肺炎(はいえん)は、高熱・咳や痰・息切れなどの症状が出る病気で、若い方から高齢者の方までかかることがあります。原因は感染症で、咳や痰などのしぶきにのって細菌・ウイルスなどの病原体が肺に入り込み、肺の中で炎症を起こすことで発症します。ほかにも、ご高齢の方では誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)といって、食事やつばなどが気道に入ってしまい肺炎を起こすこともあります。日本では、肺炎は常に死亡原因の上位に入っており、放置すると重症化してしまうこともあるため、注意が必要な病気でもあります。
ここでは、肺炎はどのような症状が出るのか、肺炎にならないためにはどうしたらよいか、肺炎になったらどのような治療を行うのか、などを解説したいと思います。
目次
肺炎はどのような症状が出る?
肺炎は感染症ですので、症状としては下記のようなものがあります。
- 38℃前後の発熱(4-5日以上続く)
- 黄色〜緑色の痰を伴う咳
- 胸の痛み(深呼吸や咳で痛む)
- 息切れ・呼吸が速い
- 全身のだるさ
発熱や咳・痰などの症状は風邪(ウイルス感染症)でもでますから、症状では初期には風邪と見分けがつかない場合もあります。特に発熱が4-5日以上続く場合や咳が激しく汚い痰を伴う場合は、要注意です。朝には解熱しているが、夕方には熱が出るなどの症状を訴える方もいらっしゃいます。
またご高齢の方の肺炎では、上記のような典型的な症状がでないことがあり、「なんとなく元気がない」、「食欲が落ちた」、「いつもよりボーッとしている」、「37℃台の微熱だけ」などの軽い症状のこともあります。
肺炎の主な原因と種類

原因菌による分類
肺炎は主に細菌による感染症で、その原因菌は多岐にわたります。最も多いのは、肺炎球菌で、ついでインフルエンザ桿菌、クレブシエラ菌、黄色ブドウ球菌などがあります。上記の他にも、マイコプラズマ肺炎などは外来でよく見られる肺炎です。
発生する要因による分類
肺炎は原因菌の他にも、発生する要因によっていくつかのパターンに分かれます。治療の選び方もここで大きく変わるので、呼吸器内科ではまず「どのタイプの肺炎か」を整理します。
①細菌性肺炎
自宅や職場など、普段の生活の中でかかる最も一般的な肺炎です。細菌が感染することによって肺炎が引き起こされます。原因菌としては肺炎球菌が依然として多く、ほかにインフルエンザ桿菌、マイコプラズマ、クラミドフィラなどがあります。子供から比較的若年者〜中年の方でも起こります。抗生物質により治療し、速やかに改善してくるケースが多いです。
②誤嚥性肺炎
高齢者で最も多いタイプです。食べ物や唾液、胃液が誤って気道に入ってしまい、その中に含まれる口腔内細菌が肺で炎症を起こします。むせたあとに発熱した、食事量が減った、元気がない、という経過の場合は誤嚥性を疑います。
抗生物質で治療しますが、再発防止のために嚥下訓練などを行う必要があります。
③ウイルス性肺炎
インフルエンザ、RSウイルス、最近では新型コロナウイルスなどが原因になります。ウイルス性肺炎そのもの、あるいはウイルス感染後に細菌性肺炎が重なる「二次性肺炎」になることも多く、呼吸器内科ではここも注意して診察します。抗ウイルス薬で治療を行いますが、新型コロナウイルス肺炎ではステロイド薬が必要になることもあります。
肺炎の診断に使う検査
呼吸器内科で肺炎を疑ったときは、症状の聞き取りと身体診察に加えて、以下の検査を組み合わせます。
①聴診
聴診では、水泡音(すいほうおん)と言われる「ぽこぽこ」とした音が、息を吸う時に聞こえます。ただし、マイコプラズマ肺炎では、聴診器を当てても異常音がほとんど聴こえないか、あっても軽い場合が多いといわれています。またパルスオキシメーターで血液中の酸素濃度(酸素飽和度)を測定します。
②胸部レントゲン
最も基本的な画像検査です。肺炎があると白っぽい影(浸潤影)が写ります。ただし、脱水を起こしているご高齢の方や初期の肺炎ではレントゲンに影が写りにくいことがあります。症状が強いのにレントゲンがきれいな場合は、胸部CTを追加検査することもあります。

