題になることがあります。研究では、カラー剤(PPDやその仲間の“パラアミノ化合物”など)で職業性喘息が確定した例も報告されています。

 

どうして起こるの?

ポイントは「混ぜた直後から薬剤が反応して別の物質もできる」ことです。原料そのものより、反応途中でできる成分が影響する可能性も指摘されています。

 

5) パーマ剤(還元剤+酸化剤)と喘息:「刺激性中心」

 

パーマ剤は、においや刺激が強く感じやすいですよね。このタイプは、研究の厚みとしてはブリーチほど強くありませんが、

・喉や鼻への刺激

・ミスト(霧)や揮発成分

・換気不良

などで、喘息が悪化する(仕事増悪)方向に働きやすいと考えるのが現実的です。

 

パーマは

・一般に還元剤:チオグリコール酸(TGA)/アンモニウムチオグリコレート、システアミンなど

・2剤(酸化):過酸化水素など

で揮発性(アンモニア等)やミスト曝露による刺激が問題になります。

 

6) 縮毛矯正・髪質改善と喘息:ホルムアルデヒドに注意

 

カラー・パーマと別枠ですが、美容師の呼吸器症状で重要です。一部のストレート系施術では、工程(加熱など)でホルムアルデヒドが出ることが指摘されており、咳・喘鳴などにつながる可能性があります。症例報告や注意喚起もあります。

 

7) どうやって診断するの?

 

・詳細な職業歴:ブリーチ頻度、粉末かクリームか、混合方法、換気、施術メニュー

・肺機能検査(スパイロ)

・ピークフロー(PEF)を勤務日と休日で複数週間記録(職業性喘息の実務で重要)

 

上記から総合的に喘息の可能性を判断します。

 

8) 予防

 

予防にSTOP原則(Substitution→Technical→Organizational→Personal protection)を当てはめるのがよいと言われています。

 

具体的な例としては、

 

① Substitution(代替)

・ブリーチ:粉末の飛散が少ない形態、低飛散設計への置換(ただし“ゼロ”にはならない可能性)

・ストレート:ホルムアルデヒド放散が疑われる製品の回避

 

② Technical(工学的対策)

・局所排気・十分な換気(混合場所、加熱工程、ブロー周辺)

・粉末混合の工夫(密閉、開封動線、こぼれ対策)

 

③ Organizational(作業管理)

・症状出現者を、ブリーチ担当から外す/ローテーションする

・ピーク曝露作業を分散(同時施術を避ける)

 

④ Personal protection(個人防護)

・手袋:皮膚炎予防だけでなく、感作の入口を減らす意味もある

・呼吸用保護具は現場適合が難しいが、症状が強い場合は産業医と現実的な選択肢を検討

 

9) 当院からのメッセージ

 

美容室で働く方の中には、ブリーチ(脱色)やカラー、縮毛矯正などの施術後に咳が出る/息が苦しい/ゼーゼーするといった症状を感じる方がいます。

これらは、単なる風邪ではなく、仕事中の粉じんや刺激物質の影響で起こる 「仕事で悪化する喘息」や、まれに 「仕事が原因で始まる喘息(職業性喘息)」の可能性もあります。咳や息苦しさを「職業病だから仕方ない」と我慢せず、早めにご相談ください。

働き方と体調の両方を大切にできるよう、当院がサポートします。

 

当院の喘息に関する記事はこちら

 

 

<参考文献>

Occupational asthma and occupational rhinitis in hairdressers. Chest. 2005 Nov;128(5):3590-8. doi: 10.1378/chest.128.5.3590.

https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(15)52936-X/abstract

 

Occupational asthma, rhinitis, and contact urticaria caused by oxidative hair dyes in hairdressers. Ann Allergy Asthma Immunol. 2014 Jan;112(1):46-52. doi: 10.1016/j.anai.2013.10.002. Epub 2013 Oct 30.

https://www.annallergy.org/article/S1081-1206(13)00737-0/abstract

 

Diagnostics and Prevention of Occupational Allergy in Hairdressers. Curr Allergy Asthma Rep. 2023 May;23(5):267-275. doi: 10.1007/s11882-023-01076-z. Epub 2023 Apr 12.

https://link.springer.com/article/10.1007/s11882-023-01076-z

 

独立行政法人 環境再生保全機構 職業性ぜん息

https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/job.html

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

理事長 表紀仁

睡眠時無呼吸の「簡易アプノモニター検査」とは?

睡眠時無呼吸

自宅で一晩、手のひらサイズの測定器を装着して眠り、睡眠中の呼吸状態を記録する検査です。入院や大掛かりな設備は不要で、いびき・無呼吸・日中の強い眠気がある人にまず行う最初の検査として用いられます。

 

<どんなときに勧められる?>

 

下記のような症状がある方にお勧めします。

 

・家族に「寝ている間、息が止まっている」と言われる

・いびきが大きい、夜中に何度も目が覚める、朝起きてもだるい

・日中の強い眠気、集中力低下、高血圧・糖尿病・肥満がある

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)か、大まかな重症度を知りたい

 

<何を測るの?>

 

装置によって異なりますが、代表的には次の指標を同時記録します。

 

① 酸素飽和度(SpO₂):息が止まると下がります。

② 呼吸気流(鼻口の空気の流れ)または呼吸努力(胸腹部バンド)

③ いびき音、体位(仰向け・横向き)、脈拍 など

 

