夏から秋にかけて「蜂に刺された」「刺されたあとに腫れがひどい」「息苦しくなった」というご相談が当院でも増えてきます。蜂アレルギーは誰にでも起こり得ますが、時に救急搬送が必要となる重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)につながる可能性があります。
本記事では、蜂アレルギーの症状・原因・治療・予防法を専門的知識に基づいて分かりやすく解説します。また、蜂アレルギーが疑われた場合に 呼吸器内科・アレルギー科で受診すべき理由もまとめています。
目次
蜂アレルギーとは?
蜂の毒(ハチ毒)に含まれるタンパク質に対して、体の免疫システムが過敏に反応することで症状が出る状態です。
蜂アレルギーには大きく2種類あります:
①正常反応(局所反応)
刺された場所だけが赤く腫れたり痛む一般的な反応です。通常は数時間〜数日で改善します。
②アレルギー反応(全身反応)
蜂毒に対する免疫反応により、刺された場所以外にも症状が広がるものです。最も重篤なものとしてアナフィラキシー(命に関わる急性アレルギー反応) があります。刺された部位以外に症状が出る場合はアレルギー反応の可能性が高いです。
以下はアナフィラキシーの時に全身に出る症状の例です。
- 全身のじんましん
- 唇・まぶた・喉の腫れ
- 息苦しさ、ゼーゼー
- 声がれ
- めまい
- 嘔気・嘔吐
- 血圧低下
- 意識の低下
刺されてから数分〜30分以内に急速に進行する場合はアナフィラキシーの可能性があります。このような症状が出る場合は、救急要請が必要です。

蜂アレルギーを起こしやすい蜂の種類
日本でアレルギーを起こしやすい蜂は以下のとおりです。
- スズメバチ
- アシナガバチ
- ミツバチ
特にスズメバチの毒は強く、刺される回数が多いほど重症化しやすいことが報告されています。
蜂アレルギーが重症化しやすい人
次のような方はアレルギー反応を起こすリスクが高いとされています。
- 過去に蜂に刺されて具合が悪くなったことがある
- 過去にアナフィラキシーを起こしたことがある
- アレルギー体質(花粉症、気管支喘息、アトピーなど)
- 高齢の方
- 屋外作業が多い人(農業、建設業、ガーデニングなど)
過去にアナフィラキシーを起こしたことがある場合は、再度刺されると重症化しやすいため特に注意が必要です。
蜂アレルギーの検査
当院では特異的IgE検査(蜂毒アレルゲン)が実施可能です。
- ミツバチ
- スズメバチ
- アシナガバチ
に対する特異的IgE抗体を測定します。ただし、陽性=必ずアナフィラキシーを起こすわけではありません。臨床症状とあわせた総合的な判断が重要となってきます。検査結果は1週間程度で判明します。
過去に蜂に刺されてアレルギー症状を起こしたことがない場合で、蜂毒アレルゲン検査を希望の場合は自費になります。
上記の3つの特異的IgE抗体(ミツバチ・スズメバチ・アシナガバチ)をすべて測定する場合の費用は以下の通りです。
- 保険診療(3割負担)の場合:約2,500円(診察料+検査料)
- 自費検査の場合:約7,640円(診察料+検査料)

ハチ毒アレルゲンの検査結果は、クラス0~6の7段階評価で表示されます。クラス6が最も反応が強く、アレルゲンである可能性が高くなります。また重篤な症状を引き起こす危険性があります。

蜂アレルギーの治療
症状の程度に応じて対応が変わります。
①軽い腫れ・痛みの場合
さされた場所を冷やすことで良くなりますが、かゆみなどが強い場合は抗ヒスタミン薬を使用します。腫れが強い場合にはステロイドのぬり薬や内服薬を使用することもあります。
②アナフィラキシー(全身症状)の場合
全身に症状が出た場合、医療機関での治療が必要です。抗ヒスタミン薬やステロイド薬の点滴や内服を行います。
アナフィラキシーは数分〜30分で急激に悪化するため、病院に間に合わない可能性があります。このような場合、「アドレナリン自己注射(エピペン)」を使用します。エピペンはアナフィラキシーの症状を一時的に改善してくれます。使用した場合は必ず病院に受診する必要があります。
過去に蜂刺されで全身症状を起こしたことがある方は、エピペン携帯が強く推奨されています。当院でも処方が可能で、以下のような方が対象となります。
- 蜂刺されで過去にアナフィラキシーを起こした
- ハチ毒特異的IgEが高値で、かつ臨床症状があった
- 野外作業で蜂に遭遇しやすい職業の方

蜂アレルギーの予防
蜂刺されを完全に防ぐことは難しいですが、リスクを減らすことはできます。
①服装に注意
- 明るい色の服を着用する(蜂は黒に寄ってきやすい)
- 長袖・長ズボン
- 帽子・手袋
②香水・整髪料に注意
甘い香りは蜂を引き寄せることがあります。
③巣に近づかない
スズメバチは巣の近くで攻撃性が高まります。
④刺されたらすぐに刺し口を確認
ミツバチは針が皮膚に残るため、早く取り除きましょう。
当院からのメッセージ
蜂アレルギーは、「軽い腫れ」から「命に関わるアナフィラキシー」まで幅広い反応が出ます。しかし、正しい知識と早期対応でリスクを最小限にすることができます。過去の蜂刺されで具合が悪くなったことがある、全身症状を経験した、野外活動が多くリスクが高い、こうした方はぜひ早めにご相談ください。
参考資料:
- 日本アレルギー学会 「アナフィラキシー/Q&A」
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=14 - Mayo clinic 「Bee sting」
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/bee-stings/symptoms-causes/syc-20353869
記事作成:
名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