③胸部CT
レントゲンより詳細に肺の構造が見えます。肺炎かどうかの鑑別だけでなく、肺がんや気管支拡張症、非結核性抗酸菌症など“他の病気が隠れていないか”も同時にみることができるので、CTがあると診断の精度が一気に上がります。名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック(本院:御器所・荒畑院)では、CT検査を当日実施することができます。

④血液検査(白血球、CRP、マイコプラズマ抗体検査など)
炎症の強さや細菌感染らしさを評価します。CRPが高い、白血球が増えているなどがあれば細菌性肺炎の可能性が上がりますが、数値だけで決めるわけではありません。ウイルス性ではCRPはそこまで上がらないこともあります。
また原因を調べるために、マイコプラズマ抗体検査(IgM抗体)やクラミジア抗体検査を追加することもあります。
⑤迅速抗原検査・痰の培養検査
原因菌を特定するために行います。すぐに結果の分かる抗原キットや血液検査で行う抗体検査などがあります。名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック(金山駅前院)では下記のような抗原キットで検査を行っております。
迅速検査には、以下のようなものがあります。
- 尿中肺炎球菌抗原キット
- 尿中レジオネラ抗原キット
- マイコプラズマ抗原キット(咽頭ぬぐい液)


痰の培養検査も行うことがありますが、結果がわかるまで1週間程度必要になります。
肺炎の治療
肺炎の治療の中心は抗菌薬(抗生物質)です。抗菌薬は、外来の場合では通常5~7日間内服で治療します。肺炎の治療で重要なのは、抗菌薬を「処方された分しっかり飲み切る」ということです。中途半端に治療してしまうと、耐性菌といって抗菌薬が効きにくい細菌ができやすくなります。そのため、症状が改善してきても抗菌薬をしっかり飲み切ることが重要です。
副作用がでる場合は、ほかの薬へ変更することもあります。下痢は抗菌薬を投与する場合の代表的な副作用で、腸内の最近のバランスが崩れてしまうために起こります。
抗菌薬(抗生物質)にはたくさんの種類がありますが、年齢や重症度・原因菌を考慮して総合的に決定します。以下の表は、代表的な抗菌薬の種類になります。

肺炎が重症の場合は、入院が可能な病院へ紹介致します。入院が望ましい肺炎は以下のような方です。以下の項目に1つ以上当てはまる方は入院による治療を考慮します。

肺炎にかからないようにするにはどうしたらよい?
肺炎はかからないようにする、予防は重要です。
とくにご高齢の方や呼吸器の病気をお持ちの方には、次の予防策をお勧めします。
この中でもワクチンの接種はとても重要です。
①ワクチン接種