これらから「無呼吸(10秒以上呼吸停止)・低呼吸(呼吸が浅くなる)」の回数を推定します。装着した時は以下のようになります。

 

 

<検査の流れ(自宅で)>

 

1,手続き・説明:医療機関で装置の受け取りと装着方法の指導があります。

 

2,自宅で装着:就寝前にセンサー(鼻のカニューレ、指先のSpO₂、胸腹部バンドなど)を装着して普段通り就寝します。

 

3,翌日返却:装置を返却し、データを解析(1ヶ月程度かかります)。

 

4,医師から結果説明:重症度や治療方針(精密検査やCPAPなど)を相談します。

 

 

<検査の費用>

 

検査料金(3割負担):2,700円

診察料(3割負担):約900円

 

保険で3割負担の方の場合は、合計で3,600円程度になります。

 

<当日の注意>

 

いつも通りの生活でOKです。飲酒を普段からする人は、普段通り飲酒してください。マニキュア・ジェルネイルはSpO₂が誤作動することがあるため外しておいてください。風邪や鼻づまりが強い日は測定を延期することも考えましょう。

 

 

<結果の見方>

AHIという数値が重要です。

AHI(無呼吸低呼吸指数)は「1時間あたりの無呼吸+低呼吸の回数」で無呼吸があるかどうか、無呼吸の重症度がわかります。

 

5〜15:軽症、15〜30:中等症、30以上:重症(目安)

 

最低SpO₂:90%未満が頻発する場合は要注意

 

※簡易検査は「睡眠段階(浅い/深い/REM)」を測れないことが多く、AHIは目安です。症状と合わせて医師が総合判断します。

 

 

<まとめ>

 

簡易アプノモニターは自宅でできる睡眠時無呼吸の入り口検査になります。無呼吸の有無や重症度の目安が分かり、治療や精密検査の要否を決める材料になります。簡単な検査なので、睡眠時無呼吸の症状がある方はまず実施してみてはいかがでしょうか?

 

 

参考資料:

日本睡眠学会 睡眠障害を診断するための検査

https://www.jssr.jp/basicofsleepdisorders3

 

日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

理事長 表紀仁

【呼吸器内科医が解説】咳が続いて胸が痛い…考えられる原因・受診の目安

呼吸器・咳

咳がひどく続いており、今度は胸が痛くなってきた……こんな症状でお困りの方はけっこういらっしゃいます。ここでは、このような場合に、考えられる原因や受診の目安について解説したいと思います。

 

 

<まず知ってほしい結論>

 

・咳のせいで胸の筋肉や関節が痛むことはよくあります(いわば“筋肉痛”)。

・でも、肺やその周りの膜が炎症を起こしている(胸膜炎)、肺に空気が漏れている(気胸)、血の塊が肺に飛んだ(肺塞栓)など、放置すると危ない病気が隠れていることもあります。

 

下の「今すぐ受診のサイン」に当てはまるなら、病院を受診したほうがよいでしょう。

 

・息がしづらい/ゼーゼーして苦しい

・急に片側だけズキッと強い胸の痛み+息切れ(気胸が心配)

・突然の胸の痛み+息切れ+血の混じった痰(肺塞栓が心配)

・高い熱・悪寒・ぐったり+ドロッとした痰(黄色や緑)(肺炎が心配)

 

<よくある原因>

 

① 胸の筋肉・関節の痛み(肋軟骨炎など)

咳が続いて胸が痛くなる場合の最も多い原因です。

この場合は、咳をしすぎて胸の前あたりが押すと痛い/動くと痛いといった症状が出ます。咳は多くの場合、風邪や気管支炎が原因となり、のどの痛みや鼻水が先に出て、数日~1-2週間程度で良くなることが多いです。

 

② 肺炎

発熱が続き、ぐったり・息切れ・濁った痰などの症状が出ます。咳で胸も痛むことあります。肺炎から胸膜炎に進展すると、深呼吸で胸が痛むようになります。

 

③ 胸の膜の炎症(胸膜炎)

息を吸う・咳をするたびに刺すように痛むのが特徴です。原因が肺炎の場合は、高熱が続きます。結核や肺がんなどが原因の場合は、微熱や寝汗、体重減少、息切れなどの症状が出ます。

 

④ 気胸(ききょう)

突然の片側胸痛+息苦しさが特徴です。若い痩せ型や喫煙者に多い病気です。また間質性肺炎や肺気腫などの肺に病気を持っている方でも起こります。

 

⑤ 肺塞栓(はいそくせん)

急な息切れ・胸痛・血痰・動悸などの症状が出ます。脚のむくみや痛みが手がかりです。

 

 

<受診するとどんな検査をするの?>

 

まず痛みがいつから出て来たのか、どこが痛むか、発熱・息苦しさなどの症状があるかなどを問診して、必要に応じて酸素飽和度のチェックや胸部レントゲンやCT検査、血液検査・心電図などを実施します。

 

・血液中の酸素飽和度(SpO2):息苦しさなどがある場合、酸素不足があるかどうかを確認します。

・胸のレントゲン:肺炎・気胸などがないかチェック。

・血液検査:炎症の程度をみます。

・必要に応じてCT(肺塞栓の確認など)、心電図(心臓の病気を除外)も。

 

 

<まとめ>

 

咳で胸が痛いのはよくあるが、命に関わる病気が隠れていることもあります。息苦しさ・血痰・突然の片側胸痛・高熱が続く場合は要注意で、病院を受診しましょう。危険サインがなければ休む・水分・加湿・短期間の痛み止めで様子見でもよいでしょう。ただし悪化・長引くなら受診をしてください。

 

<参考情報>

日本呼吸器学会 呼吸器Q&A 

Q8. 急に胸が痛くなり良くなりません。心臓や肺の病気でしょうか?

