アレルギーによる病気は多岐にわたり、花粉症や食物アレルギー、蕁麻疹・アトピー性皮膚炎、気管支喘息などがあります。アレルギーは、アレルゲンと呼ばれる原因物質に触れたり、食べたりすることで症状が起こります。ご自身がどんなアレルゲンに反応しているかを調べるためにアレルギー検査を行うことがあります。
当院では主に特異的IgE抗体検査という血液検査を行っております。検査結果は20分程度で判明するものから1週間程度かかるものがあります。ある程度疑わしい食べ物や原因物質がある場合は、項目を絞ってアレルギー検査を、わからない場合は医師と相談して検査項目を決めましょう。ここでは以下について説明したいと思います。
- アレルギー検査ってどんなものがあるの?
- 特異的IgE抗体検査って何?
- アレルギーの病気と必要な検査
目次
アレルギー検査ってどんなものがあるの?
当院では血液検査で行う、特異的IgE抗体検査を行っています。
特異的IgE抗体検査には以下の種類があります。
- VIEW-39
- 単項目検査
- イムノキャップラピッドアレルゲン検査
またアレルギー反応の総量を測定する非特異的IgE抗体検査も行うことが可能です。 そのほかにも、皮膚テスト(プリックテスト)・経口食物負荷試験などがありますが、当院では行っておりません。
特異的IgE抗体検査のそれぞれの特徴については以下の通りです。
①VIEW-39検査
39項目のアレルゲンが一度に検査できます。もちろん保険診療の範囲内で検査可能です。
調べることができるアレルゲンは、
- 環境アレルゲン(カビ・ハウスダスト、動物、ゴキブリ・ガ)
- 花粉アレルゲン(スギ・ヒノキ・イネ科・ブタクサなど)
- カビアレルゲン(アルテルナリア・アスペルギルスなど)
- ラテックス
- 食物アレルゲン(たまご・小麦・フルーツ・えび・かに・魚・肉・ナッツなど)
などが含まれています。
費用は、検査費用のみ約5,000円(3割負担)程度です。
以下の検査結果の一例です。クラス0-6の7段階で表示されます。
クラスは0が一番反応が弱く、6が一番強い状態を示しています。ただし、結果の解釈には注意が必要で、まったく反応が出ない場合でもアレルギー症状が出る場合もあれば、強い反応が出ていても対してアレルギー症状が出ない場合もあります。摂取を控える必要があるかどうかは、十分に医師と相談する必要があります。
②単項目検査
保険適用内で最大13項目までアレルゲンを血液検査で調べることができます。(1項目あたり3割負担で330円程度費用がかかります)
あらかじめ指定された39項目を検査するVIEW-39とは違い、検査項目を指定できます。下記の表からアレルゲンとして疑わしい項目を指定していただき検査を実施します。
検査結果は以下のように表示されます。
コンポーネント検査って何?
アレルゲンを「細かい部品(=コンポーネント)ごと」に調べる血液検査で、従来の「卵」「ピーナッツ」など「ざっくり素材」単位ではなく、その中に含まれる 個々のタンパク質 に対するIgE抗体を測定します。これらの実施により、より精度の高い診断が可能となります。
測定するメリットとしては、
- 真のアレルゲンを特定
例えばピーナッツでは、コンポーネント検査である「Ara h 2」 に強陽性だと重い症状が出やすい本物のピーナッツアレルギーを強く示唆します。 - 症状の重さの予測・リスク管理
卵の「オボムコイド」 高値では加熱しても症状が出やすい、など調理可否の判断材料になります。 - 食事制限の計画に役立つ
現在検査可能な主なコンポーネント検査は以下の6項目となっております。
(いずれも当院で実施可能)
- 卵アレルギー: オボムコイド
- 小麦アレルギー: ω-5グリアジン
- 大豆アレルギー: Gly m 4
- ピーナッツアレルギー: Ara h 2
- カシューナッツアレルギー: Ana o 3
- クルミアレルギー: Jug r 1
参考資料:日本アレルギー学会「アレルゲンコンポーネントの測定意義」
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=17
③イムノキャップラピッドアレルゲン検査
「イムノキャップラピッドアレルゲン検査」は、アレルギー診断のために用いられる迅速かつ簡便な特異的IgE抗体検査です。少量の血液で複数のアレルゲンに対するアレルギー感作の有無を短時間で評価できるのが特徴です。
- 所要時間:約20分で判定可能
- 必要な血液量:指先や耳たぶからの微量血液
- 測定項目:ダニ、ネコ、イヌ、スギ、シラカンバ、ヨモギ、ブタクサ、カモガヤの8項目
デメリットとしては、下記の写真のようにバンドの濃さでアレルギーの有無・強さを判定するためやや不正確です。また、検出できるアレルゲンの種類はあらかじめ決まっており、特定のアレルゲンを個別に指定して調べることはできません。
④非特異的IgE抗体検査
血清中に存在するすべてのIgE抗体量を測定します。「アレルギー体質」の指標となります。ただし、総IgEだけでは原因アレルゲンは特定できません。特異的IgE抗体検査に加えて実施することが多い検査です。
基準値
- 成人の基準値は170 IU/ml以下
小児は年齢が上がるとともに基準値も上昇します。
- 1歳未満…20 以下
- 1~3歳…30 以下
- 4~6歳…110 以下
- 7歳以上…170 以下
特異的IgE抗体検査ってなに?