肺炎球菌ワクチン
ワクチンには様々な種類がありますが、特に重要なのが肺炎球菌ワクチンです。
肺炎の原因となる細菌の中でも最も頻度の多い“肺炎球菌”に対して体を守るためのワクチンになります。このワクチンによって肺炎球菌による重症肺炎や菌血症(血液の感染)を防ぐ効果があります。65歳以上の方や、呼吸器などに持病がある方は肺炎が重くなりやすいため、接種が推奨されています。
肺炎球菌ワクチンにはいくつか種類がありますが、「ニューモバックス」は多くの自治体が補助しており、名古屋では65歳以上の方は、自己負担金4,000円で接種することができます(1回のみ)。
そのほかに新しい肺炎球菌ワクチンとして「キャップバックス」があります。肺炎球菌の中の23種類の菌に対応しており、すでに別の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス/プレベナー13など)を受けた人でも、間隔を空けて追加することで広い種類の菌に対する予防が可能になります。
参考資料:
名古屋市ホームページ:高齢者肺炎球菌(定期予防接種)
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/kenkoinfo/1009500/1009501/1009525/1009528.html
RSウイルスワクチン(アレックスビー)
「RSウイルス(RSV)」は赤ちゃんだけの病気ではなく、ご高齢の方や持病のある大人にも重症肺炎を起こすウイルスとして注目されています。実は65歳以上では、RSウイルスによる入院や死亡リスクがインフルエンザ並みに高いという報告もあります。
そんな中、2024年に日本で承認されたのがRSウイルスワクチン「アレックスビー」です。RSウイルスによる重症化を防ぐ初めての高齢者向けワクチンです。現時点では、接種は1回のみでよいです。最新のデータではワクチンの有効性は75%程度と報告されています。
以下のような方は特に接種をおすすめしています。
- 65歳以上の方
- COPD(肺気腫など)
- 喘息
- 心不全、心疾患
- 糖尿病
- 免疫が弱っている方
- 呼吸器感染で入院歴がある方
当院では、23,000円(税別)でアレックスビーのワクチン接種を行っています。
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、
- インフルエンザそのものにかかる人を減らす
- たとえかかっても重症化を抑え、肺炎まで進行しにくくする
効果があります。またインフルエンザにかかった後に、細菌による二次性の肺炎を起こすことがあります。そのためインフルエンザをワクチンで予防することは、肺炎の発症には重要なのです。
新型コロナワクチン
新型コロナウイルスのワクチンは、ウイルスに感染するリスクを減らすことに加えて、未接種に比べて肺炎の程度が軽くなると報告されています。またワクチン接種により、COVID-19の重症化(酸素投与・人工呼吸器・死亡)を防ぐことができます。
②感染対策
肺炎は感染症なので、多くは咳をした際に痰や唾液などのしぶきに含まれる細菌を吸ったり触ることで肺炎を発症します。そのためマスクや手洗い、うがい、部屋の加湿などの基本的な感染対策などが重要になります。また十分な栄養と睡眠、無理のない運動は免疫力の維持に重要です。
③口腔ケア
歯磨き・うがい・義歯の手入れを怠ると、口の中の細菌が増え、誤嚥したときに肺炎を起こしやすくなります。介護が入っているお家では、口腔ケアの時間をルーティンにしてしまうのがおすすめです。
高齢者に多い誤嚥性肺炎
高齢になると、飲み込む力(嚥下機能)と、気管に入ってしまったときに咳で押し戻す力(咳反射)が弱くなります。さらに、脳梗塞後やパーキンソン病、認知症があると嚥下動作がさらに不安定になります。そこに口腔内の細菌が絡むと肺炎になります。
誤嚥性肺炎の特徴は以下の通りです。
- 何回も繰り返す
- 夜間や食後に発熱する
- 入院して良くなっても退院後また悪くなる
こうした「反復性・再発性」が特徴です。
抗菌薬だけで終わらず、嚥下リハビリ(言語聴覚士などによる)・食形態の調整(やわらかい・とろみをつける)・口腔ケア(歯科や介護職)・体位の工夫(食後すぐに横にならない)、といった“原因対策”をしないとまたすぐに起こります。
よくある質問(FAQ)
肺炎になったらどのくらいで治りますか?
軽症なら数日で解熱し、1週間程度で症状が改善していきますが、咳は2〜3週間残ることがあります。レントゲン上の影の改善はさらにゆっくりです。高齢者や誤嚥性肺炎では回復までに数週間かかることもあります。
咳が長引くときは?
肺炎がよくなっても気道の過敏性が残ると咳が続きます。また、喘息・COPD・非結核性抗酸菌症・間質性肺炎など他の呼吸器疾患が背景にあると、咳が長く続きます。呼吸器専門医に一度みてもらうとよいでしょう。
肺炎はうつりますか?
原因が細菌・ウイルスの場合は、咳やくしゃみなどのしぶきで感染することがあります。ただし「肺炎そのもの」がうつるのではなく、「肺炎の原因となる微生物がうつる」と理解してください。抗菌薬を使用して解熱してくると、ほかの人への感染性も低下していきます。
職場や学校にはいつ復帰できますか?
発熱が落ち着き、呼吸が安定していれば 数日〜1週間程度で復帰できます。ただし、インフルエンザや新型コロナウイルスによる肺炎などの場合は、復帰基準が異なるため医師に確認してください。またマイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法において出席停止などの条件を定められていません(熱が下がり、咳も治まってきて体調がよければ出席・登校可能です)。
院長からのメッセージ
当院では、肺炎の早期発見・早期治療を重視し、咳・発熱・呼吸の違和感などの症状が続く患者さまへ迅速な診察体制を整えております。肺炎は放置すると重症化しやすい疾患ですが、適切な検査と治療を行うことで多くの場合、早く治ります。
また、高齢者や肺に病気のある方、免疫力が低下している方は肺炎リスクが高く、特に注意が必要です。気になる症状がある際は「これくらい大丈夫」と自己判断せず、早めにご相談ください。当院では、胸部レントゲン検査、血液検査、必要に応じた専門医療機関との連携など、肺炎診療のための総合的な医療体制を整えております。
地域のみなさまが安心して生活できるよう、今後も「肺炎予防」「感染症対策」「咳の症状に関する相談窓口」など、呼吸器内科クリニックとして引き続き質の高い医療を提供してまいります。
参考資料:
日本感染症学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)」
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56
日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/
記事作成:
名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