当院の胸の痛みに関するページはこちら

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

理事長 表紀仁

マイコプラズマ肺炎ってなに?症状・潜伏期間・検査・治療・登校基準を呼吸器内科医がやさしく解説

呼吸器・咳

マイコプラズマ肺炎は、長引く空咳(からせき)と発熱が特徴の肺の感染症です。原因はマイコプラズマという非常に小さな細菌で、咳やくしゃみなどのしぶきによって人から人へ感染します。初期には風邪の症状と見分けがつかないのですが、咳がひどく、肺炎になると熱が続きます。

 

ここではマイコプラズマ肺炎について、症状・潜伏期間・検査・治療・登校基準などを解説したいと思います。

 

<どんな症状がでる?>

 

主な症状としては、発熱、のどの痛み、乾いたせき(痰が少ない)などがあります。肺炎になると熱が4-5日以上続きます。せきは熱が下がってからも数週間続くことがあります。

 

マイコプラズマ肺炎になる方は、学童〜思春期の子供に多いと言われています。日本の直近データでは5~9歳が最も多く(約43%)、次いで10~19歳となっています。ただし若年成人でもけっこう見られます。

 

 

国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「マイコプラズマ肺炎の発生状況について」

https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ma/mycoplasma-pneumoniae/010/20240919/12869-mycoplasma-2409.html

 

 

<なぜマイコプラズマ肺炎になるの?>

 

咳やくしゃみのしぶき(飛まつ)を吸い込むことによって感染します。他にも手すり・ドアノブなどに触れた手で、自分の顔などを触って感染する場合(接触感染)もあります。潜伏期間はおよそ2〜3週間と言われています。

 

<どのように診断する?>

 

聴診すると肺にぽこぽことした音が聞こえる場合もありますが、マイコプラズマ肺炎では聴診の音があまり目立たないことがしばしばあると言われています。

 

検査としては、まず肺炎かどうかは胸部レントゲンを実施して診断します。レントゲンでは、肺炎の部分が白く移ります(浸潤影)。

 



肺炎の原因菌としてマイコプラズマを疑う場合は、マイコプラズマ抗原キット(のどのぬぐい液)でチェックします。検査結果は15分程度で判明します。他にも血液検査でマイコプラズマ抗体を調べる方法もあります(数日~1週間程度を時間を必要とします)。

他にはPCR検査があります。のどや鼻、痰にいる菌の遺伝子を直接検出する検査で、数日かかります。検査の感度や特異度が高いことが特徴です。

名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニックでは、マイコプラズマ抗原キットで即時検査し即日結果説明を行っています。

 

 

 

<治療方法>

 

マイコプラズマ肺炎は抗生物質で治療します。マクロライド系抗生物質(アジスロマイシンやクラリスロマイシン)を主に使用します。治療期間は、概ね5〜7日程度(アジスロマイシンは3日間のみ)です。

 

効きにくい場合や副作用などにより継続が困難な場合は、ドキシサイクリン(テトラサイクリン系)やキノロン系の抗生物質(ジェニナックやラスビックなど)に切り替えます。テトラサイクリン系は小児(8~10歳以下)では通常使いません(歯の着色などの理由)。

 

近年はマクロライド系の抗生物質が効きにくい耐性菌が多くなってきています。2019~2020年のデータでは、耐性菌の割合が20~30%と報告されています。そのため、経過を見ながら治療薬を調整することが必要です。

 

 

<いつから登校・登園・出勤はできる?>

 

マイコプラズマによる感染症では、発症初期〜治療前はうつしやすいです。有効な抗生物質を始めて2〜3日で感染力は弱まると考えられています。

 

学校の登校、保育園への登園に関しては、特に決まりはありませんが、熱や咳が治まってきたら登校・登園可能です。(学校保健安全法では出席停止期間の明確な定めはありません)出勤に関しても同様で、症状が改善したら出勤可能です。

 

 

<クリニックからのメッセージ>

 

マイコプラズマ肺炎は、「乾いたせき」が長く続くのが特徴です。多くは適切なお薬で良くなりますが、放っておくと体力を消耗し、学校やお仕事にも影響します。当院では症状と経過を丁寧に伺い、必要に応じてレントゲンや抗原検査を組み合わせ、最適なお薬を選びます。どうぞ無理をせず、早めにご相談ください。

 

肺炎の記事はこちら

 

<参考資料>

日本呼吸器学会「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/statement/20241022134500.html

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士  表 紀仁

ツロブテロールテープ(ホクナリンテープ)ってどんな薬?呼吸器内科医が解説

呼吸器・咳

ツロブテロールテープ(一般名:ツロブテロール、商品名:ホクナリンテープ)は、気管支を広げて呼吸を楽にする「β2刺激薬」のはり薬(貼付薬)です。小児喘息で使用されることが多い薬ですが、成人でも特に吸入がうまくできない高齢者の方などで喘息や肺気腫・COPDの方の症状改善に用いることがあります。

 

ただし基本的には気管支喘息や肺気腫・COPDの方の治療では、吸入薬のβ2刺激薬を優先した方がよいです。これは、正しく吸入薬を使用できれば吸入薬のほうが効果が高く、副作用も少ないからです。

