お酒を飲むと苦しくなる?【喘息と飲酒の関係を呼吸器内科医が解説】
喘息の人の3人に1人は「アルコールでぜんそく症状が悪化した経験」があります。お酒の種類としては、とくにワインを飲んで喘息症状が悪化したと多く報告されています。ただし、悪化する原因は1つではありません。原因となるものには、お酒に含まれる酸化防止剤(亜硫酸塩:サルファイト)やアセトアルデヒド、サリチル酸塩などがあります。
またALDH2活性(お酒の分解酵素)が低い人は、アセトアルデヒドの上昇を介してアルコール誘発喘息を起こしやすくします。対策は「自分の誘因を知る」「量と種類を調整」「吸入などの喘息治療を最適化する」です。

- 1. なぜアルコールで喘息が悪化するのか?
アルコールは単独の「アレルゲン」ではないことが多く、飲料に含まれる添加物・発酵産物・代謝産物などが複合的に関わります。主な候補は以下です。

(1) サルファイト(亜硫酸塩)
ワインや一部のビール・リキュールに含まれる酸化防止剤です。一部の喘息患者で気管支収縮を誘発することが臨床試験で示されています。ただし反応する人は一部で、濃度が高いと誘発されやすい一方、低濃度では反応しない例もあります。
(2) アセトアルデヒド(代謝産物)
アセトアルデヒドはアルコールが体内で代謝される際に生じる物質です。ALDH2活性(分解酵素)が低い人(日本人を含む東アジアに多い体質)では血中アセトアルデヒドが上がり、気道過敏性が高い喘息患者で気管支収縮が起こりやすいことが報告されています。
(3) サリチル酸塩・フェノール類
ワインに含まれるサリチル酸塩(自然由来の微量成分)がアスピリン喘息患者さんの反応に関与する可能性が指摘されています。
(4) ヒスタミン・生体アミン
赤ワインや熟成酒に多いヒスタミンなどの生体アミンが鼻・気道症状を悪化させることがあります。ただしヒスタミン濃度と不耐の相関がはっきりしない研究もあり、個人差が大きいと考えられています。
- 2. どのくらいの人が影響を受けるの?
喘息患者さんの約33%が「アルコールで喘息が悪化した経験がある」と言われています。誘発されやすい飲料はワインで、症状は1時間以内に出現することが多いと報告されています。
またアスピリン喘息では飲酒によって75%が鼻症状、51%が喘鳴・息切れを経験します。少量の摂取(数口)でも起こり、赤ワインが強い誘因になりやすいという傾向があります。特にALDH2 低活性の人(分解酵素が低い人)は、アセトアルデヒドの上昇とともに一秒量の低下(気流制限)を起こしやすいという報告があります。
- 3. 飲料別の特徴
ポイント:「種類」だけでなく「量」と「その人の体質・併存疾患(アスピリン喘息の有無)」の相互作用で決まります。
① 赤ワイン
サルファイトや生体アミン(ヒスタミン)含有、ポリフェノール類が豊富です。誘因として最も報告が多いアルコール飲料です。
② 白ワイン
赤ワインより生体アミンは少なめでも、酸化防止剤音サルファイト濃度は比較的高いものがあります。
③ ビール
発酵由来アミン、亜硫酸塩を含む製品もあります。喘息症状がでるかどうかは個人差が大きい飲み物でもあります。
④ 蒸留酒(ウイスキー・焼酎・ウォッカ等)
サルファイト/アミンは比較的少ないが、カラメル色素・フーゼル油などに反応する人もいます。
- 4. 呼吸器内科の推奨:安全に楽しむための7つの工夫
・病状コントロールを最優先:吸入ステロイド(ICS)などの治療を最適化する。
・トリガーの同定と回避:まずは赤ワインなど誘因になりやすい種類を減らす/避ける。
・量をコントロール:最初の数口で症状が出るタイプは少量でも誘発され得ます。無理はしない。
・食事と一緒に:空腹時の一気飲みを避け、ゆっくり飲む。
・反応しやすい人はサルファイト(酸化防止剤)高めのワインを避ける、蒸留酒のソーダ割りなどに切り替えを検討する。
・発作時の備え:メプチンなどの発作時の吸入薬は常に携帯しましょう。
・飲まない選択も:症状が毎回出る人はノンアルコールを上手に活用しましょう。
- 5. よくある質問(FAQ)
Q1. 「赤ワインはダメ、蒸留酒ならOK」って本当?
- 多くの研究でワインが誘因として多いのは事実ですが、個人差が大きいです。蒸留酒で症状が出にくい人はいますが、完全に安全とは限りません。
Q2. 低サルファイトのワインなら安心?
- 一部の人には有効ですが、全員に効くわけではないことが対照試験で示唆されています。
Q3. 顔がすぐ赤くなる体質(フラッシャー)です。喘息発作も出やすい?
- ALDH2 低活性の人では、アセトアルデヒド上昇に伴いFEV₁低下など気道反応が起こりやすいという報告があります。無理な飲酒は避けましょう。
- 6. まとめ
喘息とアルコールの関係は個人差が大きいですが、ワイン(特に赤)が誘因になりやすいと言われています。対応は「誘因の同定」「量と種類の調整」「吸入などの喘息治療の最適化」です。必要に応じて呼吸器内科専門医に相談しましょう。
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記事作成

名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁
参考文献
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