CPAPマスクの種類と特徴
CPAP治療(睡眠時無呼吸症候群の標準治療)は、「機械」よりも「マスク」が合うかどうかで続けやすさが大きく変わります。実際、研究でも鼻マスク/鼻ピローは、口鼻マスク(フルフェイス)より残存AHI(無呼吸・低呼吸指数)が低く、圧が低く済み、継続率が良い傾向が報告されています。

この記事では、患者さんが選びやすいように CPAPマスクの種類・向き不向き・トラブル対策をまとめます。あなたに合う“付け心地”で治療効果と継続率を上げるコツを解説します。
CPAPマスクは大きく3タイプ
1) 鼻マスク(Nasal mask)
鼻だけを覆う、最も標準的なタイプ。
メリット
- ・治療成績と快適性のバランスが良い(第一選択になりやすい)
- ・漏れ(リーク)や違和感が比較的少ない設計が多い
デメリット
- ・口が開くと口漏れ(マウスリーク)で乾燥・効果低下につながることがある
向いている人
- ・鼻呼吸が基本の人
- ・初めてCPAPを始める人(まずはここからが多い)
画像:https://cpap-lab.com/products/philips-nuancepro-nasal-pillowgel.html
2) 鼻ピロー(Nasal pillows)
鼻孔に“枕(ピロー)”のように当てて送気する、最小接触タイプ。
メリット
- ・顔を覆う面積が小さく、圧迫感が少ない
- ・鼻症状がある人でも、口鼻マスクより継続率が良い
デメリット
- ・鼻の入口が痛い/乾燥する、サイズが合わないと漏れやすい
- ・標準鼻マスクと比べて「必ずしも使用時間が伸びるとは限らない」という報告もあります
向いている人
- ・顔に物が当たるのが苦手、閉塞感が強い
- ・寝返りが多い(合う製品だとズレにくい)
画像:https://cpap-lab.com/products/philips-nuancepro-nasal-pillowgel.html
3) 口鼻マスク(Full face:フルフェイス)
口と鼻の両方を覆うタイプ(“口呼吸だから必須”と思われがち)。
メリット
- ・鼻づまりが強い時期でも治療を続けやすい
- ・強い口漏れがどうしても止まらない人の受け皿になる
デメリット
- ・研究では、鼻系(鼻マスク/鼻ピロー)に比べて必要圧が上がりやすく、残存AHIが増えやすく、継続率が不利になりうると報告されています
- ・マスク面積が広い分、フィット調整が難しいことがある
向いている人
- ・強い鼻閉があり、鼻呼吸が難しい日が多い
- ・口漏れ対策(後述)をしても改善しない
画像:https://cpap-lab.com/products/philips-dreamwear-fullface.html
「口呼吸=フルフェイス」が正解とは限らない
「鼻が悪いから」「口呼吸だから」口鼻マスクを選びがちですが、鼻症状があっても鼻系マスクの方が継続が高いという報告もあります。 また、鼻症状の治療(加温加湿、点鼻ステロイド、必要に応じて治療介入)を行い、鼻マスク継続を助けた方がよいとされています。
マスク選びで失敗しやすいポイントと対策
1) 空気漏れ(リーク)
- ① 原因:サイズ不一致、締めすぎ/緩すぎ、寝返りでズレ、皮脂・汗、ヒゲ
- ② 対策:
- まずサイズ見直し(同じMでも製品で形が違う)
- “締めすぎ”は逆に漏れやすい
- マスククッションの交換時期を守る(劣化で漏れ増)
- まずサイズ見直し(同じMでも製品で形が違う)
2) 口漏れ(マウスリーク)・口の乾燥
- ① 原因:睡眠中の開口、圧が高い、鼻閉

- ② 対策:
- 加温加湿の調整(乾燥対策の第一歩)
- 鼻閉があるなら治療(点鼻、アレルギー対策など)
- 必要に応じてチンストラップやマスク変更(鼻マスク+チンストラップが有利なケースも)
- 加温加湿の調整(乾燥対策の第一歩)
3) 鼻の痛み・赤み(鼻ピローで多い)
- 対策:サイズ変更、装着角度の調整、加湿、皮膚保護材の使用、別タイプへ変更

