アナフィラキシーは、命に関わる急な全身アレルギー反応です。体が特定のもの(食べ物・薬・虫刺され・薬など)に強く反応し、数分〜1時間以内に全身でアレルギー反応(じんましん・吐き気・腹痛など)が一気に進みます。気道がむくんで息が苦しくなったり、血圧が下がって倒れる危険があります。
アナフィラキシーの症状が出た場合、「エピペン」という緊急の注射薬を使用するのが命を救うのに有効です。当院では、エピペンの処方からアレルギー検査による原因検索を行っています。アナフィラキシーが起こって良くなったものの、今後のためにエピペンの処方をご希望の方や原因を調べたい方は一度ご相談ください。
ここでは、アナフィラキシーの症状や原因、エピペンの効果や使い方について解説したいと思います。
目次
よくある原因
アナフィラキシーはアレルギー反応ですが、アレルギーの原因となる物質には以下のようなものがあります。最も多いのは食べ物で、次いで医薬品、FDEIA(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)、昆虫刺傷などがあります。

①食べ物
アナフィラキシーの原因として最も多く、全体の約2/3程度を占めます。特定の食物を摂取したあとに、短時間(多くは数分〜2時間以内)で症状が出てきます。
年齢によって原因は大きく異なります。
小児で多いのは…
- 鶏卵
- 牛乳
- 小麦
学童期〜成人で多いのは…
- 甲殻類(エビ・カニ)
- 魚介類
- 木の実類(くるみ、カシューナッツ など)
- 小麦
日本では「木の実類」の増加が顕著で、特にくるみによる重症例が増えています。
②薬
薬剤の投与をきっかけに、短時間で全身にアレルギー反応が起こります。
- 抗菌薬
- 痛み止め(ロキソニン・イブプロフェンなど)
- 血清
- 造影剤
などが頻度が多く見られます。過去に蕁麻疹などのアレルギー反応が出たことのある薬は必ずメモして医師に伝えましょう。
③虫刺され
最も重要なのはハチ類で、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチで日本の昆虫刺傷アナフィラキシーの大部分を占めます。そのほかにもまれですが、アリ(ヒアリなど)・ムカデ・ブヨ・アブなどでアナフィラキシーになることがあります。
ハチによるアナフィラキシーによる死者は毎年報告されており、7月〜10月がピークでこの時期は特に注意が必要です。

④FDEIA((食物依存性運動誘発アナフィラキシー)
運動+食べ物(小麦や甲殻類)で起きるタイプもあり、これをFDEIA((食物依存性運動誘発アナフィラキシー)と呼びます。原因となる食物の摂取後2時間以内の運動で発症することが多いですが、最大4時間経過して発症したとする報告もあります。運動以外にも、風邪薬の内服やアルコール・疲労・入浴などでも誘発されることが知られています。
アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーは、アレルギー反応の最も強い状態で、下記のような症状が見られます。特にゼーゼーや息苦しさの呼吸症状やめまい・意識低下などの循環症状がみられる場合は注意が必要で、すぐに病院を受診するか救急要請したほうがよいでしょう。
- 皮膚:全身のじんましん、赤み、強いかゆみ、顔や唇・まぶたのはれ
- 消化器:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
- 呼吸:せき、ゼーゼー、声がれ、のどが締まる感じ
- 循環:めまい、ぐったり、冷や汗、意識がもうろう
皮膚症状がなくても、呼吸が苦しい・めまいで立てない・意識が遠い、は危険サインです。

アナフィラキシーが起きたらどうする?
まずは以下のような対応をしましょう。
- 横になって、あお向けで足を少し上げる(急に立たせない)
- 自己注射のアドレナリン(エピペン®)があれば即使用します
- 息苦しさが強い/唇や顔が青い/ぐったり → 迷わず救急要請してください
- 可能なら原因を離す(飲食中止、刺された針を安全に除去)
- 病院到着まで観察:呼吸、意識、皮膚の変化を伝えられるようメモ
アナフィラキシーの重要な薬:エピペン
アナフィラキシーが起きた場合、すぐに対応をしないと呼吸ができなくなったり、血圧が低下し命を落としてしまうことがあります。このような事態を避けるため、その場で素早く抑えるための自己注射が「エピペン」になります。
エピペンとは?
有効成分はアドレナリン(エピネフリン)で、アナフィラキシー(重い全身性アレルギー反応)をその場で素早く抑えるための自己注射キットです。アドレナリンは、血圧を上昇させ、気管支を拡げることでアナフィラキシーの症状を素早く抑えることが可能です。

エピペンの使用方法
- 青い安全キャップを抜く
- オレンジの先を太ももの外側にあて、カチッと音がするまで強く押す
- そのまま約3秒固定
使った時間をメモする。回復が不十分なら5〜15分後に2本目を注射してもOK。
エピペンを注射した時には、救急車を呼んで医療機関を受診しましょう。 またエピペンは医療廃棄物になるため、処方してもらった病院・クリニックも持っていきましょう。

費用
エピペンの費用は以下の通りです。保険適応があります。
体重が30kg以下の子供の場合は、エピペン0.15mgを使用します。
大人の方にエピペン(0.3mg)を処方した場合、薬代(約3,000円)+診察料・処方箋料・管理料(約4,600円)の合計7,600円程度費用が掛かります。
エピペンの有効期限は約1年間で、有効期限が切れた場合再度処方が必要となります。
保存方法は、光を避け室温で、携帯用ケースに入れて保管するのが基本です。

また血液検査(特異的IgE抗体検査)で原因を調べたい、アレルギー反応があるか調べたい方には以下のような検査を実施しています。再発予防のためにも一度検査を実施をおすすめしています。

例)ハチのアレルギー検査(スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ)を実施する場合は、
- 保険診療で実施する(過去にアナフィラキシーやアレルギー症状が出たことがある場合)
検査料(920円+990円)+診察料(約1,000円)=合計約2,900円 - 自費診療で実施する(過去に症状なく、就業前のチェックとして行う場合)
検査料(4,800円)+診察料(2,500円)=合計7,300円
VIEW-39に含まれる検査項目

アレルギー検査で実施可能な項目

当院からのメッセージ
アナフィラキシーは、いつ・どこで起こるかわからない、命に関わるアレルギー反応です。 エピペンは「最後の手段」ではなく、「最初に使う命を守る薬です。症状が重そうだと感じたら、迷わず使用してください。「使いすぎてはいけない」という心配よりも、使わずに遅れることの方が危険です。
当院では、
- エピペンが必要かどうかの判断
- 正しい使用方法の説明
- 日常生活での注意点や再発予防
を丁寧に行っています。 エピペンを処方されている方は、常に携帯し、使用方法を定期的に確認することが大切です。ご本人だけでなく、ご家族・学校・職場の方とも情報を共有しましょう。「自分は大丈夫」と思わず、不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
参考資料:
- アナフィラキシーガイドライン2022 日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/journal/index.php?content_id=4 - エピペンサイト(Viatris)
https://www.epipen.jp/sitemap.html - 厚生労働省 アナフィラキシーとは
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1h03_r01.pdf
記事作成:
名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