 

本記事では、呼吸器内科専門医の立場からツロブテロールテープの効果、適応、注意点、副作用、貼る場所や使い方を詳しく解説します。

 

<ツロブテロールテープとは?>

 

ツロブテロールテープは、皮膚からゆっくり薬剤が吸収され、おだやかに効果が持続する気管支拡張薬です。

 

 主な効果は以下の通りです。

・気管支を広げて呼吸を楽にする

・喘息発作の予防

・夜間や早朝の咳を抑える

・小児喘息の補助的治療として使用

・成人の喘息・咳喘息・COPDの一時的な症状改善

 

< ツロブテロールテープのメリット>

 

① 貼るだけで使える

吸入器のように「正しい吸入手技」が不要で、高齢者の方や小児にも使いやすいのが特徴です。

 

② 作用が長く穏やかに続く

貼付後ゆっくり薬が吸収され、約24時間、持続的に症状を抑える効果があります。

 

< ツロブテロールテープのデメリット>

 

① 吸入薬よりも効果が劣る

吸入薬を正しく使用できている場合は、ツロブテロールの効果のほうが劣る可能性があります。下記はβ2刺激薬の有効性の違い(固有活性)ですが、吸入薬で使用されるβ2刺激薬の方が有効性が高いことがわかります。

 

 

② 即効性はない

発作が起きた時に貼ってもすぐ効きません。急な息苦しさには吸入SABA(メプチン・サルタノール)が必要。

 

③ 年齢に応じた適切な用量調整が必要

特に小児では 体重に合わせた用量調整が必要です。多すぎると副作用が出やすくなります。

 

④ 心臓疾患のある方は注意

β2刺激薬のため、動悸や手の震え、不整脈などが出ることがあります。

 

⑤ 貼る場所にかぶれが出ることがある

日ごとに貼る位置を変えて皮膚トラブルを予防しましょう。

 

⑥ 他のβ刺激薬との併用に注意

吸入β刺激薬と併用すると副作用が増えることがあります。

 

<貼る場所はどこがいい?>

背中(推奨)や上腕、胸部、腹部、太ももがよいです。汗のかきにくい部位に貼ると剥がれにくいです。

 

入浴後・就寝前に肌をよく乾かしましょう。また貼る位置を日替わりでローテーションするとよいです。剥がれたら新しいものを貼らず、次の予定時間まで待ったほうが望ましいでしょう。

 

 

喘息に関する記事はこちら

 

<参考文献>

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023

 

久米裕昭ほか:アレルギー・免疫. 16:1604-1614,2009

 

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

食器洗浄機は小児ぜんそくや湿疹のリスクを高める?

アレルギー  / 呼吸器・咳

2015年、「家庭で食器を手洗いしている方が、子どものアレルギーが少ない」という研究が話題になりました。これはスウェーデンの研究者 Hesselmarらが発表したもので、国際的にも注目された内容です。

 

「食洗機を使うとぜんそくやアレルギーが増えるの?」

「手洗いの方が良いの?」

 

そんな疑問を、呼吸器専門医の立場から、わかりやすく解説します。

 

<食器洗浄機と小児ぜんそくに関する研究とは? ― スウェーデンの子ども 1029 人を調査>

 

この研究では、スウェーデン南部に住む 7〜8歳の子ども 1,029 名を対象に、

 

・ぜんそく

・アレルギー性鼻炎

・湿疹(アトピー性皮膚炎)

 

などのアレルギー症状と、家庭で食器洗いをどうしているか(手洗い or 食器洗浄機)の関係を調べました。

 

結果は、食器を手洗いしている家庭の子どもは…

 

・ぜんそくが少ない

・アレルギー性鼻炎が少ない

・湿疹が少ない

 

という関連がありました。また、発酵食品(例:手作りヨーグルトやザワークラウト)をよく食べる家庭、家族が中古品(使い回しのお下がり)を使うことが多い家庭、でもアレルギーが少ない傾向がありました。

 

<なぜ手洗いの方がアレルギーが少ないの?>

 

この研究では「手洗いの方が食器に少し菌が残りやすい=過度に衛生的ではない」という点が関係しているのではないか、と考察されています。

 

これは「衛生仮説」が関係していると考えられていて、これは幼児期にほどよく細菌に触れて育つ方が、免疫のバランスが整いアレルギーが起こりにくい、という考え方です。食洗機は高温・高圧の洗浄で食器を非常に清潔にするため、手洗いよりも菌に触れる機会が少なくなる →その結果、アレルギーが増える可能性がある、と解釈されました。ただし、これはあくまで「仮説」であり、食洗機=アレルギーが増えると断定できるわけではありません。

 

たとえば、手洗いする家庭はライフスタイルや食習慣も異なる、食洗機を使う家庭は都市部で共働きが多い、遺伝的背景や生活環境が違う、など、いろいろな要因が複雑に関係しています。

 

<食洗機はやめた方がいいの?>

 

この研究だけを根拠に「食洗機はアレルギーのリスクを高めるから使わない方がいい」とは言えません。

 

✔ 食洗機は食中毒予防に優れ、衛生的

✔ 日本の生活環境はスウェーデンと大きく異なる

✔ 他の研究では明確な関連が確認されていない

 

以上から、免疫の発達には、「過度に清潔にしすぎない」ことも大切ですが、食洗機をやめる必要はありません。

 