鼻の周囲の保護剤:右の写真はResmed社が販売しているネーザルパッド(Gecko Nasal Pad)- アマゾンでも売っています⇒https://www.amazon.co.jp/Gecko-Nasal-Pad-61910-ResMed/dp/B009GJRE3W
- アマゾンはちょっと高いので2026年2月時点では安いのは、こちらのサイト(価格:3,100円税込、送料1000円程度、4個入り)⇒https://cpap-lab.com/products/gecko-nasal-pads.html
4) 圧迫感・閉塞感(フルフェイスで多い)
- 対策:鼻系への変更を検討(治療成績・圧・残存AHIの面でも利点が出やすい)
マスク選びの“最短ルート”:当院おすすめの考え方
- まずは鼻マスク(または鼻ピロー)でフィッティング
- 鼻症状(鼻づまり・鼻炎)があれば並行して治療
- 口漏れが強ければ、加湿調整→チンストラップ等→それでも難しければ口鼻マスクへ
- 変更後は、データ(使用時間・リーク・残存AHI)で客観的に再評価
よくある質問(FAQ)
- Q. 鼻づまりがあるので最初からフルフェイスが良い?
A. 一概には言えません。鼻症状があっても、鼻系マスクの方がアドヒアランスが良い可能性が示されており、鼻症状の治療を併用しながら鼻系で継続できることも多いです。
花粉症やアレルギー性鼻炎などの鼻炎対策についてはこちらの記事を参考にしてください。
- Q. 鼻ピローは“最強”ですか?
A. 合う人にはとても快適ですが、研究では鼻マスクと同等で「必ずしも使用時間が増えるとは限らない」報告もあります。大事なのは“あなたに合う形とサイズ”です。 - Q. マスクを変えたら圧の再調整が必要?
A. とくに鼻系→口鼻マスクへ変更すると、必要圧が上がることがあり、再評価が推奨されます。
当院からのメッセージ
CPAPは「慣れれば楽」になる治療ですが、最初につまずく原因の多くはマスクの不快感・漏れ・乾燥です。マスクは“我慢して慣れる”より、合うものに調整・変更する方が近道です。装着の癖、鼻炎の有無、寝返り、圧設定などを一緒に見直し、データと体感の両方から最適解を探します。
当院のCPAP治療に関する記事はこちら
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記事作成

名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック
呼吸器専門医・医学博士 表紀仁
参考文献
- ① Rowland S, Aiyappan V, Hennessy C, et al. Comparing the Efficacy, Mask Leak, Patient Adherence, and Patient Preference of Three Different CPAP Interfaces to Treat Moderate-Severe Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2018;14(1):101-108. doi:10.5664/jcsm.6892.
- ② Genta PR, Kaminska M, Edwards BA, et al. The Importance of Mask Selection on Continuous Positive Airway Pressure Outcomes for Obstructive Sleep Apnea. An Official American Thoracic Society Workshop Report. Ann Am Thorac Soc. 2020;17(10):1177-1185. doi:10.1513/AnnalsATS.202007-864ST.
- ③ Chen LY, Chen YH, Hu SW, et al. In search of a better CPAP interface: A network meta-analysis comparing nasal masks, nasal pillows and oronasal masks. J Sleep Res. 2022;31(6):e13686. doi:10.1111/jsr.13686.
- ④ Ryan S, Garvey JF, Swan V, Behan R, McNicholas WT. Nasal pillows as an alternative interface in patients with obstructive sleep apnoea syndrome initiating continuous positive airway pressure therapy. J Sleep Res. 2011;20(2):367-373. doi:10.1111/j.1365-2869.2010.00873.x.
- ⑤ Schell AE, Soose RJ. Positive airway pressure adherence and mask interface in the setting of sinonasal symptoms. Laryngoscope. 2017;127(10):2418-2422. doi:10.1002/lary.26486.