咳に効く飲み物・食べ物【呼吸器内科医が解説】
咳が止まらなくて眠れない、咳が長引いている、市販の風邪薬が効かない……など咳でお困りの方はいると思います。また、病院に受診したくても仕事や家庭の都合で受診できない方はけっこういらっしゃると思います。このような場合に、薬以外で咳を緩和する方法はないか、咳によい飲み物や食べ物はないか、そんな質問を良く受けます。今回はそんな質問に対して、民間療法ではなく最新の科学データに基づいて、咳の対処法を解説していきたいと思います。
下記のYOUTUBEでも解説しています!

1) はちみつ
まず最有力がはちみつです。特に“夜の咳”で困っている時には有効でしょう。過去の研究によると、こどもの咳(風邪に伴う咳)では、はちみつが咳の頻度・重症度や睡眠を改善すると報告されています。
なぜ効きやすい?
はちみつは「咳をよくする薬理作用」だけでなく、トロトロとしていることによる喉の保護(demulcent作用)と、甘味で咳反射閾値が上がる作用(=咳が出にくくなる方向)を同時に持ち合わせます。甘味で咳反射が改善したという生理学的研究もあります。
注意として1歳未満はNGです。ボツリヌス菌が含まれており、菌により重篤な感染症を起こす可能性があります。アレルギー(蜂製品)にも注意が必要です。
実用的な方法として、温かい飲み物に小さじ1程度を溶かして、就寝前に飲むのがよいでしょう。
2) 温かい飲み物(ホットドリンク、スープ、温かいお茶など)
次にあったかい飲み物も咳によいとされています。
これまでの研究で、温かい飲み物は咳やなどを、室温飲料より改善した報告があります(客観的な鼻腔通気は変わらず=体感の改善が中心)。
なぜ効きやすい?
温かさで唾液や気道分泌が増え、喉の乾燥刺激が和らぐ、湯気で上気道が楽になる、心地よさによる中枢性の咳の感じ方の変化、などが重なって咳症状が改善するのではないかと考えられています。ここで重要なのは「成分」より温度・水分です。極端に熱いものは逆に粘膜刺激になるので避けます。
実用的な方法としては、暖かいスープやお茶、ハチミツを入れた白湯などがよいでしょう。

3) メンソール
メントールは、咳反射そのものの感受性を下げる(=咳が出にくくなる)可能性があります。
健康な大人に、カプサイシン(唐辛子成分)で咳を誘発する試験を使って調べた研究で、メントールの蒸気を吸うと約25%閾値が上がった(咳が出にくくなった)という結果が報告されています。「咳は気道を守る反射で、刺激を感じる神経が「発火」すると出ます。甘味やメントールは、感覚入力や脳の咳の制御に影響して、「咳のスイッチ」が入りにくくなる、というイメージです。
実用的な方法として、甘味のあるメンソールの入ったあめ(龍角散、Vicksのどあめなど)がよいでしょう。
4) コーヒー
コーヒーに含まれるカフェイン、気管支喘息の咳に効果がある可能性があります。
カフェインはメチルキサンチン系で、喘息で使用される薬であるテオフィリンと親戚関係にあります。カフェインは喘息患者の気道機能を“軽度”改善し、その効果は最大で約4時間続く可能性が示されています。
運動誘発性の喘息については、7 mg/kgのカフェインを運動の約2時間前に摂ると、喘息症状を抑えたという研究があります。ただ、7 mg/kgは体重60 kgなら 約420 mg(コーヒー数杯〜エナジードリンク相当になり得る)で、カフェインの副作用(動悸・不眠・手の震え・不安など)のリスクも上がるため、日常で「運動誘発性の喘息対策にカフェインを推奨できない」と考えられます。
5) 地中海食
野菜・果物・豆・全粒穀物・ナッツ・オリーブ油+魚を中心として食事パターンで、ギリシャなどで主に行われています。
成人喘息で、食習慣を地中海食寄りに変える介入により、QOLや肺機能に少し改善が見られたと報告されています。「これを食べれば効く」ではなく、“毎日のベース食”を植物中心に寄せることが、よいのではと考えられています。
話はそれますが、ダイエットや体重を減らすことは喘息のコントロール(病状)を良くします。そのため地中海食のような野菜・果物を中心とした食事は、体重が減り、咳などの喘息症状を改善させた可能性があります。
6) よくない食事、やってはいけないこと
見落とされがちなんですが、咳の原因として多いのが胃食道逆流(GERD)です。胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)がある人は、“足す”より悪化させる飲食を引く方が効くことがあります。
そして重要な点として、逆流が疑われても、胸やけや逆流症状がない人に胃薬だけ使っても咳には効きにくい、という推奨があります。なので、
・寝る直前の飲食を避ける
・脂っこい大量摂取を控える
・アルコール、強いカフェイン、酸の強いもの、辛いものは“合わない人は避ける”
このあたりが合理的です。
7) まとめ
咳に「効く」食べ物・飲み物は、原因そのものを治すというより、喉の刺激を減らし、咳反射を落ち着かせて症状を和らげる目的で役立ちます。
・温かい飲み物(白湯・お茶・スープ)
・はちみつ(1歳以上)
・のど飴(甘味)/メントール系
はよいでしょう。息苦しさ、血痰、高熱が続く、胸痛、3週間以上続く咳は様子を見ずに受診をおすすめします。
咳の原因や治療についての詳しい記事はこちら
気管支喘息の詳しい記事はこちら
記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁
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