このHesselmar らの研究は、アレルギーと「衛生仮説」を考えるうえで非常によい“入口”になる研究です。ただし、“結論を出す研究”というより、考えるきっかけを与える研究という風に考えていただければよいかと思います。

 

当院のアレルギー検査はこちら

 

 

論文:

Bill Hesselmarら「Allergy in children in hand versus machine dishwashing」

Pediatrics. 2015 Mar;135(3):e590-7.

https://publications.aap.org/pediatrics/article-abstract/135/3/e590/75461/Allergy-in-Children-in-Hand-Versus-Machine?redirectedFrom=fulltext

 

 

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医学博士・呼吸器内科専門医  表紀仁

喘息(ぜんそく)は遺伝するの?—呼吸器内科の立場から解説

呼吸器・咳

ご自身が気管支喘息の場合に、子供に喘息が遺伝するのかどうか?心配になる方も多いと思います。気管支喘息はアレルギーの病気で、実はアレルギー自体が遺伝しやすい病気といわれています。

 

そのため気管支喘息も遺伝しやすい病気といえます。親のどちらかが喘息だと子供の発症リスクは約3倍、両親ともに喘息だと約6倍に上がるとの研究結果があります。母親の喘息の方が子に強く影響する可能性を示すデータもありますが、父親の喘息歴もリスク上昇に関与します。

 

しかし発症は環境の引き金が重要です。環境の要因としては、ダニ・ハウスダスト・ペットなどのアレルゲン曝露、ウイルス感染、喫煙・受動喫煙、大気汚染などがあります。双子の子供での研究では、同じ遺伝子でも環境により発症の有無が分かれることが繰り返し示されています。

 

そのため、喘息にならないよう環境を調整することが大事なのです。以下に注意すべきポイントを列挙します。

 

(1)妊娠中・家庭内の禁煙徹底:受動喫煙は強いリスクになります。

(2)アレルゲン対策:ダニ対策(寝具カバー・週1回60℃洗濯・掃除機)、カビ対策、ペットは症状と感作の有無で個別判断します。

(3)大気汚染情報のチェック

(4)体重管理と睡眠:肥満・睡眠障害はコントロール悪化と関連します。

 

喘息のさらに詳しい記事はこちら

 

参考資料:

Parental history and the risk for childhood asthma. Does mother confer more risk than father?. Am J Respir Crit Care Med. 1998 Jul;158(1):176-81.

 

Risk for Asthma in Offspring of Asthmatic Mothers versus Fathers: A Meta-Analysis. PLoS One. 2010 Apr 12;5(4):e10134.

 

Global Initiative for Asthma - Global Initiative for Asthma - GINA

https://ginasthma.org/

 

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名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

インフルエンザ後の肺炎を呼吸器内科医が徹底解説|症状・原因・検査・治療・予防まで

<インフルのあとに起こる肺炎ってなに?>

 

インフルエンザで喉や気管が傷むと、からだの守り(バリア)が弱くなります。そこへ細菌が入りこんで起きる肺炎がいちばん多く、これを「二次性細菌性肺炎」といいます。

まれに、インフルエンザのウイルスそのものが肺を強く傷めて肺炎になることもあります(ウイルス性肺炎)。さらに両方が重なることもあります。

 

インフルエンザの後に起こる細菌性肺炎は、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌(ウイルスではなく菌!)などが上乗せ感染して発症します。このような肺炎の特徴としては、インフルエンザ感染による熱が数日続いた後、いったん解熱・軽快した数日後に再度発熱し、汚い痰が増加するような症状が見られます。

 

<どういうサインに注意すればいい?>

 

 

「いったん良くなったのに、また悪くなる」が合図です。具体的には、

 

・解熱後にまた高い熱が出る(ぶり返す)

・黄色や緑のドロッとした痰が増える

・息切れ・ゼーゼー・胸の痛みが強くなる

・指先の酸素(SpO₂)が下がる/脈が早い/ぐったりする

 

このような症状がインフルエンザにかかったあとに見られる場合は、病院に受診したほうがよいでしょう。

 

<どのような検査で診断する?>

肺炎がある場合、聴診をするとぽこぽことした音が息を吸う時に聞こえます(水泡音と言います)。

疑わしい場合は、レントゲンやCTで肺に影がないかをチェックします。レントゲンやCTでは、肺炎がある部分は白く移ります。また痰や血液をとって、どんな菌が原因かを調べることもあります。

 

 

<治療は?>

 

インフルエンザ後の細菌性肺炎では、抗菌薬(抗生物質)を投与します。まずは5~7日間を目安に投与を行います。インフルエンザが発症してから48時間以内であれば抗インフルエンザ薬(タミフルやイナビルなど)を投与することもあります。

 

軽い方なら数日で楽になり、5〜7日ほどで抗生物質をやめられることが多いです。重い方、膿がたまった方、体の弱い方はもっと長くかかります。

 

酸素飽和度が低い、食事がほとんど取れない、ご高齢の方の場合は、入院して治療をお勧め致します。

 

肺炎は予防が大事です。インフルエンザワクチンを毎シーズン打つと、重症化や入院のリスクが下がります。また肺炎球菌ワクチンは打つと、高齢の方や呼吸器に持病のある方ではとくに有効と言われています。

 

<よくある質問(Q&A)>

 

Q:インフルのあと、何日目に注意したらよいですか?

A:どのタイミングでも起こりえますが、とくに3〜7日目にぶり返すケースは要注意です。

 

Q:レントゲンだけでわかる?

