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毎年同じ時期に咳が出る人は「咳喘息」かもしれません

「春になると咳が続く」「秋の花粉の時期だけ夜に咳き込む」――毎年ほぼ同じ季節に咳が出て、しかも長引く場合、原因のひとつとして 咳喘息(せきぜんそく) が疑われます。
咳喘息は、ゼーゼー(喘鳴)や強い息苦しさが目立たなくても、気道(空気の通り道)の炎症や刺激により咳が続く“喘息の一タイプ”です。放置すると、典型的な気管支喘息へ進行することもあるため、早めの評価と治療が大切です。

 

 

 

この記事でわかること

  • ・「毎年同じ時期の咳」が起こる主な理由

  • ・咳喘息の特徴(症状・季節性・悪化因子)

  • ・検査と診断の流れ(他の病気との見分け方)

  • ・治療(吸入治療が中心)と、再発予防のコツ

  • ・受診の目安(危険サイン)

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「毎年同じ時期に咳が出る」—なぜ季節性が出るの?

・季節性の咳の背景には、次のような“引き金”が繰り返し存在します。

  • ・花粉・カビ(真菌)・ダニなどのアレルゲン

  • ・気温差・冷気・乾燥(秋冬や季節の変わり目)

  • ・黄砂・大気汚染・受動喫煙・香料などの刺激

  • ・風邪(ウイルス感染)後に咳だけが残る

  • ・引っ越し・職場環境などで同じ時期に曝露が増える

咳喘息は、こうした刺激に対してアレルギー反応などが起こって気道が過敏になり、咳反射が過剰に起こることで症状が続きます。「毎年同じ時期」というパターンは、アレルゲンや環境要因と結びつくことが多く、咳喘息を疑う重要な手がかりです。

 

咳喘息の典型的な症状

次の項目に当てはまるほど、咳喘息の可能性が上がります。

  • ① 咳が 3週間以上 続く(特に8週間以上なら要注意)

  • ② 痰は少なめ〜ほぼ無し、乾いた咳が多い

  • ③ 夜間〜明け方、または 運動・会話・冷気で悪化

  • ④ 風邪が治ったのに 咳だけ数週間から数か月残ることがある

  • ⑤ 毎年、特定の季節に繰り返す

  • ⑥ 喘鳴(ゼーゼー)や強い息苦しさは 目立たないことも多い

  • ⑦ アレルギー性鼻炎・花粉症がある/家族に喘息体質がいる

※逆に、高熱・膿のような痰・血痰・体重減少などがある場合は、別の病気を優先して確認します。

 

咳喘息と間違えやすい病気(“季節性の咳”の鑑別)

「季節に出る咳=咳喘息」と決めつけないことが重要です。呼吸器内科では、次のような原因も同時に評価します。

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  • 上気道の病気:鼻炎・副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水が喉へ落ちる)

  • ・胃食道逆流症:胸やけがなくても咳だけ出ることがある

  • ・好酸球性気管支炎:喘息に似るが、気道が狭くなりにくいタイプ

  • ・感染後咳嗽:風邪のあとに咳だけ長引く

  • ・慢性閉塞性肺疾患(喫煙歴が長い方)

  • ・薬剤性(ACE阻害薬などの降圧薬など)

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  • まれに:肺結核、間質性肺炎、肺がん など(危険サインがある場合)

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受診したら何をする?(検査と診断の流れ)

呼吸器内科では、「咳の原因を見落とさない」ために段階的に確認します。

 

1)問診:季節性・時間帯・誘因が鍵

  • ・いつから、どの季節に出るか

  • ・夜〜明け方に増えるか

  • ・冷気・運動・会話・香料で誘発されるか

  • ・花粉症やアトピー体質、家族歴

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2)胸部レントゲン

肺炎や結核、肺がんなどの“別の原因”を除外するために実施します。

 

 

3)呼吸機能検査(肺の空気の通り道を評価)

喘息(気管支喘息)では、気道が狭くなったり拡がったりする“変動”がみられることがあり、呼吸機能検査で吐く力(一秒率・ピークフロー)が低下します。咳喘息では、呼吸機能検査ではほぼ正常です。

 

4)気道の炎症評価

呼気中の炎症指標(例:吐く息の検査)などを参考にすることがあります。特に呼気中の一酸化窒素濃度(FeNO)は重要で、気道のアレルギー性炎症(好酸球性炎症)を数値化して見ることができます。咳喘息や気管支喘息の診断の助けになることがあります。

 

5)アレルギー検査

原因となるアレルゲンを特定するために実施することがあります。ダニ・HD、花粉(スギ・ヒノキ、イネ科、ブタクサ・ヨモギなど)、カビ(真菌)、ペット(イヌ・ネコ・ウサギなど)を主に調べます。当院では特異的IgE抗体を血液検査によって調べています。