私たちの体には「抗体」という外部からの細菌やウイルスを撃退してくれる警備隊がいて、IgEも抗体のうちの一つです。ところがこの IgE抗体 が 花粉・ダニ・食物 などを誤って「敵」と勘違いしてしまうと、過剰に特異的IgE抗体が産生され、それがきっかけとなりヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されて、結果としてくしゃみやじんましんなどのアレルギー症状が起こります。
よくある質問
①特異的IgE抗体が陽性の食物は絶対に食べてはいけませんか?
いいえ。数値だけで禁止すると“食べられるもの”まで減ってしまうことがあります。偽陽性といって、検査上では陽性でもアレルギー症状がでないものも多く存在ます。必ず専門医の指示を受けましょう。
②子どもは成長でIgE抗体の検査結果が変わりますか?
はい。乳幼児では半年〜1年で下がったり別の食物に移行することがあります。
③アレルギーが治ると特異的IgE抗体は消えますか?
治療や時間経過で少しずつ減る傾向はありますが、ゼロになるとは限りません。
アレルギーの病気と必要な検査
①花粉症
花粉症は、季節によって原因となる花粉が異なります。最も一般的なスギ花粉症は、東海地方では主に2月から4月にかけて本格化します。
一般的に調べる項目としては
- スギ・ヒノキ
- イネ科(カモガヤ・ハルガヤ・オオアワガエリ)
- ヨモギ
- ブタクサ
- ハンノキ・カバノキ
などです。下記の表はそれぞれの花粉症の症状が出やすい時期となっており、こちらを参考に検査を行います。当院では上記すべての項目のアレルギー検査が実施可能です。
②食物アレルギー
食物アレルギーでは、食後すぐにじんましんや腹痛・下痢、口の中のかゆみなどの症状が出現します。ひどい場合、アナフィラキシーといって呼吸困難や意識消失などが起こります。
疑わしい食べ物を調べます。食後に繰り返し上記のようなアレルギー症状が出ても、検査で陰性となることもあります。その場合は、疑わしい食べ物の摂取は控えることをおすすめします。
③喘息
喘息と診断された方の場合、主に吸入アレルゲンを調べます。吸入アレルゲンとして代表的なものとしては、以下のような項目があります。
- ダニ・ハウスダスト
- ペットのフケ(イヌ・ネコ・うさぎなど)
- 花粉(スギ・ヒノキ・イネ科・ハンノキなど)
- カビ(アスペルギルス・アルテルナリアなど)
- ガ
- 虫(ゴキブリなど)
上記に加えて、パン職人やパティシエなどの職業の方には小麦のアレルゲン検査を、ウレタンフォーム製造、塗装、接着剤製造などの職業に就いている方には、イソシアネートという項目を検査します。
当院では上記すべての項目のアレルギー検査が実施可能です。
④蕁麻疹(じんましん)
じんましんでは、全身や体の一部にかゆみを伴う皮疹がでます。
蕁麻疹の原因は、食事・薬・昆虫・ラテックスなど多岐にわたり、特定がなかなか難しい場合も珍しくありません。実際、じんましんの70~80%は原因は特定できないと言われています。網羅的に特異的IgE抗体検査を行っても(あてずっぽうにたくさんの検査を行っても)原因の特定は難しく、じんましんが出た直前に食べたものなど疑わしい食べ物をメモして受診することをお勧めしています。
主な蕁麻疹の原因物質としては以下のものがあります。
- 食べ物:エビ、カニ、魚、牛乳、小麦、ナッツなど
- 薬剤:抗生物質、かぜ薬など
- 昆虫:蜂やアリの刺傷
- ラテックス(天然ゴム):医療用手袋など
院長からのメッセージ
現代社会において、アレルギーは決して珍しいものではありません。花粉症、食物アレルギー、ダニやハウスダストによるアレルギーなど、症状も原因もさまざまです。「くしゃみが止まらない」「特定の食べ物でかゆみが出る」「肌荒れが続いている」ーその症状、もしかするとアレルギーが関係しているかもしれません。
当院では、患者さま一人ひとりの症状に応じた適切なアレルギー検査を行っております。血液検査による特異的IgE測定を行い、原因を探ってまいります。アレルギーの診断と対策は、早期対応が鍵です。原因を特定し、適切な生活指導や治療を行うことで、症状を大幅に改善できる可能性があります。どうぞお気軽にご相談ください。皆さまが健康で快適な生活を送れるよう、スタッフ一同、心を込めてサポートいたします。
記事作成:呼吸器内科専門医 医学博士 表紀仁