A:目安にはなりますが、血液・痰の検査を合わせて原因をしぼります。重い場合や判断が難しいときはCTも使います。

 

Q:他の人にうつりますか?

A:肺炎自体より、元のインフルエンザが感染源になります。

 

<当院からのメッセージ>

インフルエンザのあとに「また熱が出てきた」「息切れが強い」「痰が増えて色が濃い」と感じたら、我慢せず早めにご相談ください。肺炎は早期発見・早期治療が何より大切です。

当院では、レントゲンや血液検査、必要に応じて微生物検査を組み合わせ、原因を見極めながら過不足のない治療を心がけています。検査や治療の理由を丁寧に説明し、納得のいく医療をご提供します。

季節の変わり目は体調を崩しやすい時期です。どうか無理をせず、気になるサインを見逃さないでください。

 

 

肺炎のより詳しい解説記事はこちら

もしくはこちら

 

 

 

<参考資料>

日本呼吸器学会雑誌第45巻第9号 「インフルエンザに混合感染した細菌性肺炎の検討」

https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/045090667j.pdf

JAMA. 2013 Jan 16;309(3):275-82. Bacterial Coinfection in Influenza. A Grand Rounds Review

https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/1557719

 

 

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呼吸器内科専門医・医学博士  表紀仁

呼吸器の身体障害者申請について呼吸器内科専門医が解説!申請に必要な検査・申請方法・得られる公的支援は?

呼吸器・咳

肺気腫・COPDや間質性肺炎で病状が進んでくると、薬や在宅酸素療法などで治療費が高額になってきたり、通院・入院回数も増えて医療費の負担額が増えて困っている方も多いのではないでしょうか。

このような場合、呼吸機能の障害によって障害者手帳を取得すると医療費や公共交通機関の利用・税金の面でいろいろなメリットが得られます。ここでは、呼吸機能障害による身体障害者申請の方法や得られるメリット、必要な検査について解説したいと思います。

 

 

<障害者手帳の取得に必要な検査

 

障害呼吸機能の者申請を行うには、下記の検査を行い基準を満たした場合申請できます。主に3つの検査を行います。

 

① 肺機能検査

② 胸部レントゲン検査

③ 動脈血液ガス検査

 

これらの検査データが必要になります。これらに加えて、患者様の息切れの程度も重要となってきます。

 

肺機能検査では、一秒量と予測肺活量の数値が必要です。これらの数値から指数を計算する必要があります(指数=1秒量÷予測肺活量×100)この指数が呼吸機能の障害の程度を反映しており、最も重要となってきます。

また動脈血液ガス検査では、安静時の動脈血液中のO2分圧(酸素濃度)を測定します。

申請が可能な基準は以下の通りですが、肺機能検査が最も重要となりますので、過去に肺機能検査を行っている場合は、まずは主治医にご自身が基準を満たすかどうか聞いてみましょう。

 

<等級の目安>

 

身体障害の程度によって、等級が異なります。等級は症状・肺機能検査結果・動脈血液O2分圧によって変わってきます。以下が等級の目安になります。

1級

・呼吸困難が強いため歩行がほとんどできないもの

・呼吸障害のため指数の測定ができないもの

・指数が 20 以下のもの又は動脈血O2 分圧が 50Torr 以下のものをいう。

(常時人工呼吸器が必要な場合も1級)

 

3級

・指数が 20 を超え 30 以下のもの若しくは動脈血O2分圧が 50Torr を超え 60Torr 以下のもの、又はこれらに準ずるものをいう

4級

・指数が 30 を超え 40 以下のもの若しくは動脈血O2 分圧が 60Torr を超え 70Torr 以下のもの、又はこれらに準ずるものをいう

 

<主に対象となる病気>

 

呼吸機能障害で身体障害者申請の対象となる病気は、肺気腫・COPD(慢性閉塞性肺疾患)間質性肺炎などが挙げられます。特に肺気腫やCOPDの方は、病状が進行すると一秒量が低下し指数が低くなるため申請基準を満たしやすくなります。そのほかにもびまん性汎細気管支炎・胸郭変形による呼吸機能障害・結核後遺症などの病気をお持ちの方も病状が進むと申請が可能となる場合があります。

上記のような呼吸器の病気で在宅酸素療法や在宅人工呼吸器(在宅NPPVなど)を行っている方は、病状が進んでいますので一度身体障害手帳の申請を検討されてもよいと思います。

 

<得られる公的支援・メリット>

身体障害者認定3級以上では、基本的には医療費の全額免除を受けられます。ただし地域によっては所得制限があります。(名古屋市内は所得制限があります)また通院・入院時の自己負担限度額が設定されている自治体もあります。その他にも、税金の減額、鉄道料金・バスやタクシーなどの割引、公共料金の割引、携帯電話料金などの割引などの支援を受けることができます。

 

・JRなど公共交通の割引

障害者手帳の「旅客鉄道運賃減額」欄(第1種・第2種)の記載で割引が適用されます。JRは規則やガイドで条件が公開されています。

 

・NHK受信料の減免

世帯全員非課税で全額免除、重度障害(例:身体1・2級等)で半額免除など。自治体サイトやNHKの案内で具体的な条件が確認できます。

 

・税制上の優遇

所得税・住民税の障害者控除、相続税の障害者控除、自動車関連税の減免(自治体による)などあります。国税庁の公式案内に控除額の目安がまとまっています。

 

