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会話中の咳

会話中に咳が止まらないのはなぜ?


  • 普通に会話していると、のどがムズムズして咳が出る
  • 電話やオンライン会議で、自分が話し始めると咳き込む
  • 笑ったとき、発表のとき、人前で話す場面で特に強く出る

このような症状でお悩みの方は多いと思います。医学的には、“本来なら咳が出ないような軽い刺激で咳が出てしまう状態”を「咳過敏症候群」と呼びます。『会話』『笑い』『歌うこと』で咳が出るのは、咳過敏の典型的な特徴なんです。

ここではそんなお悩みについて、その原因や治療方法などを呼吸器内科の立場から分かりやすく解説していきます。

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目次

会話中の咳とは?

会話中に出る咳でお悩みの方は、以下のようなシチュエーションになると咳がでて困っている方が多いです。

  • 普通に話し始めると、のどがムズムズして咳が出る
  • 電話で話していると、途中で咳き込みやすい
  • プレゼンや授業中など、人前で話すときだけ咳が強くなる
  • 「話さなければあまり咳は出ない」のに、声を出すと出やすい

このように軽い刺激で誘発される咳は、**咳過敏症候群(cough hypersensitivity syndrome:CHS)**による症状と考えられています。咳過敏症候群では、「話す」「笑う」「冷たい空気」「香水」「タバコの煙」など、通常はあまり強い咳を起こさない刺激で強い咳反射が起こり、生活に支障が出ます。特に「話すと出る咳」は、仕事・学校・対人関係に大きな影響を与えてしまうため、QOL低下やうつ傾向の増加とも関連すると報告されています。

なぜ「話すと咳が出る」のか:咳反射と咳過敏症候群

咳は、気道を異物や分泌物から守るための重要な防御反射です。咳が出るメカニズムは、のど・気管・気管支などの粘膜にある感覚センサーが刺激を受け、迷走神経を介して脳(咳中枢)に情報が伝わり、呼吸筋と声帯の協調運動により「咳」となってでてきます。

通常は、ある程度強い刺激(痰・煙・異物など)がないと咳は起きませんが、この咳過敏症候群では、ごく弱い刺激でも咳が出てしまう状態になっています。本来なら咳が出ないような刺激(会話・笑い・冷気)でも咳が誘発される(アロトシス(allotussia))や咳の前に「のどのムズムズ・チクチク・異物感」が生じるといった「感覚の過敏さ」が原因となっています。

咳過敏症候群の中でも特に注目されているのが、咽喉頭(のど・声帯)レベルでの過敏性と機能異常です。咳が長引いて困っている患者様の多くで、のどの感覚が過敏になっていて、「喉頭過敏」や「喉頭機能障害」がみられると言われています。具体的には、話そうとして声帯を動かした瞬間に、過敏な粘膜が刺激されその結果、「ムズムズ→咳」という流れを繰り返してしまいます。

会話中の咳を起こしやすい代表的な病気

会話中の咳の原因となる「咳過敏」状態を引き起こす病気は、次のようなカテゴリーに分けられます。

  • 咳喘息・気管支喘息
  • 上気道咳嗽症候群(後鼻漏など)
  • 逆流性食道炎

①咳喘息・喘息

アレルギー性の炎症(好酸球性気道炎症)により咳受容体が過敏になり、冷気や運動に加え、「会話」「笑い」でも咳が出やすい状態になります。特に咳喘息では、この「会話中の咳」が診断の手掛かりになるといわれています。風邪が治って数週間〜数ヶ月も咳だけ残り、話すと咳き込みやすい場合、咳喘息などの可能性は高く、吸入ステロイドなどで改善するケースも多いです。

詳しくはこちら

②上気道咳嗽症候群(後鼻漏など)

慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎などにより、鼻水や分泌物がのどの奥へ流れ(後鼻漏)、それが咽頭・喉頭を慢性的に刺激し咳受容体が過敏になります。この状態で会話をすると、声を出す振動+分泌物の動きによってのどを刺激し、「のどがイガイガして咳」「痰がからんで咳が出る」という症状がよく見られます。

③逆流性食道炎・咽頭喉頭逆流症(LPR)

胃食道逆流症(GERD)や咽頭喉頭逆流症(LPR)も、長引く咳の原因の代表的なものの一つです。

胃酸や消化液が食道〜喉の方まで逆流し、喉頭や気道の粘膜が刺激され、「声がれ」「のどの違和感」「咳」を引き起こします。逆流関連咳嗽では、食後・就寝時に咳が出る、長時間の会話や歌唱で悪化する、胸焼け・呑酸・げっぷ・声のかすれを伴うといった特徴があり、会話中の咳と関連することも多いです。

逆流性食道炎について

呼吸器内科で行う検査と診断の流れ

①詳細な問診

会話中の咳の原因を絞っていく場合に、特に次の情報が重要です。

  • 咳の持続期間(8週間以上かどうか)
  • どんな場面で出るか(会話・電話・笑い・歌唱・運動・冷気・香水・タバコなど)
  • 咳の性状(乾いた咳か、痰を伴うか、咳の前に「のどのムズムズ」があるか)
  • 併存症状(鼻水・後鼻漏・鼻閉、胸焼け・呑酸、喘鳴、息切れ、声がれ)
  • 喫煙歴・職業曝露(粉塵・化学物質など)