 

当院(名古屋おもて呼吸器・アレルギー内科クリニック金山駅前院)で実施しているアレルギー検査はくわしくはこちら

 

 

6)治療反応(吸入治療で咳が改善するか)

咳喘息は、吸入の抗炎症治療(主に吸入ステロイドや気管支拡張薬)で改善しやすいことが知られています。検査だけで断定できない場合でも、医師の判断で治療反応を見ながら診断に近づけることがあります。

 

咳喘息の治療:中心は「気道の炎症を抑える吸入治療」

咳喘息は、咳止めだけで抑え込もうとしても再発しやすいのが特徴です。基本方針は以下です。

吸入ステロイド(抗炎症薬)が治療の軸

  • 気道の炎症を抑え、咳を減らし、再発を防ぐ目的で使用します

  • 早めに適切な治療を始めることが、長引く咳を断ち切る近道です

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必要に応じて追加する治療

  • ・気道を広げる吸入薬の併用

  • ・アレルギー対策(鼻炎治療、環境整備)

  • ・胃食道逆流症が疑わしい場合はその治療

  • ・咳のトリガー(冷気・香料・喫煙・粉塵)回避

※治療期間は症状の程度や再発のしやすさで変わります。「症状が消えたらすぐ終了」では再燃することもあるため、自己判断で中断せず、医師と相談しながら調整します。

 

再発を減らすコツ(毎年同じ時期に悩む方へ)

  • 花粉の時期は 早めに対策開始(鼻炎治療も重要)

  • 室内は 乾燥対策(加湿、就寝前の水分、喉の保護)

  • 香料・煙・粉塵を避ける(柔軟剤・アロマで悪化する人も)

  • 風邪を引いたら「咳が長引く前」に受診

  • 運動時・冷気で悪化する人は、外出時のマスクなどで防御

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すぐ受診してほしいサイン(危険サイン)

次の場合は、咳喘息以外の病気も含めて早めの受診をおすすめします。

  • ・息苦しさが強い、会話がつらい

  • ・血痰、胸の強い痛み

  • ・高熱が続く、体重が減ってきた

  • ・夜間に呼吸が苦しくて起きる

  • ・喫煙歴が長い/高齢で初めて出てきた長引く咳

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よくある質問(FAQ)

  1. Q. ゼーゼーしないのに喘息ですか?
    A. はい。咳喘息は「咳が主役」の喘息タイプで、ゼーゼーが目立たないことがあります。
  2.  
  3. Q. 毎年同じ季節だけなら放置してもいい?
    A. おすすめしません。毎年繰り返す咳は生活の質を落とすだけでなく、気道の過敏さが固定化して長引きやすくなることがあります。原因を整理し、再発予防まで含めて治療するのが安心です。
  4.  
  5. Q. 市販の咳止めで良くならないのはなぜ?
    A. 咳喘息は「気道の炎症」が土台にあるため、咳止めだけでは根本が改善しにくいことがあります。吸入治療など“炎症に対する治療”が重要です。
  6.  

まとめ

  • ・毎年同じ時期に咳が出るのは、花粉・寒暖差・乾燥などが引き金となる 咳喘息 のサインかもしれません。

  • ・咳喘息は ゼーゼーがなくても 起こります。

  • ・胸部レントゲン等で他の病気を除外しつつ、呼吸機能や炎症評価、治療反応を組み合わせて診断します。

  • ・治療の中心は 吸入ステロイド など、気道の炎症を抑える治療です。

「毎年の咳」を“いつものこと”で終わらせず、一度呼吸器内科で原因を整理しましょう。

 

 

当院の咳喘息の詳しい記事はこちら

 

 

記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック

呼吸器内科専門医・医学博士 表紀仁

 

 

引用文献

  1. Global Initiative for Asthma (GINA). Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2025.

  2. ・Mukae H, et al. The Japanese Respiratory Society guidelines for the management of cough and sputum (digest edition). Respir Investig. 2021. 

  3. ・Morice AH, et al. ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children. Eur Respir J. 2020;55(1):1901136.

  4. ・Côté A, et al. Managing Chronic Cough Due to Asthma and Nonasthmatic Eosinophilic Bronchitis in Adults: CHEST Guideline and Expert Panel Report. Chest. 2020.

  5. ・Dicpinigaitis PV, et al. Chronic Cough Due to Asthma: ACCP Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 2006.

  6. ・Niimi A. How long should patients with cough variant asthma or non-asthmatic eosinophilic bronchitis be treated? J Thorac Dis. 2021.

  7. ・Magni C, et al. Cough variant asthma and atopic cough. Multidiscip Respir Med. 2010.