・公共料金等の減免・助成(自治体)

水道基本料金の減免、ガソリン助成、携帯料金割引、郵便料金の減免などのメニューが自治体横断で整備されています(内容は地域差あり)

 

<申請の手順(自治体ほぼ共通)>

・身体障害者診断書・意見書を入手(身体障害者指定医師に作成依頼が必要です)。

・顔写真(4×3cm)、交付申請書、マイナンバーの記載・本人確認書類を準備します。

・お住まいの市区町村の障害福祉窓口に提出。

・自治体の審査を経て身体障害者手帳が交付されます。標準的には約1か月程度と言われていますが、内容により長くなることもあります。


 

 

<理事長からのメッセージ>

呼吸機能が低下しても、「まだ頑張れるから」と申請をためらう方が多い印象です。しかし、身体障害者手帳は“生活の質を支える制度”であり、決して「重い病気の証明」ではありません。日々の通院や在宅酸素療法などを少しでも続けやすくするための大切なサポートツールです。

 

当院では、検査から診断書作成、申請サポートまで一貫して対応しております。呼吸の苦しさや生活への不安がある方は、どうぞ一人で悩まずご相談ください。

 

 

参考情報:

東京都福祉局 身体障害者と身体障害認定基準について

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/shinsho/shinshou_techou/sintaisyougaininteikijyun

 

愛知県庁ホームページ 身体障害者手帳の診断書・意見書様式について

https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/shintai-shindansyoyoushiki.html

 

 

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

院長 表 紀仁

呼吸器内科専門医・医学博士

咳止めの切り札「リフヌア」とは?—呼吸器内科医がやさしく解説

呼吸器・咳

 

病院にかかっていろんな治療をしているけど、なかなか咳が止まらない……こんな状況の方はいらっしゃるのではないでしょうか?当院では咳の原因をしっかり調べ、原因に対して十分な治療を行うので、多くの方の咳は改善します。しかしながら、十分な治療を行っても咳がなかなか改善しない方もいらっしゃいます。例えば気管支喘息では、約5%の方が難治性喘息といってしっかり吸入治療や内服治療を行っても状態が良くならない方がいると言われています。

 

このように原因に対して十分な治療を行っても咳が改善しない場合、もしくは原因がはっきりせず咳が改善しない場合などに咳止め薬の切り札として使用されるのが「リフヌア」です。

ここでは「リフヌア」がどんな薬なのか、効果や副作用について分かりやすく解説したいと思います。

 

<リフヌアはどんな薬?>



咳反射は、気道上皮が刺激されるP2X3受容体を介して咳の神経(迷走神経:C線維)が活発化し「咳反射」が起こります。リフヌアはこの咳の感受性亢進のスイッチであるP2X3受容体をブロックし、この咳感受性亢進スイッチを落として咳の回数を減らす狙いの薬です。従来の咳止めとは全く異なるメカニズムです。

 

 

咳の感受性が亢進している場合は、気管支喘息の方の咳症状の改善が乏しく、入院や喘息発作の頻度が増えることが分かっています。1)

また咳感受性が亢進しているタイプの咳は、日中に多い傾向があることも分かってきています。2)

さらに、冷気、会話、香料・煙・粉塵、笑い、体位変換など「本来は咳を起こしにくい弱い刺激」で簡単に咳が出る時やのどがイガイガして咳が出る時には、この咳の感受性が亢進している可能性が高くなります。

そのほかにも胃のむかつきや胃もたれなど機能性胃腸障害を持つ場合、この咳の感受性が亢進することが分かってきています。3)

 

このように「咳の感受性亢進」はさまざまな咳の要因や病気に関わっていることがわかります。

 

この「咳の感受性亢進」は、病院の検査で調べることができません。「カプサイシン吸入試験」という検査方法で調べることができますが、研究段階で一般の病院では実施していません。そのため、咳の経過(治療の反応性など)や問診で絞り込んでいくしかないのです。

 

 

<どのくらい効く?>

過去の報告では、リフヌアによる治療開始後3か月後時点で、咳のひどさが18.5%改善したというデータがあります。

 

市販後のデータでは、咳が良く改善したという人の割合が25%程度で、まあまあ改善したという人の割合が26%程度であったというデータもあります。4)

リフヌアの効果は「回数・つらさを着実に下げる」タイプの薬であることが分かります。また一部の人の咳にはとても効果的な薬であることも分かります。

 

<安全性と副作用>

 

リフヌアの最大の副作用は「味覚障害」です。味覚障害は約63%程度で見られ、苦味、金属味、塩味の異常・味が分かりにくいなどの症状があります。「水を飲んだら苦かった」というような表現をされる方もいらっしゃいます。

 

この副作用の味覚障害ですが、薬を中止すれば必ず戻ります。薬の中止後、味覚障害が5日以内にほとんどが改善しているというデータもあります。

そのほかの副作用として悪心、口内乾燥、下痢、などが報告されています。

 

<どんな人に向いている?>

 

咳の治療は、原因をしっかり調べそれらに対する治療を行うのが基本です。

 

そのためリフヌアのよい適応となる方は、以下の通りです。

 

・咳の原因疾患(咳喘息、逆流性食道炎、肺気腫など)に対する治療をしっかり行っても咳が残っている方

・咳による日常生活の障害が大きい(会話・仕事・睡眠・外出を妨げる)方

・咳の原因ははっきりせず、咳が続いている方

(+味覚異常のリスクを理解・許容できる方)

 

リフヌアは原因療法(根治療法)ではなく対症療法です。まずはしっかり原因を調べ、その治療を行うことが優先です。それでも咳が改善せず、原因として「咳の感受性亢進」が考えられる場合にリフヌアによる治療を検討します。

 

 

<よくある質問(FAQ)>

 

Q1. どれくらいで効きますか?