②検査

主に以下のような検査を実施し、原因を絞り込みます。

  • 胸部レントゲン・胸部CT検査:
    咳の原因として肺がん・結核・間質性肺炎などの重大場病気を除外を行うために実施します。
  • 血液検査:
    炎症反応、好酸球数などをチェックします。気管支喘息や咳喘息の方では、好酸球上昇がみられることがあります。場合によっては、特異的IgE抗体(アレルギー検査)でダニ・ハウスダスト・カビ、花粉などに対してアレルギーを持っているかどうか調べることもあります。
  • 肺機能検査(スパイロメトリー):
    気管支喘息・COPDの診断を目的として実施します。
  • FeNO(呼気中一酸化窒素濃度測定):
    気管支喘息や咳喘息の方では上昇します。

以下は、咳の原因を調べるのに行う代表的な検査の料金になります。(3割負担で表示)

主な治療方法

①気管支喘息・咳喘息

治療の基本は吸入薬です。吸入ステロイド±気管支拡張剤を主に使用します。吸入ステロイドは気道炎症を抑え、咳や喘鳴・息苦しさを改善し、発作予防にも重要です。必要に応じてロイコトリエン受容体拮抗薬の内服を追加します。咳喘息は早期治療が重要で、放置すると気管支喘息へ移行することがあるため、症状が続く場合は継続的な治療と定期受診が大切です。

咳喘息や気管支喘息はアレルギーが原因となっており、原因となるアレルゲン回避や環境整備が重要となってきます。よくあるアレルゲンとしては、ダニ・ハウスダスト、ペット(イイヌ・ネコ・ウサギ)、花粉、カビ(アスペルギルス・アルテルナリア)などがあります。

これらにより、会話中の咳を含む全体の咳が改善することが多く、治療効果を期待できます。

②上気道咳嗽症候群(後鼻漏など)

治療の基本は原因となる鼻の炎症を抑えることで、抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬を用います。アレルギー性鼻炎が関与する場合は抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)が有効です。細菌感染による副鼻腔炎が疑われる場合には、去痰薬や必要に応じて抗菌薬を使用します。鼻洗浄も症状軽減に役立ちます。咳止めだけでは改善しにくいため、咳の背景にある鼻・副鼻腔の治療を継続することが重要です。

③逆流性食道炎・咽頭喉頭逆流症

主に胃酸を抑える胃薬を使用します。胃薬にはプロトンポンプ阻害薬(エソメプラゾール・ランソプラゾール)やタケキャブ(ボノプラザン)などの薬があります。そのほかにも、生活指導(食事量・就寝前の飲食・アルコール・脂肪分など)、体重管理も重要です。

原因を治療しても残る「治りにくい咳」へのアプローチ

原因となる病気を適切に治療しても、1〜4割程度の患者では咳が残ると言われています。この段階では、咳そのものをターゲットとした治療が重要になります。この咳過敏状態に対する治療として有効性が期待されるのがリフヌア(P2X3受容体拮抗薬:ゲーファピクサント)です。

咳の神経に存在するP2X3受容体をブロックし、咳反射の感受性を低下させる薬になります。臨床試験で、咳発作回数の有意な減少が報告されています。味覚障害などの副作用が問題となりますが、「背景疾患を治療しても続く慢性咳嗽」に対する新しい選択肢として期待されています。

ほかにも神経調整薬(neuromodulators)が有効といった報告がありますが、日本では保険適応がありません。またスピーチセラピー・音声リハビリなども有効だといわれています。

会話中の咳を減らすための日常生活の工夫・話し方のポイント

ここからは、医療機関での治療と並行してできるセルフケア・話し方の工夫をまとめます。

  • 室内を過度に乾燥させない(加湿器・濡れタオルなど)
  • タバコ・受動喫煙を避ける
  • 香水・強い芳香剤・煙などの刺激物を避ける
  • 長く一息で話し続けず、途中でこまめに区切る
  • 胸式呼吸ではなく、腹式に近いゆったりした呼吸を意識
  • 喉頭をリラックスさせる姿勢(少し顎を引くなど)をとる
  • 大声での会話・長時間のカラオケ・騒音下での怒鳴り声などを控える

などを意識します。声帯そのものへの負担を減らすことで、喉頭過敏を和らげる効果が期待できます。

院長からのメッセージ

院長からのメッセージ「会話中だけ咳が止まらない」「話し始めると喉がむずむずして咳き込む」
こうしたご相談は、実は非常に多く、呼吸器内科の専門領域でも重要なテーマのひとつです。会話中に起こる咳は、単なる“喉の乾燥”だけでは説明できません。最近の研究では、咳の神経が過敏になっている状態(=咳過敏症候群)が深く関わっていることがわかっています。会話中に出る咳は、生活の質を大きく損ねてしまいます。しかし、多くの場合は適切な治療で改善が見込めます。

もし「会話中の咳」でお困りでしたら、どうぞお気軽に当院にご相談ください。 あなたの咳の原因を一緒に見つけ、日常生活を少しでも楽にするお手伝いができれば幸いです。

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参考文献

  • Yoshihiro Kanemitsu, et al. Respir Investig. 2016 Nov;54(6):413-418. "Cold air" and/or "talking" as cough triggers, a sign for the diagnosis of cough variant asthma
  • David O Francis, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2016 Mar;14(3):378-84. Airway Hypersensitivity, Reflux, and Phonation Contribute to Chronic Cough
  • 日本咳嗽学会 「咳について」
    https://www.kubix.co.jp/cough/c_doctor.html

記事作成:
名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