いびき=睡眠時無呼吸ではありません。放置で何が起きる?
「いびきがある=睡眠時無呼吸症候群」とは限りません。いびきは“空気の通り道(上気道)が狭くなって振動している音”で、疲労・飲酒・鼻づまり・体重増加・仰向け寝などでも起こります。一方で、いびきの裏に「無呼吸(呼吸が止まる/浅くなる)」が隠れていることもあり、ここを見分けるのがとても大切です。
この記事では、「いびき=無呼吸ではない」を前提にしつつ、もし無呼吸(閉塞性睡眠時無呼吸)があった場合に、放置すると何が起きうるかを、科学的なデータをもとに分かりやすく解説します。
まず結論:いびき単独は“良性”のこともある。でも「無呼吸を伴ういびき」は放置が危険

- 単なるいびき(いわゆる単純性いびき):
生活習慣や鼻の状態で起きることも多く、必ずしも重い病気ではありません。- 無呼吸を伴ういびき:
- 睡眠中に何度も気道が塞がり、窒息状態による低酸素と覚醒(睡眠の分断)を繰り返します。これが長期間続くと、健康リスク(高血圧や心筋梗塞・狭心症)が積み上がります。
→CPAPやマウスピースでの治療が必要です。
“無呼吸が疑わしい” いびきのサイン
次のうち複数が当てはまる場合、いびきの背後に睡眠時無呼吸がある可能性が上がります。
- ・家族に「呼吸が止まっていた」「むせる・あえぐように息をしていた」と言われる
- ・起床時に頭痛、口の渇き
- ・日中の強い眠気、集中力低下、居眠り運転が心配
- ・高血圧と言われた/血圧が薬でも下がりにくい
- ・体重増加、首回りが太くなった
- ・寝ても疲れが取れない、夜間頻尿
※問診票やアプリだけで確定診断はできず、検査(簡易検査 or PSG:終夜睡眠ポリソムノグラフィー)で確認するのが基本です。
放置で何が起きる?(睡眠時無呼吸だった場合の“積み上がるリスク”)
1) 心筋梗塞・脳卒中などの心血管リスクが上がる可能性
睡眠時無呼吸の重症度が高いほど、将来の心血管病(狭心症や心筋梗塞)や死亡リスクが上がることが、様々な研究で示されています。たとえば重症の無呼吸症候群では、心血管疾患・脳卒中・全死亡のリスク上昇が報告されています。
また、未治療の重症の睡眠時無呼吸症候群で心血管病が多く、CPAP治療を行っている方ではリスクが低いことが示されています。
重要ポイント:
「治療で心血管イベントが必ず減る」と言い切れるかは研究デザインで結論が分かれます。たとえば心血管疾患をすでに持つ患者を対象にした大規模研究(SAVE試験)では、平均使用時間が短かった背景もあり、CPAP追加による心血管病の抑制は明確ではありませんでした。一方で、いびき・眠気・QOLは改善しています。
2) 高血圧が悪化・コントロール不良になりうる
睡眠時無呼吸症候群は高血圧と関連し、夜間の低酸素や交感神経亢進が血圧に影響すると考えられています。さらに近年、「睡眠時無呼吸がない人でも、客観的に測定した“頻回のいびき”が高血圧(コントロール不良)と関連」した報告もあります。
3) 眠気による事故リスク(仕事のミス・運転事故)
OSAは睡眠が分断されるため、日中の眠気や注意力低下が起きやすくなります。過去の研究では、睡眠時無呼吸と交通事故リスク上昇が示されています。 「自分は大丈夫」と思っていても、単調な運転・午後の会議などで出やすいのが特徴です。
4) 代謝への影響(インスリン抵抗性など)
睡眠時無呼吸症候群は代謝異常と関連する可能性があり、糖尿病がない睡眠時無呼吸症候群でCPAP治療によりインスリン抵抗性が改善した報告があります(インスリン抵抗性とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなっている状態のことです)。
5) 生活の質が落ちる(疲労、気分、家庭内の問題)
いびき・無呼吸は本人だけでなく、家族の睡眠も妨げます。CPAP治療によっていびき・眠気・QOL・気分の改善することがわかっています。
「検査しないと分からない」理由:音(いびき)の大きさだけでは判断できない
いびきが大きくても無呼吸が軽い人もいれば、いびきが目立たなくても無呼吸がある人もいます。したがって、疑わしい場合は 検査で“呼吸の状態(AHIなど)”を数値で確認するのが確実です。
当院での受診の流れ
- 当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック)での検査・治療の流れは以下のようになっています。
- 問診:症状(眠気・起床時頭痛・夜間頻尿など)と背景(飲酒、体重変化、高血圧など)を確認
- 検査:
- まずは 自宅での簡易検査(アプノモニター検査) を検討します。
- 結果が陰性でも疑いが強い/合併症がある場合は 精密検査であるPSG(終夜睡眠ポリソムノグラフィー) を検討します。
- まずは 自宅での簡易検査(アプノモニター検査) を検討します。
- 治療(重症度や原因に応じて):生活習慣(減量、飲酒、睡眠姿勢)、鼻治療の検討、CPAP療法などを検討します。
詳しい検査方法はこちら:睡眠時無呼吸症候群(検査・治療)
よくある質問(FAQ)
Q1. いびきだけでも受診した方がいい?
A. 「家族に無呼吸を指摘された」「日中眠い」「血圧が高い/下がりにくい」などがあれば、睡眠時無呼吸の検査を強くおすすめします。
Q2. 痩せていても無呼吸はありますか?
A. あります。顎や気道の形、扁桃・鼻づまりなどでも起きます(体型だけで否定できません)。
Q3. CPAPは一生必要?
A. 原因(体重、鼻、顎、飲酒、睡眠姿勢など)が改善すれば見直しできる場合もあります。まずは検査で重症度を把握し、現実的な治療目標を一緒に設定します。
まとめ:いびきを“放置していいか”は、無呼吸の有無で変わる
- いびき=無呼吸ではない
- でも、無呼吸を伴ういびき(OSA)なら放置でリスクが積み上がる(心血管、血圧、事故、代謝、QOL)
- 判断は「音」ではなく、検査で呼吸状態を見える化するのが近道です。
当院からのメッセージ
いびきは「よくある症状」ですが、いびき=睡眠時無呼吸とは限らない一方で、無呼吸が隠れている場合は放置しないことが大切です。
「家族に呼吸が止まっていると言われた」「日中の眠気が強い」「血圧が高い/下がりにくい」「朝の頭痛やだるさがある」など、少しでも思い当たることがあれば、早めに一度ご相談ください
当院では、まず問診で状況を整理し、必要に応じてご自宅で行える簡易検査(睡眠時無呼吸の検査)をご案内します。結果に基づき、生活習慣の改善(体重・飲酒・睡眠姿勢・鼻症状のケア)から、必要な場合はCPAP治療まで、患者さんの生活背景に合わせて無理のない治療方針を一緒に考えます。「いびきは体質だから仕方ない」と諦める前に、まずは“無呼吸があるかどうか”を確認することが、将来の健康を守る近道です。
金山駅前院は、お仕事帰りや忙しい方でも通いやすい体制を整え、安心して相談できるクリニックを目指しています。気になる症状があれば、お気軽にご受診ください。
CPAP治療に関する詳しい記事はこちら
記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁
参考文献
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