  1. 個人差はありますが、臨床試験(治験)では数週〜数か月で評価しています。12〜24週時点で有意差(咳が改善)が示されており、早ければ初月からその効果を実感する方もいます。
  2.  

Q2. 味覚が変だと感じたら?

  1. 最も多い副作用です。多くは軽度〜中等度で、継続中または中止で改善します。困ったらすぐ受診して医師に相談してください。

 

Q3. 腎臓が悪いと言われています。使えますか?

  1. 重度腎機能障害(透析なし)では1日1回に調整します。透析中は推奨用量が未確立ですので、主治医とご相談ください。

 

Q4. 妊娠・授乳中は?

  1. 慎重投与です(動物で胎盤・乳汁移行あり)。有益性>危険性の場合に限り検討します。

 

Q5. 価格は?

  1. 薬価は改定で変動しますが、一錠187円で、一日374円になります。保険診療で3割負担の場合、2週間使用すると1,570円程度になります。
  2.  

 

 

<院長からのメッセージ>

 

リフヌアは—“原因治療が第一”、そのうえで咳症状改善を狙う選択肢です

 

リフヌアは「咳の感受性」を抑える初のP2X3拮抗薬として、咳の改善に効果が期待できる薬です。一方で味覚異常が比較的多い点、効果は「確実な減少」だが「劇的ゼロ」ではない点を理解し、患者様と目標を共有して治療を行うことが重要です。

 

 

長引く咳に関する解説記事はこちら

空咳の記事はこちら

 

 

 

参考・出典

 

① Am J Respir Crit Care Med. 2020 May 1;201(9):1068-1077.

Increased Capsaicin Sensitivity in Patients with Severe Asthma Is Associated with Worse Clinical Outcome

https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201911-2263OC?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

 

② J Investig Allergol Clin Immunol. 2019;29(1):30-39.

Independent Factors Contributing to Daytime and Nighttime Asthmatic Cough Refractory to Inhaled Corticosteroids

https://www.jiaci.org/summary/vol29-issue1-num1728

 

③ Allergol Int. 2023 Apr;72(2):271-278.

Functional gastrointestinal disorders are associated with capsaicin cough sensitivity in severe asthma

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1323893022001137?via%3Dihub

 

④ ERJ Open Res . 2025 Jul 7;11(4):01037-2024.

https://publications.ersnet.org/content/erjor/11/4/01037-2024

Real-world usage and response to gefapixant in refractory chronic cough

 

記事作成者

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック 理事長 表紀仁

呼吸器内科専門医・医学博士

テレビ出演 NHK Eテレ「チョイス病気になった時:肺炎の治療・予防 徹底対策」

当院理事長が9/21のNHK Eテレ「チョイス病気になった時:肺炎の治療・予防 徹底対策」に出演しました!

マイコプラズマ肺炎に関して解説しています!

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マイコプラズマ肺炎は、長く頑固な咳が続く病気です。以下にどんな病気か、治療法や対処法について解説します。

 

<マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?>

秋冬に増えるマイコプラズマ肺炎は、子どもから大人までかかる“歩く肺炎(walking pneumonia)”として知られます。原因はマイコプラズマ属(M. pneumoniae)という菌によって起こります。学校や職場など近距離の会話・咳で飛ぶ飛沫感染と、手指を介した接触感染で広がります。

<主な症状と潜伏期間>

最初は発熱・のどの痛み・倦怠感など風邪にそっくりです。数日で乾いた頑固な咳が目立ち、夜間に悪化しやすいのが特徴です。胸痛や息切れを伴うことも。潜伏期間は2〜3週間と長めで、その間に知らずに周囲へ広げるリスクがあります。子どもは高熱になりやすく、大人は微熱でも咳だけ長引くケースが少なくありません。

<診断と治療>

胸部レントゲン検査や聴診に加え、のど拭い液のPCR検査で確定します。治療はマクロライド系(例:アジスロマイシン)が第一選択ですが、近年はマクロライド系抗生物質への耐性菌が増加しています。そのためテトラサイクリン系やニューキノロン系を投与することも多くなってきています(年齢・妊娠などで使えない薬もあるため医師判断が必須)。解熱鎮痛薬や去痰薬で対症療法も併用します。自己判断で抗菌薬を中断すると再燃・耐性化の原因になるので禁物です。

<予防とセルフケア>

手洗い・咳エチケット・室内換気・十分な睡眠が基本です。家族に患者がいる場合は共用タオルや食器を分け、咳が強い間はマスクで拡散を抑えます。ワクチンはありません。運動再開は発熱が引き、咳が軽くなってからが目安です。

<受診のタイミング>

3日以上の発熱、呼吸が苦しい、咳が2週間以上続く、子どもの機嫌・食事・尿量の低下などがあれば早めに受診をしたほうがよいでしょう。周囲への拡散を防ぎ、重症化を防止します。

<まとめ>

マイコプラズマ肺炎は「長引く乾いた咳」がサイン。早期受診と適切な抗菌薬、そして日常の予防が最善の対策です。

 

肺炎に関しては、こちらの記事が参考になります。

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